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第四章
【許すということを 02】
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恋唯は左右に分けて結ばれていたリリーの髪を、後ろで一つに結び直してあげた。
コイお姉ちゃんとお揃いにすれば勇気が出るからと、リリーに頼まれたからだ。
二人が手を繋いで診療所を出ると、ロッゲンが花束を手にして待っていた。
一緒についてきた若子もそれに気づいて目を輝かせたが、空気を読んで口元を両手で押さえる。
カミルにリリーを呼んできてもらったロッゲンは、恋唯と若子も現れたことに一瞬気まずそうな顔をしたが、スッと花束を差し出した。
「今までのこと、ごめん」
広場の花屋で購入したのだろうか。小さな花束であったが、色とりどりで可愛らしくまとまっている。
「オレ、リリーとどうなりたいのか考えたんだ。オレは共同学校通えないし、リリーと会える時間だって限られてて……だから他のやつより、印象を残したかった。最初はそれだけだったのに、お前がそっけないままだから、だんだんムキになっちゃって」
「まるで、そっけなかったリリーさんが悪いみたいですね」
黙って見守るつもりが、恋唯は思わず口を滑らせた。
ロッゲンが顔を真っ青にしたのと、若子に「し~っ!」とたしなめられて、反省して口を閉ざす。
「違う、全部オレが悪い。オレはリリーと……本当は、仲良くなりたいから!」
精一杯の勇気で、ロッゲンがリリーに向き合っている。
若子は満足げにうんうんと頷いていたが、リリーは花束を受け取るかどうか、迷っているようだった。
「リリーさん、別に許さなくたっていいんですよ」
俯くリリーの肩に手を置いて、恋唯は優しく伝えた。
「だって、痛かったでしょう? 嫌だったでしょう。怪我をさせられたり、酷いことを言われるのは。やった側はすぐに忘れてしまっても、やられた方はずっと覚えているものです。それを一度の謝罪くらいで、許さなくたっていいんですよ」
ロッゲンが今にも泣きそうな顔をしている。
恋唯も子ども相手に可哀想かとは思ったが、彼がのちのちどういう大人になるのかと、考えずにはいられないのだ。
「コイお姉ちゃん、リリーは……」
自分と同じ髪型のリリーに見上げられて、恋唯は肩から手を外した。判断するのはリリー自身だ。
「リリーは許すよ」
細い腕を伸ばして、ロッゲンが震える手で差し出していた小さな花束を受け取る。ロッゲンの肩から力が抜けた。
「すぐに仲良くするのは無理だけど……これからは普通に話そうよ。普通にできたら、リリーはそれでいいもん」
「あっ、ああ……うん、うん……っ!」
ロッゲンが全力で頷いている。リリーが微笑むと、顔を赤くした。
「じゃ、じゃあ、また明日な! ……カミルにもよろしく!」
手の甲で涙を拭って、ロッゲンが慌てたように走り出す。
リリーは小さな花束を手に持ったまま、ロッゲンの後ろ姿を見送っていた。
コイお姉ちゃんとお揃いにすれば勇気が出るからと、リリーに頼まれたからだ。
二人が手を繋いで診療所を出ると、ロッゲンが花束を手にして待っていた。
一緒についてきた若子もそれに気づいて目を輝かせたが、空気を読んで口元を両手で押さえる。
カミルにリリーを呼んできてもらったロッゲンは、恋唯と若子も現れたことに一瞬気まずそうな顔をしたが、スッと花束を差し出した。
「今までのこと、ごめん」
広場の花屋で購入したのだろうか。小さな花束であったが、色とりどりで可愛らしくまとまっている。
「オレ、リリーとどうなりたいのか考えたんだ。オレは共同学校通えないし、リリーと会える時間だって限られてて……だから他のやつより、印象を残したかった。最初はそれだけだったのに、お前がそっけないままだから、だんだんムキになっちゃって」
「まるで、そっけなかったリリーさんが悪いみたいですね」
黙って見守るつもりが、恋唯は思わず口を滑らせた。
ロッゲンが顔を真っ青にしたのと、若子に「し~っ!」とたしなめられて、反省して口を閉ざす。
「違う、全部オレが悪い。オレはリリーと……本当は、仲良くなりたいから!」
精一杯の勇気で、ロッゲンがリリーに向き合っている。
若子は満足げにうんうんと頷いていたが、リリーは花束を受け取るかどうか、迷っているようだった。
「リリーさん、別に許さなくたっていいんですよ」
俯くリリーの肩に手を置いて、恋唯は優しく伝えた。
「だって、痛かったでしょう? 嫌だったでしょう。怪我をさせられたり、酷いことを言われるのは。やった側はすぐに忘れてしまっても、やられた方はずっと覚えているものです。それを一度の謝罪くらいで、許さなくたっていいんですよ」
ロッゲンが今にも泣きそうな顔をしている。
恋唯も子ども相手に可哀想かとは思ったが、彼がのちのちどういう大人になるのかと、考えずにはいられないのだ。
「コイお姉ちゃん、リリーは……」
自分と同じ髪型のリリーに見上げられて、恋唯は肩から手を外した。判断するのはリリー自身だ。
「リリーは許すよ」
細い腕を伸ばして、ロッゲンが震える手で差し出していた小さな花束を受け取る。ロッゲンの肩から力が抜けた。
「すぐに仲良くするのは無理だけど……これからは普通に話そうよ。普通にできたら、リリーはそれでいいもん」
「あっ、ああ……うん、うん……っ!」
ロッゲンが全力で頷いている。リリーが微笑むと、顔を赤くした。
「じゃ、じゃあ、また明日な! ……カミルにもよろしく!」
手の甲で涙を拭って、ロッゲンが慌てたように走り出す。
リリーは小さな花束を手に持ったまま、ロッゲンの後ろ姿を見送っていた。
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