結婚しているのに女遊びをしまくった【勇者】。バレた瞬間、金も酒も外出も出来なくなって、土下座したけどもう遅い

あねものまなぶ

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監禁!?

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「もう、堪忍袋の緒が切れました。貴方は今後一切、外に出しません! 家の中に閉じ込めます、監禁します!!」

ジェスターの目の前は真っ暗になった。
顔は死人のように青ざめ、奥歯をガタガタと震わせている。
脳裏によぎる日々をイメージすると、生物の根源的な部分が刺激され、思考とは関係なく体が震える。

情けなくも床に座り込み震えている男、ジェスターは<勇者>だ。
伝説の再来、救世主と持て囃され、聖剣を振るい世界を恐怖のどん底に陥れる魔王と戦っていた。

14歳の時に女神からのお告げを授かり、18歳の時に魔王幹部を退けた。

その時から、各地で勇者の存在が認知され、同時に女の子たちの憧れの異性と認識された。

(...なんて言ったら許されるんだろうか)

ジェスターは酒が好きで、女が好きだ。
市民からの信頼も厚く、本人の気さくな性格故か、戦いの後は宴会に誘われることが多い。
昨日も、一昨日も飲み会に参加し、気が付いたら知らない女の人と一緒に寝ていた。

だが、今日はバレた。
いや、元々バレていたのかもしれない。
ただ、泳がされていただけなのかもしれない、それ程までに目の前の女性は優秀だ。

昨日は冒険者ギルドでの宴会に参加し、朝になったら受付嬢の娘と一緒に寝ていた。
(なんで、バレたんだ。なんで機能に限って...何が悪かったんだ!)
ギルドの受付の娘と寝ていたことが悪いのだが、そんなことなど彼の考えの中にはない。

朝、何時ものように家に帰るといつものように出迎えた嫁。
ただ、今日は違った。
何かを感じ取った嫁は、この世界でも上位に位置するほどの力を持つ勇者ですら恐れおののくようなプレッシャーを放ち、彼を正座させた。

「もう限界です! 今までは見逃していましたが、もう駄目です! とうとう、一線を越えましたか!!」

(はて? 一線を超えた...なんのことやら?)
「おいおい、それは何のことだ? 一線なんて超えてないぞ? てか、一線ってなんだよ?」
「まぁっ! 何時ものように言葉巧みに躱せるとは思わないで下さいね! もう、騙されませんし、貴方を他のメス共に渡したりもしません!」

嫁の言葉は本当の様だ。
だって、なんか知らないけど、さっきまで空いていた玄関が閉まったもの...。
何故か、嫁の魔法で俺が拘束されたもの...。

「貴方の酒癖、浮気癖は大目に見てきましたが、もう駄目です!」
ジェスターは自分の心配もしたが、それと同時にもう一つ心配があった。

「あの...俺って勇者してるじゃん? ほら、勇者の聖剣でしか倒せない魔物とかいるじゃんか? やっぱり、監禁はまずいって」
そう、ジェスターが居なければ特定の敵は倒すことが出来ない。
それ程まで勇者の力は絶大なのだ。

「なにをバカなことを言っているのです! 昨日の夜、その聖剣でしか倒せない魔物とやらと戦ってきましたけど、私でも倒すことが出来ました。なので、貴方を監禁しても問題ありません」

ジェスターは万策尽きた。
成す術がない。

「という事で、貴方はここにずっといて貰います。 まぁっ! 楽しい日々が始まりますねっ!」
嫁の笑顔が、これ程までに怖いとは思わなかったジェスターである。


―― 魔王城 

「はっはっは、おい見てみろよ! 勇者の野郎が嫁に負けだぞ! これで、世界征服も目前だなぁ!」
魔王城。
勇者と敵対している魔王が済む城。
天敵である勇者が、嫁に監禁されると知るや否や、高笑いをして喜び踊る。

「はい、魔王様の言うう通りでございます。この世界もいずれ魔王様のモノに」
恭しく魔法に頭を下げる女性型の魔物、サキュバスだ。

「勇者が浮気かぁ...そいつはいけねぇな。男は嫁がいるなら、そいつにすべての愛情を向けてやんねぇとな...なぁ?」
「えぇ、まったくでございます」
「だろだろ? 俺なら一途に嫁を愛し続けるがなぁ? 俺って、勇者と違って男として優れてるものぉぉぉ!!」
勇者の惨めな姿を見ることが出来て余程嬉しいのか、声高らかに自慢をする魔王。

――この時の魔王は、思うまい。まさか、自分が勇者と手を組むことになろうとは。この時の彼女の瞳は獲物を狙っている肉食獣のようであったとは。





ジェスターは乱暴されることなく、拘束も解かれた。
勿論、家の全ての窓、出入り口には魔法が設置されジェスターが外に出られないようになっている。

「マジかよ...嫁も本気だな」
聖剣で魔法を切り裂いてもすぐに再生してしまう。
派手に動けば、嫁に見つかり、そのまま何もかもを搾り取られるように愛されることだろう。
脱出を試みれば、気付いたら朝、しかも筋肉痛付き!
なんでのは、あんまりだろう。

しかし、勇者はこの現実を前に膝をついてなどいない。
彼は勇者、あらゆる困難を切り伏せてきた強者だ。

(監禁がなんだ! 俺は勇者だぞ! こんなのエンシェントドラゴンに比べたらどうってことない!!)
漲る闘士、迸る魔力、まさしく勇者だ。

「俺の聖剣をなめるなよぉぉぉぉ!」
溢れんばかりの輝きが、狭い部屋の中を包み込む。
ありったけの魔力を込めた聖剣の斬撃は、強靭な鱗を持つドラゴンをも切り裂く。

(こんな魔法なんてイチコロだ! これで受付嬢ちゃんといっぱいいっぱい愛し合えるぜ!!!!)
一線とは何なのか?と先程は惚けていたが、それはブラフ。
勿論、勇者は受付嬢を喰っていた。
嘘をつき、嫁を裏切りる人間の屑が今代の勇者だ。
聖剣が嫁の監禁を逃れるために使われようとは、女神は泣いているかもしれない。
しかし、聖剣の輝きが収まった後には代わり映え無い部屋しか移していない。

「あれまぁ? なんでだろ? 魔法位なら...」
「貴方の魔力による攻撃はすべて無効にしていますので...貴方が何をしても無駄ですよ?」
何時のまにか背後には嫁。

「まさか、脱出しようとしていましたか?」
ジェスターが目覚めたとき、横には嫁が寝ていた。
勿論、筋肉痛だった。
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