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雨の中を馬車を走らせ、義父母が住むモイス伯爵家の本邸へと向かう。
「ケイト奥様。この雨の中を、何か有ったのですか!?」
雨の中、突然の訪問に出迎えた執事のセスは驚いている。
「お義父様にお会いしたいのだけれど、取り次いでもらえる?」
「申し訳御座いません。旦那様は只今、外出しております」
「そう…遅くなるのかしら?」
私の声が聞こえたのか、義兄のギルバートが執務室から出て来た。
「やあケイト。この雨の中、どうしたんだい?」
「お義兄様、お義父様にお聞きしたい事が御座いまして伺ったのですが、留守の様なので、どうしようかと…」
「もし、私で分かる事なら答えるけれど?」
そう言われ、私は応接室に招かれる。
義兄のギルバートは、まだ結婚をしていない。
婚約者が居たのだが、相手に浮気をされて破談になってしまったのだ。
「それで、父上に何を聞きに来たのかな?わざわざ雨の中に訪ねて来るなんて余程の事だろう?もしかしてブルースの事?」
この方、変に感が鋭いのよね。
確か婚約者の浮気が分かったのも、ちょっとした仕草がいつもと違うと感が働いたのだと聞いた。
「その…ブルースは、お義父様の命で領地視察に行くと言って出掛けたのですが、それは本当なのでしょか?いえ、ブルースの言葉を疑っているわけではないのです。ただ…」
「ふぅ~ん、ブルースはケイトに父上に指示されたと言って出掛けたと…。それで君は、わざわざ雨の中、本当か確かめに来たと…」
ケイトは、感情的になってモイス伯爵家に来てしまった事を後悔した。
「…申し訳御座いません。わたくし、どうかしておりました。御暇いたします」
「ああ、ごめん、ごめん。君を責めている訳ではないよ。ケイトは、真実を確かめて、安心する為に来たんでしょう?」
黙って頷く。
「うん、そうだよねぇ~。私が、弟を庇い嘘を言えたのならケイトは安心出来ると分かっているんだ。でも、ここで私が嘘を付いても、きっと嘘はバレる。ケイトも嘘をつかれたくないだろう?」
私はまた黙って頷いた。
「父上は、ブルースに領地視察など依頼していない。ブルースは友人の所に遊びに行くから1週間休ませて欲しいと父上と私に言ってきた」
私は堪えきれず涙が溢れた。
「ケイト。君はブルースが浮気をしていると疑っているのかい?」
「わたくしの従姉妹が、ブルースが女性と一緒に歩いているのを見たと教えてくれたのです」
「それは従姉妹殿が見間違えたとか?」
私は首を横に降る。
「ブルースと一緒に居た相手の女性が……義母のマリアだったと…だから見間違えるはずがないと…」
「ああ、なんてことだ。…すまないケイト」
ギルバートは、ソファから立ち上がりケイトに頭を下げた。
「お、お義兄様。頭を上げて下さい!」
そこにお義父様が帰宅され、応接室へと入って来た。
ギルバートが頭を下げ、泣きながら慌てているケイトの姿に驚いている。
「一体、何があったのだ!?」
ギルバートは、お義父様に説明してくれた。
「あの馬鹿息子がっ!!よりにも寄ってケイトの義母と浮気するなど…」
「それでケイトは、ブルースと離縁したいのか?」
離縁。
そこまでは考えていなかった。
でも義母と浮気する人などと、もう一緒に暮らす事は出来ない。
「まずは父と話をしたいと思います」
「そうだな…両家でも話さねばなるまい」
私は、実家に戻る為に、席をたった。
玄関ホールまで、ギルバートが送ってくれた。
謝るギルバートに、挨拶をすると、今度は実家のドルス侯爵へと雨の中、馬車を走らせた。
「ケイト奥様。この雨の中を、何か有ったのですか!?」
雨の中、突然の訪問に出迎えた執事のセスは驚いている。
「お義父様にお会いしたいのだけれど、取り次いでもらえる?」
「申し訳御座いません。旦那様は只今、外出しております」
「そう…遅くなるのかしら?」
私の声が聞こえたのか、義兄のギルバートが執務室から出て来た。
「やあケイト。この雨の中、どうしたんだい?」
「お義兄様、お義父様にお聞きしたい事が御座いまして伺ったのですが、留守の様なので、どうしようかと…」
「もし、私で分かる事なら答えるけれど?」
そう言われ、私は応接室に招かれる。
義兄のギルバートは、まだ結婚をしていない。
婚約者が居たのだが、相手に浮気をされて破談になってしまったのだ。
「それで、父上に何を聞きに来たのかな?わざわざ雨の中に訪ねて来るなんて余程の事だろう?もしかしてブルースの事?」
この方、変に感が鋭いのよね。
確か婚約者の浮気が分かったのも、ちょっとした仕草がいつもと違うと感が働いたのだと聞いた。
「その…ブルースは、お義父様の命で領地視察に行くと言って出掛けたのですが、それは本当なのでしょか?いえ、ブルースの言葉を疑っているわけではないのです。ただ…」
「ふぅ~ん、ブルースはケイトに父上に指示されたと言って出掛けたと…。それで君は、わざわざ雨の中、本当か確かめに来たと…」
ケイトは、感情的になってモイス伯爵家に来てしまった事を後悔した。
「…申し訳御座いません。わたくし、どうかしておりました。御暇いたします」
「ああ、ごめん、ごめん。君を責めている訳ではないよ。ケイトは、真実を確かめて、安心する為に来たんでしょう?」
黙って頷く。
「うん、そうだよねぇ~。私が、弟を庇い嘘を言えたのならケイトは安心出来ると分かっているんだ。でも、ここで私が嘘を付いても、きっと嘘はバレる。ケイトも嘘をつかれたくないだろう?」
私はまた黙って頷いた。
「父上は、ブルースに領地視察など依頼していない。ブルースは友人の所に遊びに行くから1週間休ませて欲しいと父上と私に言ってきた」
私は堪えきれず涙が溢れた。
「ケイト。君はブルースが浮気をしていると疑っているのかい?」
「わたくしの従姉妹が、ブルースが女性と一緒に歩いているのを見たと教えてくれたのです」
「それは従姉妹殿が見間違えたとか?」
私は首を横に降る。
「ブルースと一緒に居た相手の女性が……義母のマリアだったと…だから見間違えるはずがないと…」
「ああ、なんてことだ。…すまないケイト」
ギルバートは、ソファから立ち上がりケイトに頭を下げた。
「お、お義兄様。頭を上げて下さい!」
そこにお義父様が帰宅され、応接室へと入って来た。
ギルバートが頭を下げ、泣きながら慌てているケイトの姿に驚いている。
「一体、何があったのだ!?」
ギルバートは、お義父様に説明してくれた。
「あの馬鹿息子がっ!!よりにも寄ってケイトの義母と浮気するなど…」
「それでケイトは、ブルースと離縁したいのか?」
離縁。
そこまでは考えていなかった。
でも義母と浮気する人などと、もう一緒に暮らす事は出来ない。
「まずは父と話をしたいと思います」
「そうだな…両家でも話さねばなるまい」
私は、実家に戻る為に、席をたった。
玄関ホールまで、ギルバートが送ってくれた。
謝るギルバートに、挨拶をすると、今度は実家のドルス侯爵へと雨の中、馬車を走らせた。
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