『好きになったら負け』のはずなんだけど、もしかするとお互いにずっと好きだったのかもしれない

α作

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#春樹視点 #ep4

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 試練を終えて、帰り道を歩く。
 いつもの道、いつもの時間。
 でも、さっきの会話だけが、頭の中に残っていた。

『いつもはダメで、適当で、だらしないけど、春樹は根っこの部分では真剣だから』
『そ、そういう春樹だから、昔から信頼してたっていうか……』
『たぶん、自分では気づいてないんだろうけど、私、そういうところ、ずっと嫌いじゃない』

(根っこの部分では真剣だから、か)
 蒼依に言われた言葉を思い出しながら、考える。
 特別、意識したことはなかった。
(って、別に全員にそうしてるわけじゃないけど)
 蒼依が相手だと、いつもそんな感じになっている。
 それがどういうことなのか、自分でもよく分からない。
 でも、それを『真剣』と言われると、何だか違っているような気もした。

 蒼依の言葉がすっきりとしない理由は、きっとそれ。
 俺は、何か特別なつもりでやってるわけじゃない。
 蒼依に対しては、そうするのが普通になっていただけで。
(まあ、嫌だったことなんてないんだけどな)

 スマホを取り出すと、アプリの画面には『恋ごころ+20』の文字が表示されていた。
 数字で示されても、何だかしっくりこない。
「こんなの、いちいち気にすることじゃないんだが」
 そうつぶやいて、スマホをポケットにしまう。
 今日の勝負に関しては——どこかで蒼依の勝ちのような気がしていた。
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