私が悪役令嬢じゃない?そんな事を言われても困ります。

山葵

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「マリアーナが、ちゃんと悪役令嬢をしてくれないから本当に困るのよねぇ~。毎回、毎回、自作自演する事になるなんてさぁー。えぇっと、今日はマリアーナに呼び出されて階段から突き落とされるんだったわね?大怪我しない様に気を付けて、グリードが通る時間に合わせて落ちると…」

「貴方がセリアさんかしら?わたくしを、こんな所に呼び出して、一体何の話が有るのですか?」

私は、別のクラスの男爵令嬢であるセリアさんに旧校舎に続く廊下の途中にある階段に呼び出されていた。

人通りも少ないこんな場所に呼び出す用事とは一体何なのか?

最近、セリアさんが付き纏っていると聞く、私の婚約者グリード王太子殿下の話なのだろうか?

「ああ、マリアーナ様。少しグリード様の事でお耳に入れたい事がありまして。ここでは人が来る可能性もあるので、1つ下の階の空き教室で話を…あっ、きゃあぁー!!な、何をなさいますの!?マリアーナ様ぁーっ!!誰か、助けてぇ~」

そう言って私より先に階段を降り始めたセリアさんが、何も無い所で躓いたのか、階段を落ちそうになりながらわけの分からない事を叫んでいた。

「ちょっとセリアさん!?危ないですわっ!!」

私は、咄嗟にセリアさんの腕を掴み、セリアさんの体勢を戻したが、その反動で自分が足場を失くし身体が宙に舞う。

ああ、落ちる…。

「アハハッ!グリード様に近付くからこうなるのよ!落ちるのはあたしだったけれど、痛いのは嫌だし、まぁいいかっ!アハハ、いい気味だわ!」

私は、落ちていく私を嘲笑うセリアさんを見ていた。

『マリアーナ・ブリセント。私は君との婚約破棄を宣言する!君は、ここにいるセリア・セロ男爵令嬢を虐め陥れ様とした。そんな者は王太子妃として相応しくない。セリア、心優しい君こそ私に相応しい。君を愛している。どうか私と結婚して欲しい』

『私も愛していますわ、グリード様』

『マリアーナ。本当にお前はセロ男爵令嬢を殺害しようとしたのか!?なんて愚かな事を…あぁブリセント侯爵家は、もう終わりだ。私達も処刑されるのだ』

蘇る様に頭の中を駆け抜ける言葉と画像…。

これは一体なに?

『花菜、またその漫画を読んでいるの?』

『今読んでるページが、悪役令嬢が断罪されるところなんだけど、本当にこの悪役令嬢のマリアーナが嫌な奴でさぁー。婚約破棄されてセリアに逆恨みして殺そうとするんだよー。自分の性格が悪いからグリードに捨てられたの分かんない馬鹿女、処刑されるの仕方ないよねぇー』

ああそうだ。私、ヒロインを虐め殺そうとする悪役令嬢マリアーナだわ。
セリアさんは、グリード殿下と真実の愛で結ばれるヒロインなんだわ。

私は2人の邪魔をする嫌な悪役令嬢マリアーナに転生していたのね。
そっか。だから少し予定よりも早いけれど、2人の仲を邪魔する邪魔者だから消えてしまうのね……。


「マ、マリアーナっ!!大丈夫かっ!?マリ…」

薄れゆく意識の中で私はグリード殿下の叫ぶ声を聞いた。
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