国王陛下、王太子殿下、貴方達が婚約者に選んだ人は偽物ですよ。教えませんけれどね♪

山葵

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私は物心付いた時から妖精の姿が見えていた。

歩ける様になると妖精に連れられ森に入る。
そこで私は妖精王グリース様に会う。

グリース様は、私を気に入り加護を授けてくれた。

妖精王グリース様は、私が願えば国が豊かになると告げた。
また、その逆もしかりで、私が願えば大地は枯れ、食物や草木は枯れ果て、国は滅びると…。

グリース様は、最後に契りを結んだ事を誰にも言ってはならぬと私に告げた。



私、マリーナは、カイロス王国のロザリオ侯爵家の長女として産まれた。

元々、身体の弱かった母は、マリーナが2つになると風邪を拗らせ亡くなってしまった。

父は、直ぐに恋い焦がれていた義母イザベルと再婚し、すでに1つになる父とイライザの子のアイリスを呼び寄せた。
彼らは、まるで3人家族であるかのようにマリーナの存在を無視した。

それからのマリーナは、乳母であるサイヤに育てられ、自分でも使用人の子なのでは?と思う程、使用人として暮らしていた。

父や義母、義妹が贅沢な食事をしても、綺麗に着飾っていても何も思わなかった。

寧ろ、自分はこのまま平民になり、自由に暮らしたいとさえ思っていた。

サイヤが歳で屋敷を去る事になった時は、父に自分もサイヤと共に田舎に行きたい!と願い出たが叶う事はなかった。
やはり侯爵家としての世間体を気にしてなのだろうか?
私の事は病気で寝たきりだと世間には言ってどうせ外には出さないのだから、死んだ事にして自由にして欲しいものだと思う。

この国では、15歳になると貴族の子は、学園に通う。
だがマリーナは、世間には病弱になっている為、通う事は勿論許されない。
それでも侯爵家の世間体がある為、口の固い家庭教師が付けられた。

ある日、マリーナは父の執務室に呼ばれる。
部屋に入ると、イザベルとアイリスの姿もあった。

「お呼びで御座いましょうか?」

「あぁ…まぁ座れ」

珍しくソファーに座るように指示され驚く。

「使用人に座らせる席など有りませんよ」

「そうよ!そうよ!」

私は黙って、その場に立っていた。

「黙れっ!!マリーナも、早くそこに座れ」

父に怒鳴られる事を知らないアイリスは、狼狽え、お前のせいだとばかりに私を睨んでいたが、それを無視してソファーに座った。

「本日、国王から、年頃の年齢の令嬢は全員、王家主催の茶会に出席する様に通達が来た。これは、王太子の婚約者選びだ。我がロザリオ侯爵家もマリーナとアイリスに出席する様にとの事だ」

「まぁ旦那様、アイリスは出席するのは当然ですが、淑女としての礼儀作法も出来ていないマリーナが出席するなんて…病気と言って断られては?」

「はっ?王命を断れと!?今回の茶会は年頃の高位貴族から低位貴族の令嬢全てなのだぞ!?拒否権は無いという事だ」

父に睨まれ、義母は怯んでいる。
余計な事を言わなければ良いのに…。
頭が悪いのか!?

父だって王命でなければ、私を外に出すなんてしないだろう。

私だって欠席出来るので有ればしたい。

「マリーナは、執事長に最低限のマナーを習うように!それとドレスの手配は、イザベルに任せる。…マリーナにも侯爵家の令嬢として相応しい装いをさせる様に!以上だ」

そう言うと、父は執務に戻った。

私は、執務室を出ると、後から出てきたイザベルに仕立て屋を呼ぶから、使用人の服からワンピースに着替えておく様に言われる。

「はぁー面倒臭い」

『マリーナ、溜め息を吐くと幸せが逃げちゃうよ♪』

『マリーナなら選ばれるよ!』

「えっ!?嫌よ!!」

『『何で!?』』

『マリーナは、結婚せずに俺っち達と居たいもんなっ!邪魔物は消すか?』

「それは止めてね、スイ。私は貴族らしい生活もした事が無いのよ。王族に嫁ぐなんて無理よ!」

『そうかな!?』

『そうなの?』

『じゃあ邪魔者はぶっ飛ばすだけにするか?』

兎に角、当日は目立たない様に壁の華になっていましょう…。
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