【完結】君が好きで彼も好き

SAI

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4. 甘く不機嫌 

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 帰り道、通いなれた繁華街を歩きながら僕はため息をついた。

はぁ、なんか、疲れた。ホストクラブってああいうところなんだな。

そうは思ってはみたものの自分のことに精一杯でフラッシュバックの様に記憶がチカチカだ。ああいうところと言えるほど良く分からなかった気もする。泉、怒ってたかな。でもあれは山口さんに無理やり連れて行かれただけで……。仕事の邪魔はしてないよな。迷惑はかけてないはず。

大丈夫、大丈夫と言い聞かせても不安は拭えない。

帰ってきたら職場に行ってごめんって謝ればいいか。職場に来られるのが嫌なタイプかもしれないし。

 午前二時半少し前。カチャリと鍵が開く音がしたと同時に僕は玄関に顔を出した。

「おかえり」

「ただいま。ここにいるからびっくりした」

「泉、ごめん。友達に引っ張っていかれて断り切れなくて泉の仕事場に……」

あぁ、あれね、というように泉がため息を吐いた。

「バイト先の友達って女の子だったんだね」

「うん、同じ年でさ。仕事の先輩でもあるんだ」

「ふうん、好きなの?」

「そんなんじゃないよ。僕、今、恋愛どころじゃないし」

「だよね。じゃあ、向こうが楓に気があるの?」

「へっ、それはないよ。ないない。むしろ、恋愛相談されてたんだから」

「そうなの?」

「うん、同じバイト先に好きな人がいるんだよ。僕が予想した通りだったんだー。案外、僕も見抜く力はあるかも、ふふっ」

そうなんだ、と言いながら泉がジャケットを脱ぐ。お酒の香りがした。

「そういえば、メアド交換した? 帰り際に聞かれたでしょ」

「あぁ、皐月さんにした。一番話せたから」

「へぇ……。並んで座って、抱きしめられて。指なんか重ねてその気になっちゃった?」

何で知って……。

「そ、そんなんじゃないよ。だってあれって必ず交換しなきゃいけないんだろ?」

泉がゆっくり僕に近づいてくる。

「交換しなくてもいいんだよ。断るって言う選択肢もあったはず」

「そんなこと分からなかったし」
「考えるより、交換したかったんだ?」

僕の体が壁にぶつかって泉の顔が至近距離に迫る。

「ち、違うっ。それに僕、男だし、皐月さんだって」

「でも楓は俺に抱かれてるよね?」

泉の顔が正面からそれて耳元に移動した。

「い、ずみ……」
「抱かせて。今日30日だろ」
「え、あ……」
「忘れてた?」

正直に忘れてた、なんて言えるはずもなく。

「わ、忘れてなんか、ない」
「くす、嘘が下手」

 
 ザーッというシャワーの音に紛れて押し殺した息が漏れる。排泄するための器官を執拗にかき混ぜられて僕は壁に縋りついていた。

「声、我慢してるの? だよね、お風呂場の音って換気扇から洩れるから外によく聞こえるもんね」

「あ……ん、わか、ってるなら、も、やめて」

三本の指でゆっくり内壁を撫でながら泉が「だーめ」と容赦なく口にした。泉の体が僕の体に密着してシャワーのお湯が泉の体から僕の体に伝う。耳を甘噛みされて「あ」と声が漏れた。泉がくすくすと笑う息さえ僕の体をヒクつかせる。

「どこがいい? 俺、まだあんまり楓の体のこと分からないから教えて」

カッと熱が上がる。どこがいいかなんて……そんなの。

「赤い顔して、こんなに濡れて、いやらしい」

「あっ……も、やだぁ」

言葉に煽られる。ずっとやわやわとした気持ち良さが続いて、でも射精には遠い。言葉で煽られて、吐息に撫でられて、崩れてしまいそうだ。

「い、ずみ……もぅ」
「なに? 入れて欲しいの?」
「そ、いう、んじゃあああっ」

「入っちゃった。簡単に俺のを飲み込むようになっちゃったね、ココ」

アナルに自分のではない熱を感じてぎゅううっと壁にくっついた。

「ねぇ、動いていい?」

僕のアナルが泉のペニスの形になって泉を包み込んでいる。泉に抱かれたのは3回。10月15日と30日、11月15日。その数回で僕の体は泉を覚えてしまったらしい。奥へ、もっと奥へ。ほんの少し泉が身じろぎしただけでも締め付けてしまいそうだ。

「動いていい? ちゃんと言わないとずっとこのままだよ」

僕の気持ちが見透かされているみたいだ。繋がったまま泉の指が僕の口内を犯す。歯を撫で上顎を擦られて腰が揺れた。泉の指が口から抜け僕の腰をおさえる。

「自分で揺れるのもダメ。ちゃんと言わないと抜くよ」

泉はいつもこうして僕を崩しに来る。

「……いて、うごっ、いてっ。はっ、ああっ」

急に腰を動かされ、喜びに震えた声が出た。

「声、外に聞こえちゃうよ?」
「んっ……ふぅんっ……んんっ」

手首を口に当てて声を塞ぐ。息が漏れるたびに口が開いて、より大きく手首を咥えた。必死に声を押し殺しているのに泉は容赦なく腰を打ち付ける。

ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん

「声を押し殺しても、エロい音が聞こえちゃってるかもね」

「んんっ」

「あ、今、締まった。他の人に楓のいやらしい音が聞こえると思ったら感じちゃったんだ。楓、エロっ」

囁きながら泉が抽送のペースをあげる。肉がぶつかり、壁に体が押しつけられ、涎を垂らしたペニスの先端が壁に擦られる。体の中をずっと駆け巡っていた快楽が一つになって上り詰めた。

「あっ、いっ……っんんんっ」

体を細かく揺らして崩れ落ちると泉の唇が降りてくる。

「んっ……」

唇柔らかい……。

舌で泉の唇に触れて、覗いた舌と舌を合わせた。泉の長い睫毛が震えている。

「お風呂あがる?」

ゆっくり離れた唇にそう囁かれて頷いた。




 タオルを渡されて脱衣所で並んで体を拭く。意外とこういう時間が一番恥ずかしかったりする。

「おいで、髪の毛乾かそう」

下半身にタオルを巻いたまま泉の手が僕の髪の毛に触れた。目の前の鏡には赤い顔をした僕と泉。

泉の濡れ髪、色っぽい。色気、やばっ。
この人に、さっきまで抱かれていたんだ。そして、きっとこの後も。

「さっきより顔が赤くなってるけど、どうしたの?」

「え、きっ、気のせいだよ」
「くす、可愛い」

ちゅ、っと音を立てて泉が僕のほっぺたにキスをしたから、僕はまた顔を赤くしてしまった。

どう反応したらいいか分からなくなる。

単にセックスだけならいい。気持ち良くなって終わりで、おやすみーってお互いの部屋に帰るようなやつなら僕もちゃんと割り切れるのに。泉は翌朝のキスまでまるで恋人の様に僕を扱ってくるのだ。

 リビングのソファに移動すると、泉がほら、とミネラルウォーターを持ってきてくれた。

「ありがと」

ジャージを履いて上半身裸の泉は鍛えられたいい体をしていて、その体が情事の時の映像と繋がるから目のやり場に困る。

「上の服も着ちゃったんだ。どうせまた脱ぐのに」

「ほんと、もう、そういうこと言うのやめてよ」

恥ずかしくてソファのクッションで顔を隠すと泉がそのクッションを取り上げた。

「やっぱりまた真っ赤。楓はすぐ赤くなる」

「うっ……」

恥ずかしくて顔を背けた時、携帯電話がメールの着信を告げた。

「あ、メールだ」

この恥ずかしさから抜け出したくて携帯電話の元へ移動するとメールは皐月さんからだった。

【今日はお店に来てくれてありがとう。もし良かったら今度、ご飯でも行かない?】

「ふぅん、それ営業メールだよ。なんて返信するの?」

「分かってるよ。ちゃんと素直に言う。お金ないからお店には行けないし、僕に時間を割くのは無駄になるのですみませんって」

今日のお礼を入力した後、泉に話したようなことをつけ足して皐月さんにメールを送ると、直ぐに返信が来た。

【俺、お客さんに困ってないから大丈夫だよ。那須川君とは友達になりたいんだ。来週、どこか空いてる日、教えて。昼間なら時間作れるから】

そこまで言われると断りづらくなって僕は来週の空いている日をメールした。


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