【SF×BL】碧の世界線 

SAI

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第二章 N+捜査官

37. 前進

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まさか神崎祐一郎が関わっているなんて……。

婚約者の京子さんを優しく見つめていた姿を思い出す。あの時はまさかワームホールに関わっているとは思えなかったが、神崎グループの資産を思えば時空マシーンの研究資金は賄えるだろう。

「そもそも一体何の目的で……」
「グループ企業も軒並み好調と聞きますし、お金目的とは考えづらいですね」

今まで黙っていた如月が声を発したことで樹はようやくハッとした。

「そういえば如月さん、俺が他の世界の住人だったって知っても全然驚きませんでしたよね。知ってたんですか?」

「樹君が配属された時に僕が話したのですよ。万が一の時にフォローが出来るかもしれないですしね。因みに小暮課長も知っています」

自分だけが知らなかったことを知った間壁が目を細めたのを見て、加賀美は表情を引き締めた。話を進めて間壁の言葉を封じるつもりらしい。

「今後の捜査ですが捜査一課Aチームに協力して貰おうと思っています。皆さんご存じでしょうが最近火事が多発しておりますよね。その現場から火事の原因になった不思議な残骸が発見されています。田口さんに分析してもらったところ爆弾の破片であると判明しました」

田口が頷く。

「一応念のために言いますが爆弾の製造は禁止されています」と加賀美が続けた。この世界の常識が完璧とは言えない樹にも理解できるようにかみ砕いて説明する。

「そもそも制約と監視の目がありすぎて材料を集めることが不可能なのです。それでも爆弾が出回っているという事は他の世界から持ってきている可能性が高い」

「じゃあこの一連の火事の犯人を捕まえれば神崎が犯人だという確証がつかめるかもしれないってことですよね?」

樹が聞くと加賀美はうーんと唸った。

「現場から爆弾の破片が出た事件の犯人は全員ではありませんが捕まっています。ですが、彼らは一様に爆弾は家の前に置いてあったと言っています。親切にも使い方付きでね」

事件の犯人たちの証言によると、利用しているSNSを通して「プレゼントを贈ります」とだけメッセージが届いたという。

「相手のページを見に行ってもすでに削除されていて何も分からなかったそうです」

「犯人たちの共通点は何ですか?」

加賀美の思惑通りにすっかり加賀美への鬱憤を忘れた間壁が尋ねる。

「SNSで恨みつらみを書いている人物、と言ったところでしょうか。相当溜まっている感じがありましたね」

「つまり俺たちは時空マシーンの犯人を捜すと同時にその犯人がバラまいている爆弾も回収しなきゃいけないわけか」

「そうなりますね」
「爆弾を持ってきてバラまく、その先にある目的が何なのか不気味で仕方ねぇな」

田口の声が重く響いた。


 翌朝、Aチーム全員を集めて小暮が説明すると時間の流れが止まったかのようにみんなの動きが停止した。樹が他の世界の住人だという事は伝えなかったが、時空マシーンという言葉は相当衝撃があるようで霧島は「へっ?」と半笑いで固まり、山口は何か考えるような仕草を見せたまま動かず、「なるほど」と声を漏らした青砥はいつもの真顔だ。

「時空マシーンが完成してるとか、冗談ではないんですよ……ね?」

「冗談で公安や田口さんまで呼ぶわけはないだろ」

霧島と小暮の会話に「完成したと言ってもまだ不安定だとは思うがな」と田口が付け足した。

「今後は送られてきた爆弾を回収するとこで被害の拡大を防ぐと同時に、神崎が事件に関わっているとみて捜査をしていきます」

如月が全員を見渡す。

「間壁くんと田口さんは引き続き時空マシーンと神崎の動向を追ってください。山さんと茜さんはSNSから次の標的になりそうな人をピックアップして特定の文面のメールに反応するようにスパイウェアを仕込んで下さい。アオ君と樹君は森山の身辺を詳しく探って下さい」


 再び訪れた森山のアパートはよく見れば物が少なく随分と殺風景ではあったが、シャンプーや女性物の服もあり女性が出入りしていた形跡があった。

「複数の女性が出入りしていたというのは本当のようだな」

青砥が空中に表示された所轄からの報告書を指さして言う。報告書によると森山は25歳、孤児院出身で以前は清掃ロボット会社のメンテナンスの仕事をしていたらしい。上司に容姿を弄られ無断欠席の末にクビ、今は職業不詳とある。

「職業不詳だけど金回りはいいんですよね?」

その先の文章を読みながら樹が言うと青砥は指を口元に持っていきながら「怪しい仕事をしていたのは間違いなさそうだな」と呟いた。青砥の節くれ立った長い指、樹の視線はその指に惹きつけられた。

あの指が一昨日、樹にどんな風に触れたのか。ふと過った記憶と思考に皮膚が微かにざわめく。今朝会った時に青砥に体は大丈夫かと聞かれ、何のことですか? とすっとぼけてからは、青砥はいつもと変わらない態度をとってくれている、それこそ何もなかったかのように。それなのに青砥の指を見るたび、唇に目が行くたびに樹の心はざわめいた。

アオさんが落ち着いてるっていうのに、自分がこうだなんて……。

「樹?」

「あ……なんでもないです。金回りが良いわりには森山の持ち物は質素ですよね? 高級品と思われるのは香水や女性ものの洋服、自分の物ではなさそうですね」

「貢いでいたのかもな」

青砥がそう呟いた時、ドアの向こうで「あれー? たけしー?」という声と激しいインターホンが鳴った。
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