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3章 バーンデッドディザスター
447話 修行の成果
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しんしんと降り積もる雪が白く染め上げた森の中、その景色に身を紛れさせた複数の魔物に囲まれている。
魔物の正体はボーパルバニー。
首の無い胴体だけで動いている白いうさぎの魔物だが、それも仮の姿、本体はうさぎの体内に住み着いた触手状の寄生生物だ。
うさぎの体を動かして素早く動き、首から刃物状になった触手を伸ばし振るって獲物を切り刻む。
ルスウェーでは首刈りうさぎなどとも呼ばれる非常に危険な魔物だ。
そんなボーパルバニー複数と俺は距離を保って出方を伺っている。
俺は視認できない分も含めて周囲のボーパルバニーをすべて氣で補足したうえで、それぞれに殺気を浴びせて威圧している。
動けば殺す、そうでなくても殺す。俺の近くに出てきた以上は生かしておかない。
その意思をボーパルバニーにぶつけると、普段は非常に攻撃的なボーパルバニーも攻撃をためらってしまっているようだ。
動かないのならばこちらから攻めて殺すまで。
前方に潜んでいるボーパルバニーを更に死を宣告するように一層強く威圧して近寄り、うさぎの体を視認すると内部に潜む本体の位置まで氣で補足して剣で両断する。
1体を屠ってもなお他のボーパルバニーは動けず、中には生を諦めたような印象を感じさせるものもいる。
だがしかし慈悲はやらない。
殺すという意思は揺るがさずにボーパルバニーたちを威圧し続けながら粛々とその命を刈り取る作業を行った。
全て殺し終えて「ふう・・」と体から緊張を解く。凄く嫌な気分だ。
殺気を鍛えるというのは徹底してどれだけ揺るぎなく殺すという意志を保ち実際に遂行する覚悟を持ち続けなくてはいけない。
そう理解していても無抵抗な相手を手にかけるというのは魔物相手でも意志を保つのは難しく感じる。
「お疲れ様、順調ね」
空の上から俺の様子を見ていたアンジェリカ殿が近くに降りてきた。
「怖がって逃げてくれたら良かったのだが・・・」
「触手だからねー逃げるって考えができるのか微妙よね。怯えさせられただけでも上出来じゃない」
「知能が低い魔物の方が厄介というのはなんともだな・・」
俺が修行を始めてから6日、殺気の習得は自分で言うのも何だがかなり順調に進んだ。
もともと氣を扱うこと自体はそれなりな自信はあったので、新しい技術としても、これまでの積み重ねのおかげで早くものになったというところだろう。
今しがた倒したボーパルバニーは例外として、今ではだいたいの近寄る魔物は殺気のみで追い払うこともできるようになってきていた。
そして殺気以外にも基本に立ち返り氣の技の調整も行った事で、殺気で追い払えないような強力な魔物もさほど苦労せずに倒せるだけ技も磨きがかかってきた。
そんなこともあり昨日あたりからはかなり快調に奴隷狩りが使っていた道の追跡が捗っている。
そろそろルスウェーとの間にある海まで辿り着けそうだろう。
「上から遠くの方まで眺めてみてたんだけど、あと1、2時間ほどで海まで出れそうよ。そして結界を貼っている場所を見つけたわ」
「結界か、やはり周到だな」
「そうねーここまで面倒だと思わなかったわ」
ここまでの道中は魔物だけでなく、道の偽装するための魔法や魔物寄せの魔法、方向感覚を狂わせる魔法などなど、ほぼ誰も通らなさそうな道にしては厳重な追跡を阻害させる守りが敷かれていて、魔法の解除を対応していたアンジェリカ殿も手を焼いていた。
「わかってるでしょうが、かなりの手練れが複数いると思って行動しないとね。ここからはなるべく気配を隠して動きましょうか」
「了解」
道中では気配の隠し方についてもより精度を高められるように練習をした。
殺気ばかり高めていたらそのうち普通にしてても殺気を放つヤバい奴になってしまうとアンジェリカ殿に指摘されてしまったので気配のコントロールは真剣に行うことにした。
一つ深呼吸をして周囲に広く薄く氣を放ちこの森の印象を感じ取ると、自分の気配を森と同質になるように意識していく。
自身から放たれる氣も極力薄く何も無いものを意識するようにすればよほど探知力に長けたものでもなければ見つからない程に気配は薄くできる。
アンジェリカ殿が消音の魔法を体にかけてくれて、できる限りの気配隠しを施した状態で、アンジェリカ殿の見つけた結界まで向かった。
近づいてみた結界はかなり大きさのようで、小さな町程の規模があるように思えたが、外から見る限りはどこまでも森が広がるように見えた。
「ふむ、隠蔽の魔法を広範囲に施しているだけのようね。出入りは問題ないみたい」
結界までたどり着くとアンジェリカ殿が手早く魔法を解析した。
「ならば術は解かずに入ってしまおうか」
「そうね、建物とか人数が知れたらいいけど、もうガリバーを連れてくるでもいいと思うから、無理せず何かあれば即離脱でいきましょう」
「了解」
手早く行動を決めると結界内部へ踏み込んでみた。
「!!」
特に何の違和感もないままに結界を通り抜けると一面に広がる平坦な銀世界とそしてその先には広く大きな川が見える。
てっきりまだ森が続くと思ったら何も身を隠すものもない光景に焦りが出る。
アンジェリカ殿も驚いた様子で一旦結界の外に出て再び森に身を隠すまで迷いがなかった。
「体が全部通り抜けるまで中身がわからないタイプだったかー」
「一瞬だったが、気配などは感じなかったな」
「外から探れない以上はまた入って調べるしかないのよね・・警戒は最大にして進みましょう」
結界の先はかなり見通しがよく、こちらの姿が見られるリスクがかなり高まってしまったが、それでもより多くの情報は得ておきたいので、再び覚悟を決めて結界を越えた。
2度目の銀世界を観察してみるとどうやら立っている場所は森を切り開いてできた草原のようだ。
そして遠くに見える川は麻薬村と同じくかなりの川幅があり対岸が霞んで見えるほどだ。
そしてその大きな川縁に船が停泊する港が作られている。
結界はこの港を隠すように設置されたもののようだ。
幸い近くには生き物の気配は感じられない上にこちらに誰かの意識が向いてくるような感覚もないので一安心だ。
「ベリルくん向こう」
アンジェリカ殿に指差されてまだかなり距離がある港の一角に視線を向けると、1人の男が獣人に馬乗りになり殴りつけている様子が見えた。
魔物の正体はボーパルバニー。
首の無い胴体だけで動いている白いうさぎの魔物だが、それも仮の姿、本体はうさぎの体内に住み着いた触手状の寄生生物だ。
うさぎの体を動かして素早く動き、首から刃物状になった触手を伸ばし振るって獲物を切り刻む。
ルスウェーでは首刈りうさぎなどとも呼ばれる非常に危険な魔物だ。
そんなボーパルバニー複数と俺は距離を保って出方を伺っている。
俺は視認できない分も含めて周囲のボーパルバニーをすべて氣で補足したうえで、それぞれに殺気を浴びせて威圧している。
動けば殺す、そうでなくても殺す。俺の近くに出てきた以上は生かしておかない。
その意思をボーパルバニーにぶつけると、普段は非常に攻撃的なボーパルバニーも攻撃をためらってしまっているようだ。
動かないのならばこちらから攻めて殺すまで。
前方に潜んでいるボーパルバニーを更に死を宣告するように一層強く威圧して近寄り、うさぎの体を視認すると内部に潜む本体の位置まで氣で補足して剣で両断する。
1体を屠ってもなお他のボーパルバニーは動けず、中には生を諦めたような印象を感じさせるものもいる。
だがしかし慈悲はやらない。
殺すという意思は揺るがさずにボーパルバニーたちを威圧し続けながら粛々とその命を刈り取る作業を行った。
全て殺し終えて「ふう・・」と体から緊張を解く。凄く嫌な気分だ。
殺気を鍛えるというのは徹底してどれだけ揺るぎなく殺すという意志を保ち実際に遂行する覚悟を持ち続けなくてはいけない。
そう理解していても無抵抗な相手を手にかけるというのは魔物相手でも意志を保つのは難しく感じる。
「お疲れ様、順調ね」
空の上から俺の様子を見ていたアンジェリカ殿が近くに降りてきた。
「怖がって逃げてくれたら良かったのだが・・・」
「触手だからねー逃げるって考えができるのか微妙よね。怯えさせられただけでも上出来じゃない」
「知能が低い魔物の方が厄介というのはなんともだな・・」
俺が修行を始めてから6日、殺気の習得は自分で言うのも何だがかなり順調に進んだ。
もともと氣を扱うこと自体はそれなりな自信はあったので、新しい技術としても、これまでの積み重ねのおかげで早くものになったというところだろう。
今しがた倒したボーパルバニーは例外として、今ではだいたいの近寄る魔物は殺気のみで追い払うこともできるようになってきていた。
そして殺気以外にも基本に立ち返り氣の技の調整も行った事で、殺気で追い払えないような強力な魔物もさほど苦労せずに倒せるだけ技も磨きがかかってきた。
そんなこともあり昨日あたりからはかなり快調に奴隷狩りが使っていた道の追跡が捗っている。
そろそろルスウェーとの間にある海まで辿り着けそうだろう。
「上から遠くの方まで眺めてみてたんだけど、あと1、2時間ほどで海まで出れそうよ。そして結界を貼っている場所を見つけたわ」
「結界か、やはり周到だな」
「そうねーここまで面倒だと思わなかったわ」
ここまでの道中は魔物だけでなく、道の偽装するための魔法や魔物寄せの魔法、方向感覚を狂わせる魔法などなど、ほぼ誰も通らなさそうな道にしては厳重な追跡を阻害させる守りが敷かれていて、魔法の解除を対応していたアンジェリカ殿も手を焼いていた。
「わかってるでしょうが、かなりの手練れが複数いると思って行動しないとね。ここからはなるべく気配を隠して動きましょうか」
「了解」
道中では気配の隠し方についてもより精度を高められるように練習をした。
殺気ばかり高めていたらそのうち普通にしてても殺気を放つヤバい奴になってしまうとアンジェリカ殿に指摘されてしまったので気配のコントロールは真剣に行うことにした。
一つ深呼吸をして周囲に広く薄く氣を放ちこの森の印象を感じ取ると、自分の気配を森と同質になるように意識していく。
自身から放たれる氣も極力薄く何も無いものを意識するようにすればよほど探知力に長けたものでもなければ見つからない程に気配は薄くできる。
アンジェリカ殿が消音の魔法を体にかけてくれて、できる限りの気配隠しを施した状態で、アンジェリカ殿の見つけた結界まで向かった。
近づいてみた結界はかなり大きさのようで、小さな町程の規模があるように思えたが、外から見る限りはどこまでも森が広がるように見えた。
「ふむ、隠蔽の魔法を広範囲に施しているだけのようね。出入りは問題ないみたい」
結界までたどり着くとアンジェリカ殿が手早く魔法を解析した。
「ならば術は解かずに入ってしまおうか」
「そうね、建物とか人数が知れたらいいけど、もうガリバーを連れてくるでもいいと思うから、無理せず何かあれば即離脱でいきましょう」
「了解」
手早く行動を決めると結界内部へ踏み込んでみた。
「!!」
特に何の違和感もないままに結界を通り抜けると一面に広がる平坦な銀世界とそしてその先には広く大きな川が見える。
てっきりまだ森が続くと思ったら何も身を隠すものもない光景に焦りが出る。
アンジェリカ殿も驚いた様子で一旦結界の外に出て再び森に身を隠すまで迷いがなかった。
「体が全部通り抜けるまで中身がわからないタイプだったかー」
「一瞬だったが、気配などは感じなかったな」
「外から探れない以上はまた入って調べるしかないのよね・・警戒は最大にして進みましょう」
結界の先はかなり見通しがよく、こちらの姿が見られるリスクがかなり高まってしまったが、それでもより多くの情報は得ておきたいので、再び覚悟を決めて結界を越えた。
2度目の銀世界を観察してみるとどうやら立っている場所は森を切り開いてできた草原のようだ。
そして遠くに見える川は麻薬村と同じくかなりの川幅があり対岸が霞んで見えるほどだ。
そしてその大きな川縁に船が停泊する港が作られている。
結界はこの港を隠すように設置されたもののようだ。
幸い近くには生き物の気配は感じられない上にこちらに誰かの意識が向いてくるような感覚もないので一安心だ。
「ベリルくん向こう」
アンジェリカ殿に指差されてまだかなり距離がある港の一角に視線を向けると、1人の男が獣人に馬乗りになり殴りつけている様子が見えた。
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