異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
117 / 753

偽りの婚礼の夜

しおりを挟む
真夜中の城は、静寂に包まれていた。月の光が、厚いカーテンの隙間から差し込み、埃を舞わせる。ベッドの上では、アリアとレオナルドが、奇妙な距離感を保っていた。

アリアは、レオナルドの隣に横たわっていた。レオナルドは、敵国の皇太子。そして、アリアは、彼の純潔を奪うために、この場にいた。父親の命令だ。アリアの父は、大国の宰相。この結婚は、両国の平和を保つための、政治的な取引だった。

「……あの、」アリアは、小さく呟いた。レオナルドは、目を閉じて、まるで眠っているようだった。しかし、アリアは、彼の呼吸が穏やかであること、そして、彼の体に感じる微かな緊張を感じ取っていた。

「……本当に、これでよかったんでしょうか」

アリアは、自分の行動に疑問を感じ始めていた。レオナルドは、優しい目をしていて、彼女を傷つけるような人ではないように見えた。なのに、彼女は、彼をベッドに押し倒し、彼の純潔を奪ったのだ。

「……ごめんなさい」

アリアは、レオナルドの手を握った。彼の肌は、驚くほど温かかった。彼女は、自分が彼を傷つけていると感じた。政治的な取引とはいえ、これは、彼の人生を大きく変える出来事だったはずだ。

レオナルドは、ゆっくりと目を覚ました。「……アリア?」

彼の声は、かすれていた。アリアは、彼の顔を見つめた。彼の目は、悲しみと混乱で満たされていた。

「……あの、私…」アリアは言葉を詰まらせ、言い訳を探した。しかし、言葉が出てこない。

レオナルドは、アリアの手を優しく握り返した。「…大丈夫だよ」

彼の言葉は、予想外だった。アリアは、彼の優しさに、更に罪悪感を抱いた。

それから数日後、アリアは、レオナルドと共に、城を抜け出した。二人は、馬に乗って、国境を越えた。どこへ行くのか、具体的な計画はなかった。ただ、この国、この政治的な陰謀から逃れたいという一心だった。

逃亡生活は、想像以上に大変だった。お金もなく、食べ物も乏しかった。アリアは、自分の身分を隠すために、髪を短く切り、男装した。レオナルドも、普段着に着替え、目立たないように行動していた。

しかし、二人の間には、不思議な一体感が生まれていた。最初はぎこちなかった会話も、次第に自然なものになっていった。レオナルドは、アリアの優しさに惹かれ、アリアは、レオナルドの誠実さに心を打たれていた。

ある日、二人は、小さな村に辿り着いた。そこでは、平和な生活を送る人々が暮らしていた。アリアとレオナルドは、村人たちに助けられ、小さな小屋を借りて暮らすことになった。

アリアは、村でハーブの栽培を始めた。レオナルドは、村人たちに木工を教え、生活の助けとした。二人は、互いに支え合いながら、静かで穏やかな日々を送っていた。

最初は、アリアは、父親の命令に従ってレオナルドの純潔を奪ったことを後悔していた。しかし、時間が経つにつれて、彼女は、レオナルドとの生活に幸せを感じ始めた。

レオナルドもまた、アリアを愛していた。彼は、アリアの優しさ、強さ、そして、純粋な心に惹かれていた。二人の間には、政治的な駆け引きはなく、ただ、純粋な愛情だけがあった。

ある晩、満月が空に輝いていた。アリアとレオナルドは、小屋の前に座り、静かに夜空を見上げていた。

「…幸せだね」レオナルドが、静かに言った。

アリアは、微笑んで、レオナルドの手を握った。「うん。本当に幸せ」

そして、二人は、互いの温もりを感じながら、静かに夜を過ごした。政治の影から逃れた二人の未来は、まだ見えずとも、明るい光に満ちていた。  二人の新しい人生は、まさにこれから始まるのだった。  偽りの婚礼の夜から始まった、真の愛の物語は、静かに、そして力強く、続いていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...