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やはり忘れていたのね…。
本当に馬鹿な人だ事。

私達の住む家は、結婚祝いとして、私の両親がプレゼントしてくれた。

私は名義をカイルでお願いしたが、両親は、そこは頑として譲らず、私名義になっている。

その事をカイルも知っていた筈なのに、持ち主に出ていけだなんて…。

私は、アスベスの部屋に向かった。

「あっ!おかあさま、おしごとおわったの?」

「アスベス、良い子にしていましたか?」

「あい!」

「では明日、お母様とお出掛けしましょうね!」

「ほんとう?わぁーい!!」

私は、アスベスを抱き締めて微笑む。

こんなに可愛い子を簡単に棄てられる男なんて、こちらから棄ててやるわ!!

カイルの実家の男爵家は、長男が爵位を継ぎ、両親は隠居生活をしている。

事業の方が最近は厳しいらしく、カイルの実家だからとお父様が頼まれて融資をしていたが、それも打ち切りとなるだろう。

カイルのせいで融資が打ち切りとなれば、カイルは、実家から切り捨てられる。

どうせマリアも、マリアの両親も、カイルが金持ちと勘違いして近付いたのだ。

カイル自身には、事業をする才能も金を稼ぐ才能も無いのに…。

まぁもう私には関係の無い事だけれど…。

アスベスを乳母に任せ、侍女にアスベスの旅行の支度を指示すると、私は執務室へと向かった。

お父様とカイルの実家に手紙を書かなくては。

手紙を書き始めると部屋がノックされ、執事が入ってきた。

「無事に荷物を纏められたのかしら?」

「奥様…いえ、リリアナ様が部屋を出られてから、どういう事だと憤慨しておりました。この屋敷はリリアナ様名義だとお忘れですか?と問えば黙りましたがね。荷物の方も何とか纏められました。私の目を盗んで何回か貴金属類を忍ばせようとしておりましたが、阻止し先程、2人で出ていかれました」

「そう、大人しく出ていったのなら良かったわ。マリアも、騒ぐこと無く帰ってくれたし。まぁまだ分かってないというのが正しいのかしら?」

私は、手紙の続きを書き、お父様とカイルの実家に届ける様に渡す。

カイルもマリアも多分、分かっていないだろう。

明日からカイルが無職になる事を…。

よく考えれば分かると思うけれど、馬鹿だからなぁ。

お父様と私がやっている商会だ。

離婚すれば、雇う必要はない。

優秀で有れば別だが、使えない無能なのだ。
身内でなければ、雇う必要が無い。

だから私は書類を作成したのだ。

今後一切、私達家族に近付かない事。
私との縁が切れれば、商会を辞めて貰う事。
カイルの実家への援助も打ち切る事。

同じ書類を2枚作成し、1枚を私が、もう1枚をカイルに渡した。
知らなかった!と言われない様に。

まぁカイルもマリアも読まずにサインしていたから、内容は分かっていないだろうけれど…。

慰謝料も養育費もカイルは払うと言っていたが、無職の彼には無理だと思うし、今後関わりたくも無いので書類には書いていない。
彼らは、それさえも気が付いていないだろう。

はぁー疲れたわ…少し休もう…。

ソファに移り、目を瞑る。
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