黄昏一番星

更科二八

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3章 バーンデッドディザスター

448話 見つかる

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「たっ、助けなければ!」

獣人が殴られ続けている惨たらしい光景を目にして血の気が引いていく感覚を覚え、そして直ぐにでも救出に行かねばと気が焦る。

「待ってベリルくん。あれではもう・・・」
「くそっ!」

アンジェリカ殿の静止は最もな事で、今から向かった所でもうあの獣人は助からないだろうという事がわかる。ここまで来る道中に聞いていた事だが、アンジェリカ殿の回復魔法では軽傷程度の治療しか出来ないと言われている。
あんな重度で広範囲の打撲の治療は無理だろう。
助け出して手当てをしたところで助かる見込みも薄い。
でもそれでも助けたいという気持ちで落ち着かない。

「一旦また森に戻りましょう」

アンジェリカ殿の提案に従い、気持ちを押さえつけながらまた森の中にもどった。

「これで確定かしらね」
「重要な場所という事は間違いないだろう・・・」

俺たちはルスウェーで行われている人攫いに繋がる手がかりを辿ってこの場所に辿り着き、隠された港や獣人が暴行される様子を目の当たりにした。
ここが人攫いの集団の拠点となるかは断定するには早いが限りなく黒だろう。

「さっさとガリバーを連れてきて強制調査としましょうか」
「そうしてもらえると助かる。俺はできる限り内部を探っておく」
「ベリルくん落ち着いて、焦る気持ちはわかるけど1人での行動は危険よ。これまでの道中でわかったけど相手の魔法使いは相当優秀で用心深いわ。ここにもどんな魔法が仕掛けられているかわからないから身を隠しておく方が無難だわ」
「そう・・だな・・。すまない先ほどの事でどうしても焦ってしまって」

今後の行動として魔王様をここに呼んでくるとして、その役割は空を飛べるアンジェリカ殿になる。
それを待つ時間を無駄にしたくないという想いもあったが、アンジェリカ殿に言われた通り一人で行動するには危険が大きい場所だ。
もしも俺の身に何か起こった際にアンジェリカ殿や魔王様にかなり負担をかけてしまう。
順調に調査できたとしても俺一人で調べられる事には限りがあるだろうから大人しく待っているのが無難な判断だろう。

「今は辛いかもしれないけれど、少しの間我慢よ。なるべく早く戻ってくるから」
「承知した」

アンジェリカ殿は俺の返事を聞くと早速飛び立つ為に翼を広げた時に一瞬嫌な感覚を感じ、咄嗟に剣を抜き警戒体制をするやいなや俺たちめがけて四方八方から魔法の石の矢が発射された。

「!!!」
俺は直ぐにアンジェリカ殿の前に立ち一瞬で氣を練り上げ強くそして分厚く剣に纏わせて前方の魔法を薙ぎ払う。
「アンジェリカ殿!」
「無事!」

返事を短く返したアンジェリカ殿も恐ろしい速度で防御魔法を展開して背後からの魔法を防いでいた。

「ちっ、これを防ぐのかよ。めんどくせえな」

射撃を防いだ俺たちに向けて何処かからか声がした。
攻撃に気がつけたのは常に氣で気配を探っていたからなのだが、攻撃魔法が発動する今まで俺が他の気配に気がつく事はできなかった。そして今も敵の方向がわからず周辺を見渡している。

「氣の探知を欺くほどの隠蔽魔法ね」
「ははは!俺の結界に入った時点でもう俺を見つけられない。姿を認識できなくした。テメェらは何か厄介そうな事をしてるな。逃さねえ」

どこかから聞こえる声は不敵に笑う。確かに認識出来なないものの印象を感じ取るというのは無理な事だ。俺たちは結界を越えた時点で補足されて更には不利になる魔法まで施されていたらしい。
そしてどうやら会話まで聞かれていたようで状況が悪い。

「アンジェリカ殿、行ってくれ!」
「あなたはどうするの?」
「この程度なら問題ない!」
「流石!絶対に逃げ延びてね」

俺の言葉に虚勢がない事をアンジェリカ殿に感じ取らせると、アンジェリカ殿は再び翼を広げた。

「逃さねぇって言ったよな!」

そう敵の声がして魔力が動く感覚を感じ、そして俺は何も感じない場所に向かって最大限の殺気を放つ。
認識出来なくされたのなら認識出来ないものを探せばいいという逆転の発想だ。
氣の広域探知でありとあらゆるものを感じ取れば逆にぽっかりと穴が空いたような違和感が感じられる。
ネタがわかれば対処可能だ。
殺気に反応した相手の挙動はわからないが、それで魔力が霧散した感覚がわかった。動揺したのだろう。
そしてその隙にアンジェリカ殿が空へと一直線に舞い上がり南に向かって飛び立って行った。

「なんでだ!?クソ面倒くせえ!」

聞こえてきた声はバレないという自信を砕かれ動揺している。
今ならば俺も逃げる事ができそうだが、まずい事に相手に俺たちがしようとしていた事を聞かれている。
アンジェリカ殿がこちらに戻るまでどれほどだろうか。少なくとも1日2日で戻って来られる距離ではないだろう。その間にこの港が放棄されてしまったら、せっかくの手がかりがなくなってしまう可能性が大いにある。
ならば敵に情報を持ち帰らせない事が重要だ。
俺は短く息を吸い込み吐き出した。
厄介な相手だが、確実に倒す!
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