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「ちょっとエバ、水くさいじゃない!従姉妹の私に結婚するのを教えないなんて酷いわ!それに我が家に招待状も届いてないし…まさか既成事実を作って妊娠したとか?だから公にせずに、身内だけで結婚式を挙げるとか!?」
突然の従姉妹のライザの訪問にも驚いたが、その話の内容にも驚く。
私が結婚?誰と?
「ちょっと、エバ、聞いてるの!?」
鼻息荒く詰め寄るライザに、何が何だか分からずに言葉が出ない。
私に婚約者は居ない。
そろそろ決めないと行けないと思うのだが、まだお父様から決まったとは聞いていない。
決まったのにお父様が言い忘れているとか?
まさかね…。
それに来月に結婚式を挙げるとライザが言っていた。
いくらお父様でも来月に結婚式を挙げるのに私に伝えないはずがない。
「ライザ、落ち着いてくれる。はい、お茶を飲んで。」
ソファに座り、使用人が淹れてくれたお茶を2人で飲み、一呼吸。
「それで、どうして私が結婚する事になっているの?まだ婚約者も決まっていないのに。」
「ジュンナ皇女様のお茶会に行ったら、貴女が来月に結婚すると話題になったいたのよ。皆に取り囲まれて貴女の相手は誰なのか?と聞かれて驚いたわ。従姉妹の私が知らないなんて、恥ずかしかしかったわよ。どうして教えてくれなかったのよ!」
「だから、結婚する予定もないし、婚約者もまだ居ないと言っているでしょう。一体どうしてそんな噂が…。」
扉がノックされ、お父様が入って来た。
その後には…。
私とライザは慌てて席を立つ。
「畏まらなくて良い。久し振りだね、エバリンジュ。すっかり大人になって綺麗になった。」
「ジョルジュ殿下。ご災息で何よりに御座います。ジョルジュ殿下も御立派になられましたね。前にお会いしたのは8年前位になりますでしょうか?」
「君に弱い男は嫌いだと言われたのでね。強くなる為に国に戻ってから精進したんだ。無事に学園も卒業し、直ぐに迎えに来たかったんだが、執務の関係で出発が遅れてしまって申し訳ない。」
誰かと約束でもあったのかしら?
「それでエバリンジュ。明後日にはリクベクト国に向けて出発したいのだけれど、大丈夫かい?」
「ジョルジュ殿下、エバの荷物は明日には準備を終えます。」
「まあ何も持たずとも向こうで揃えても良いし、サイナス侯爵も無理しないでくれ。式の準備も滞りなく母上がしてくれている。エバリンジュが来るのを今か今かと待ちわびていてね。」
話が見えない私とライザは呆然としていた。
「はっ!まさかエバの結婚相手ってリクベクト国のジョルジュ第3王子なの!?何で今まで黙っていたのよっ!!国家機密だったの!?」
そんな不敬な事を言ったら捕まってしまうと言おうとする。
「国家機密ではないけれど、僕とエバリンジュの婚約はスパニッシュ国王陛下と女王陛下しか知らない事だね。エバリンジュが注目されるのが嫌だと言うから、公にはしなかっただけだよ。」
私とジョルジュ殿下が婚約!?
私はお父様に問う様に見詰めた。
「まさか、エバは覚えていないのか?8年前にジョルジュ殿下に結婚を申し込まれて返事をしただろう?」
ジョルジュ殿下の母君であるリクベクト女王は、スパニッシュ国王陛下の末の妹で、8年前、第1王子の立太子の祝賀にジョルジュ殿下を連れて参列された。
宰相を務めるお父様に、歳の近い私にジョルジュ殿下の話し相手をする様に言われて、リクベクト国に帰るまでお相手していた。
記憶を遡って思い出そうと頑張ってみても、私がジョルジュ殿下に結婚を申し込まれた記憶がない。
「はぁー。エバリンジュ、君って人は…。君が海を見た事がないと言うから、リクベクト国に来れば海が見れる。僕の家に住めば、毎日見る事が出来る。と言ったら、じゃあジョルジュ殿下の家に住むと言ったじゃないか。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。8年前は、わたくしは6歳で、きっと意味も分からず、何も考えずに返事をしたのだと。」
「そうかもね。でも、その時に婚約は成立したんだよ。スパニッシュ国王陛下に挨拶したろう。覚えていない?」
した。
リクベクト女王とジョルジュ殿下が帰国するので、挨拶に私と両親も国王陛下にお会いした。
確か、ジョルジュ殿下が卒業したら私をリクベクト国に連れて行くと言っていた。
私は、海が見れるとはしゃいだのをジョルジュ殿下が国王陛下に告げているのだと思って、その事は言わないで欲しい!とお願いしたのだが、どうやら私とジョルジュ殿下の会話は噛み合っていなかった。
今なら分かる。
一緒に住むという事がどういう意味なのか。
「ジョルジュ殿下。来月に結婚式と聞いたのですが?」
「そうだよ。本当は、半年前には迎えに来たかったのだけれど、サイナス侯爵がギリギリまで渡さない!と言ってね。さすがに1ヶ月前にはリクベクト国に来て貰わないと最終チェックもあるしね。という事で、明日には準備を終えてくれるかな。ああ、文句は僕じゃなくて、何も伝えていなかったサイナス侯爵に頼むよ。」
幼い私が無闇に返事をしてしまった事から、国家間の婚約になってしまった。
そんなつもりはなかったと言っても、ただの侯爵家である我が家から婚約を解消する事は出来ない。
両親は、悩み、苦しんだのだろう。
「時間がありませんわね。友人にはお別れの手紙を書くとして。お父様、明日の夜にお祖父様とお祖母様を招待しても宜しいかしら?あとは、部屋にある物を荷作りして。ああ時間が足りないわ!ジョルジュ殿下、もう少し余裕を持ってお越し下さればよろしいのに…。」
私の気持ちは決まった。
リクベクト国のジョルジュ殿下の元に嫁ぐ。
8年前から、私を迎える事を望み待っていてくれたジョルジュ殿下だもの、きっと私を幸せにしてくれる。
そう信じて、私はジョルジュ殿下の手を取り、リクベクト国へと向かった。
End
最後まで読んで頂き ありがとうございます。
突然の従姉妹のライザの訪問にも驚いたが、その話の内容にも驚く。
私が結婚?誰と?
「ちょっと、エバ、聞いてるの!?」
鼻息荒く詰め寄るライザに、何が何だか分からずに言葉が出ない。
私に婚約者は居ない。
そろそろ決めないと行けないと思うのだが、まだお父様から決まったとは聞いていない。
決まったのにお父様が言い忘れているとか?
まさかね…。
それに来月に結婚式を挙げるとライザが言っていた。
いくらお父様でも来月に結婚式を挙げるのに私に伝えないはずがない。
「ライザ、落ち着いてくれる。はい、お茶を飲んで。」
ソファに座り、使用人が淹れてくれたお茶を2人で飲み、一呼吸。
「それで、どうして私が結婚する事になっているの?まだ婚約者も決まっていないのに。」
「ジュンナ皇女様のお茶会に行ったら、貴女が来月に結婚すると話題になったいたのよ。皆に取り囲まれて貴女の相手は誰なのか?と聞かれて驚いたわ。従姉妹の私が知らないなんて、恥ずかしかしかったわよ。どうして教えてくれなかったのよ!」
「だから、結婚する予定もないし、婚約者もまだ居ないと言っているでしょう。一体どうしてそんな噂が…。」
扉がノックされ、お父様が入って来た。
その後には…。
私とライザは慌てて席を立つ。
「畏まらなくて良い。久し振りだね、エバリンジュ。すっかり大人になって綺麗になった。」
「ジョルジュ殿下。ご災息で何よりに御座います。ジョルジュ殿下も御立派になられましたね。前にお会いしたのは8年前位になりますでしょうか?」
「君に弱い男は嫌いだと言われたのでね。強くなる為に国に戻ってから精進したんだ。無事に学園も卒業し、直ぐに迎えに来たかったんだが、執務の関係で出発が遅れてしまって申し訳ない。」
誰かと約束でもあったのかしら?
「それでエバリンジュ。明後日にはリクベクト国に向けて出発したいのだけれど、大丈夫かい?」
「ジョルジュ殿下、エバの荷物は明日には準備を終えます。」
「まあ何も持たずとも向こうで揃えても良いし、サイナス侯爵も無理しないでくれ。式の準備も滞りなく母上がしてくれている。エバリンジュが来るのを今か今かと待ちわびていてね。」
話が見えない私とライザは呆然としていた。
「はっ!まさかエバの結婚相手ってリクベクト国のジョルジュ第3王子なの!?何で今まで黙っていたのよっ!!国家機密だったの!?」
そんな不敬な事を言ったら捕まってしまうと言おうとする。
「国家機密ではないけれど、僕とエバリンジュの婚約はスパニッシュ国王陛下と女王陛下しか知らない事だね。エバリンジュが注目されるのが嫌だと言うから、公にはしなかっただけだよ。」
私とジョルジュ殿下が婚約!?
私はお父様に問う様に見詰めた。
「まさか、エバは覚えていないのか?8年前にジョルジュ殿下に結婚を申し込まれて返事をしただろう?」
ジョルジュ殿下の母君であるリクベクト女王は、スパニッシュ国王陛下の末の妹で、8年前、第1王子の立太子の祝賀にジョルジュ殿下を連れて参列された。
宰相を務めるお父様に、歳の近い私にジョルジュ殿下の話し相手をする様に言われて、リクベクト国に帰るまでお相手していた。
記憶を遡って思い出そうと頑張ってみても、私がジョルジュ殿下に結婚を申し込まれた記憶がない。
「はぁー。エバリンジュ、君って人は…。君が海を見た事がないと言うから、リクベクト国に来れば海が見れる。僕の家に住めば、毎日見る事が出来る。と言ったら、じゃあジョルジュ殿下の家に住むと言ったじゃないか。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。8年前は、わたくしは6歳で、きっと意味も分からず、何も考えずに返事をしたのだと。」
「そうかもね。でも、その時に婚約は成立したんだよ。スパニッシュ国王陛下に挨拶したろう。覚えていない?」
した。
リクベクト女王とジョルジュ殿下が帰国するので、挨拶に私と両親も国王陛下にお会いした。
確か、ジョルジュ殿下が卒業したら私をリクベクト国に連れて行くと言っていた。
私は、海が見れるとはしゃいだのをジョルジュ殿下が国王陛下に告げているのだと思って、その事は言わないで欲しい!とお願いしたのだが、どうやら私とジョルジュ殿下の会話は噛み合っていなかった。
今なら分かる。
一緒に住むという事がどういう意味なのか。
「ジョルジュ殿下。来月に結婚式と聞いたのですが?」
「そうだよ。本当は、半年前には迎えに来たかったのだけれど、サイナス侯爵がギリギリまで渡さない!と言ってね。さすがに1ヶ月前にはリクベクト国に来て貰わないと最終チェックもあるしね。という事で、明日には準備を終えてくれるかな。ああ、文句は僕じゃなくて、何も伝えていなかったサイナス侯爵に頼むよ。」
幼い私が無闇に返事をしてしまった事から、国家間の婚約になってしまった。
そんなつもりはなかったと言っても、ただの侯爵家である我が家から婚約を解消する事は出来ない。
両親は、悩み、苦しんだのだろう。
「時間がありませんわね。友人にはお別れの手紙を書くとして。お父様、明日の夜にお祖父様とお祖母様を招待しても宜しいかしら?あとは、部屋にある物を荷作りして。ああ時間が足りないわ!ジョルジュ殿下、もう少し余裕を持ってお越し下さればよろしいのに…。」
私の気持ちは決まった。
リクベクト国のジョルジュ殿下の元に嫁ぐ。
8年前から、私を迎える事を望み待っていてくれたジョルジュ殿下だもの、きっと私を幸せにしてくれる。
そう信じて、私はジョルジュ殿下の手を取り、リクベクト国へと向かった。
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