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3章 バーンデッドディザスター
449話 術中
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氣の精度を磨く鍛錬の中には目を隠し耳を塞いだ状態での稽古もある。
氣の感覚のみで相手の動きを察知して立ち回るものだが、相手も達人クラスになってくると当然のように気配を消して向かってくる。
そうなると相手の気配以外のあらゆるものをくまなく感じ取り変化を見つけて対応せざるを得なくなる。
俺は産まれてこのかた72年のうちの殆どを氣や剣技の鍛錬に費やしてきた。
騎士の家に生まれ、人々を守る役目を果たす為には自身を鍛える事は当然であるし、自分自身武を極めるという事は好きだった。
才能で言えば俺以上なんていくらでもいるだろう。
でも長い経験上才能や実力差を努力で覆すという事をなん度も見てきたし、体験もある。
逆境などなんのその、心を燃やして折れないものが最後に勝つ。
俺は雪の積もる森の中を全速力で走る。
極北の国のルスウェーの騎士にはこんな足元の悪さは慣れたもの。
相手の魔導士も逃げてはいるがそれほど早くはない。俺が魔導士と対峙するまでにはそう時間は掛からなかった。
とはいえ俺は魔導士を認識出来ない魔法を受けてしまっている為姿の視認はできないが、目の前にいることは雪についた足跡や衣類の擦れる音、空気の流れ、などで感じ取れる。
「なんで分かるんだよめんどくせーな!」
魔導士はよほど自分のかけた認識出来なくなる魔法に自信があったのか、焦る様子で悪態をつく。
「舐められたものだな。覚悟!」
見えない相手に告げると同時に接近を試みる。しかし魔導士の魔法も早く俺の進路に燃え盛る土壁が出現して道を塞いだ。
「それがどうした!」
俺は歩みを止めることなく壁を剣で一薙ぎして魔導士の方へ切り飛ばす。
「うわっ!」
自分の魔法を利用された攻撃を魔導士はなんとか交わしていたようだが、更に追い討ちで、俺が道中に拾っておいた木の小枝を投げ撃つ。
「くっ!」
小枝はしっかりと魔導士に命中すると同時に俺の視界にも魔導士の姿が見えるようになった。
普人族の小柄な女で、雪景色の森には目立ちすぎる黒い分厚いローブ姿だ。
なんで姿が見えるようになったのかだが、認識出来ないという魔法の前提が俺のこれまでの行動で崩れ、攻撃を当てた事で意味をなさなくなったから魔法が解けたのだろう。
姿が見えて認識できるようになれば好都合。一瞬で強力な殺気を放ち、行動を否定し、素早く接近すると上段から思いっきり殺気を込めた剣で魔導士を真っ二つに切り捨てた。
「くそっ」
今度は俺が悪態を放つ。
認識が出来た時点で気がついたが、この魔導士は魔法で出来た人形だった。俺はまんまと偽物を追わされていた。
「ふふふ、頑張ったのに残念だったな。ここは俺の領域だ、テメェらが自由になる事はねえ。久々の客だ。じっくりと可愛がってやるよ」
どこからともなく魔導士の言葉が響いてくる。
状況が悪い。俺が氣で感じ取れる範囲全てをくまなく探しても何の手がかりもない。
魔導士はおそらくずっと遠くから俺の行動を監視し、遠隔で魔法を行使している。
魔導士の言葉には得体の知れないものを感じる。
強力な魔導士がいる想定はあったが、俺が思っていたよりもずっと強い。
それに魔導士の言葉は俺だけとは言っていない事も気がかりだ。
「気になるよな。テメェの連れの魔人族の女は既に捕らえさせてもらったぜ」
「!」
「ははは!助けたいか?助けたいよなー仲間だもんな。取り返しに来いよ、探してみろよ、遊ぼうぜ」
「下衆が!」
「楽しませてくれよ」
不快に笑う魔導士の声が途切れ、そして俺の世界が壊れた。
氣の感覚のみで相手の動きを察知して立ち回るものだが、相手も達人クラスになってくると当然のように気配を消して向かってくる。
そうなると相手の気配以外のあらゆるものをくまなく感じ取り変化を見つけて対応せざるを得なくなる。
俺は産まれてこのかた72年のうちの殆どを氣や剣技の鍛錬に費やしてきた。
騎士の家に生まれ、人々を守る役目を果たす為には自身を鍛える事は当然であるし、自分自身武を極めるという事は好きだった。
才能で言えば俺以上なんていくらでもいるだろう。
でも長い経験上才能や実力差を努力で覆すという事をなん度も見てきたし、体験もある。
逆境などなんのその、心を燃やして折れないものが最後に勝つ。
俺は雪の積もる森の中を全速力で走る。
極北の国のルスウェーの騎士にはこんな足元の悪さは慣れたもの。
相手の魔導士も逃げてはいるがそれほど早くはない。俺が魔導士と対峙するまでにはそう時間は掛からなかった。
とはいえ俺は魔導士を認識出来ない魔法を受けてしまっている為姿の視認はできないが、目の前にいることは雪についた足跡や衣類の擦れる音、空気の流れ、などで感じ取れる。
「なんで分かるんだよめんどくせーな!」
魔導士はよほど自分のかけた認識出来なくなる魔法に自信があったのか、焦る様子で悪態をつく。
「舐められたものだな。覚悟!」
見えない相手に告げると同時に接近を試みる。しかし魔導士の魔法も早く俺の進路に燃え盛る土壁が出現して道を塞いだ。
「それがどうした!」
俺は歩みを止めることなく壁を剣で一薙ぎして魔導士の方へ切り飛ばす。
「うわっ!」
自分の魔法を利用された攻撃を魔導士はなんとか交わしていたようだが、更に追い討ちで、俺が道中に拾っておいた木の小枝を投げ撃つ。
「くっ!」
小枝はしっかりと魔導士に命中すると同時に俺の視界にも魔導士の姿が見えるようになった。
普人族の小柄な女で、雪景色の森には目立ちすぎる黒い分厚いローブ姿だ。
なんで姿が見えるようになったのかだが、認識出来ないという魔法の前提が俺のこれまでの行動で崩れ、攻撃を当てた事で意味をなさなくなったから魔法が解けたのだろう。
姿が見えて認識できるようになれば好都合。一瞬で強力な殺気を放ち、行動を否定し、素早く接近すると上段から思いっきり殺気を込めた剣で魔導士を真っ二つに切り捨てた。
「くそっ」
今度は俺が悪態を放つ。
認識が出来た時点で気がついたが、この魔導士は魔法で出来た人形だった。俺はまんまと偽物を追わされていた。
「ふふふ、頑張ったのに残念だったな。ここは俺の領域だ、テメェらが自由になる事はねえ。久々の客だ。じっくりと可愛がってやるよ」
どこからともなく魔導士の言葉が響いてくる。
状況が悪い。俺が氣で感じ取れる範囲全てをくまなく探しても何の手がかりもない。
魔導士はおそらくずっと遠くから俺の行動を監視し、遠隔で魔法を行使している。
魔導士の言葉には得体の知れないものを感じる。
強力な魔導士がいる想定はあったが、俺が思っていたよりもずっと強い。
それに魔導士の言葉は俺だけとは言っていない事も気がかりだ。
「気になるよな。テメェの連れの魔人族の女は既に捕らえさせてもらったぜ」
「!」
「ははは!助けたいか?助けたいよなー仲間だもんな。取り返しに来いよ、探してみろよ、遊ぼうぜ」
「下衆が!」
「楽しませてくれよ」
不快に笑う魔導士の声が途切れ、そして俺の世界が壊れた。
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