黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

233話 出発

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街の南門に到着すると既にトレイとライアンが待っていた。

「すまない、待たせたな」
「まあ出発時間前だから大丈夫っすよ!」
「僕もさっき来たところだよ」

2人の格好はいつもの兵士の制服ではなく普通の旅装だ。
それとトレイが1頭の馬を連れている。
今日はこの2人と出発する事になっている。
モーガンとガルシア兵長は明日、聖女の出発後に後を追う形で出発する予定だ。

「エドガーは見送りっすか?」
「おう、タイガを頼んだぞ!」
「ははは、任されたっすよ!」
「へー君が噂のエドガーか、魔力量すごいね、魔法兵なりなよ」
「こないだちらっとあったよな。俺はワーカーが楽しいからそっちでいいや」
「僕の記憶力を舐めないでもらいたいね!」
「自慢する事じゃ無いっすよ」

相変わらずのライアンに少し不安がある。
俺らはこいつを上手く扱えるんだろうか。

「とりあえず揃った事だし行くか」
「そっすね、エドガー、仕事頑張るっすよ」
「3人もな!」
「ガグとしっかりやれよ、寝坊すんなよ」
「分かってるよ!」
「それじゃーねー」

ここに居たら名残惜しくなってしまうのでサクッとエドガーと別れて街の外に出た。
大袈裟な感じにはしたくなかった。
どうせ来月中には帰ってくる。

南門はこの街で1番大きな門で行き交う人も多い。
門の外の道沿いにも露店がしばらく並び、街へ入るための検査に並ぶ人々が商品を眺めている。

「南門は初めてだがこんなに賑やかなんだな」
「この街の人間以外は入るのに税金もかかるっすからね、外からくる物売りはここで商売やった方が得だったりするんすよ。
一応ここの出店にも金はかかるっすけどね。街の市場に出すのとそんなに変わんないっすよ」
「街の外だから良くない魔道具もちょくちょくあってねー、知らずに買って持って入ろうとして取り上げてモメることが結構あるかここの魔法兵は可哀想な奴らさ」
「それは買ったやつも可哀想だな」

魔道具は決して安いものではなく1番ありふれた水を出す魔道具や明かりを出す魔道具も500ロングぐらいはする。
1日働けば買える値段だが、安い食事10食分にはなる。
より細かな制御の必要になってくるような魔道具は更に値段が跳ね上がっていく。
そんな高価なものを買った側から取り上げられたのでは、そりゃ揉めるだろうな。

そんな事を思いながら道沿いに続く露天を眺めながら通り過ぎる。
俺は昨日女王に挑む前に食糧等は買い足しておいた。
ここに売っている食料品等や道具類等は必要ない。
2人もそれは同じようだ。

「そこのおやき買っていいか?」
「ご自由にっす」

見つけたおやきは露店の中で小さな平たい鍋で焼いて作られていた。
中身は刻んだ干し肉と野菜のようだ。
店をやってるおっさんから3つ買い、荷物から出した皿に入れてもらった。

「寝坊して昼メシ食いそびれてなー」
「タイガが寝坊なんて珍しいっすね」
「旅の間で寝坊なんてやめてくれよー」
「普段はちゃんとしてるんだがな。気をつけるさ」

俺も昼食も手に入り、後は本当に見るものもなく露店通りを通り過ぎる。

「うーん、これは失敗だな、まずい」
「あーあー、変なとこで買うから」
「見た目は普通っすけどね」

俺の買ったおやきは油で揚げ焼きにされていたが油が古いようで臭い、小麦の皮も粉っぽくボソボソしていて餡も凄く薄味だ。
干し肉の塩気があるが古いものを水で戻して使っていたのか塩気が抜けているし味も良くない。
野菜はクセはないが水っぽい。
洗浄が不十分なのか土の匂いが目立つ。
本当に褒めるところがない。
焼き加減ぐらいか。
残すのは主義に反するので塩をかけていくらかマシにして飲み込むように食ってしまった。

街から5百メートルほど離れると露店も無くなって本来の街道の景色に変わった。
この辺りから人も一気に少なくなる。

「2人、馬に乗っていいっすよ」
「俺は馬乗った事ないから走りでいい、ライアン乗っていいぞ。トレイと2人でも大丈夫じゃないか?」
「僕も野郎とひっついて乗るのは嫌だなー」
「俺もずっとは嫌っすねーライアンどうぞっす、明日からは俺が使うから今日は使っていいっすよ」
「それじゃ遠慮なく」

ライアンは慣れた感じで馬の背に乗りトレイから手綱を受け取った。
乗馬の訓練もしっかり受けているのだろう。
俺は馬より長く走ってられてその方が早いので馬に乗った事がない。
短距離なら普通に負ける。

「それじゃ今日の予定はここから1番近い宿場街っす。タイガこの前のやつ頼めるっすか」
「おう」

トレイの体に氣を送って身体強化をしてやる。

「なんかこの前よりかだいぶ感じが違うっすけど」
「ちょっと出力ミスった。強すぎる分は大丈夫だろ。加減して走ってくれ」
「これでどうなるのか試して見たい気もするっすね」
「そうなると馬が完全に負けるからな、ちょっと待て」

俺は馬の体に手を触れて氣を満たしてやる。
これで馬も全力出し続けてもしばらくバテることはないだろう。
馬はどこか興奮した様子があるがしっかりライアンの制御に従っている。
テイムスキル使ってんだろうな。

「馬にも氣を分けたからかなり走れるはずだぞ」
「みたいだねー、走りたくてたまらないみたいだよ」
「今日限りの3人行動っすからね。早くついてゆっくりするっす」
「じゃ走るか」
「はーい」

ライアンが手綱を操ると馬が爆速で走っていった。

「やば、追いつけなくなる!行くぞ!」
「はいっす!」

俺とトレイも爆速で駆け出して馬の後を追い最初の宿場町を目指して走り出した。
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