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8.シャワーに濡れる ☆
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そして5日目。
「さぁ、今日も張り切っていきましょーっ!!」
昨日、3万円を売り上げた苅部は気合入りまくりでご機嫌だ。
「苅部、僕、今日は午後抜けるから。僕も芸術祭を見ておきたいし」
「おー、いいよ。ってかその格好で歩き回ればお金も稼げて一石二鳥じゃね?」
「目立つからそれは嫌だ」
「あら、そう?」
「苅部はその格好で回るの?」
「勿論。お金って大事よ?」
いつもの場所にいく道すがら、もう視線を感じる。
「あ、高橋君。これ良かったらどうぞ。今日も暑いだろうし」
駆け寄ってきたのは全然知らない女の子だ。
「どうも」
ペコっと頭を下げると女の子は嬉しそうに、少し恥ずかしそうにほほ笑む。
「あとで写真お願いします」
「あ、はい」
女の子がいなくなると苅部が「かぁーっ!」と声をあげた。
「タカと俺の扱いの重さが違う気がする」
「当り前じゃない」
突然割り込んできたのは僕が二年生の時にモデルをお願いした今日子さんだ。
「今日子さん、お久しぶりです。帰ってきたんですね?」
「やほー。丁度昨日帰ってきたから芸術祭でも覗こうと思ってね」
今日子さんは僕の一学年年上で今年卒業予定だ。和楽器の奏者で大学に通いながら全国ツアーもこなす。
「当り前って・・・ひどいっ」
「苅部君と渉君じゃレア度が違うでしょ」
「レア度って人を珍しい動物みたいに」
「そう言われたくなきゃもっと愛想よくしなさいな。いつも黙々と絵を描いてるから話し掛けづらいって人多いよ」
「それ、昨日も言われた。僕、そんなに話し掛けづらいですかね?」
「そりゃあねぇ。人を寄せ付けない空気があるわよ」
「自分じゃ良く分からないな」
「俺も良く分からん」
「苅部君はそういう空気が読めないから渉君と仲良くなれたんでしょ」
今日子さんは可笑しそうに笑う。それから「人を寄せ付けないオーラ、渉君は持っていても良いと思うよ」と言った。
「どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味よ。じゃ、私、校内を回るから。ばいばーい」
「あ、はーい」
今日子さんと別れていつもの場所に台を置きポーズを取ると、すぐに何人かの人が寄ってきた。
「眼鏡、取り忘れてるよ」
「あ・・・もしかして壮太・・・くん?」
「憶えてくれたの?」
返事をする代わりに頷いて口を閉じて、人差し指を唇の前で立てた。もう話さないよ、というサインだ。
「あーぁ、もう石像になっちゃった。ざんねん。でも、憶えて貰えて嬉しいなぁ。また来るねー」
手を振って壮太君がいなくなる。それからは、僕の衣装の中を覗く子供や、口に薔薇を咥えさせる人、そのバラを取って持っていく人。僕をお姫様抱っこして写真を撮ろうとしたマッチョな男性の時は手足を曲げてしまわないようにするのが大変だった。出来るかどうかの賭けだったらしく、賭けに勝ったその男性はチップを2000円とはずんでくれた。
午後1時。僕は台から降りると自由の女神に手を振りシャワー室へと向かった。シャワー室は制作室のある階の一番奥にある。それぞれが簡単な壁で区切られておりカーテンで個室になるよくあるタイプのシャワー室だ。最大で6人が一度にシャワーを浴びられるようになっている。途中、事務室に寄りシャワー室のカギを受け取った。どうやら今の時間は誰も使用していないらしい。
胸、顔、足、腕、石像塗料がついているのはこの4か所だ。苅部に貰った強力な石鹸でゴシゴシと身体をこすると、灰色の泡が立った。一度目のシャワーを浴びる。こうして体を洗うのも5回目となれば一度では色が落ちきらないことは解っているので、もう一度体に石鹸を塗っていると、外から僕を呼ぶ声が聞こえた。
「渉?」
僕を名前で呼び捨てにするのは佐倉しかいない。
「何?」
顔も出さずに返事をすると、カーテンが空いた。
「ちょ、何だよ!」
「何って体を洗うのを手伝ってやろうと思って」
「ひとりでできる」
「そう?ほらここ、頬のところにまだ色が残ってる」
佐倉の手で頬をこすられる。
「服、濡れるぞ」
「いいよ、別に。ほら、首にも」
佐倉の手が僕の首を撫でる。シャワーの雫が佐倉の髪の毛を濡らしてその雫が佐倉の唇を濡らした。
「ここも、まだついてる」
「なっ・・・」
佐倉の指が僕の乳首に触れ、人差し指と中指で乳首を挟むようにしてこすった。
「あっ、やっ・・・」
突然もたらされた刺激に佐倉の腕にすがる様にして捕まる。
「早瀬に胸元を触られて嬉しかった?」
「何言って・・・あぁっ!!」
唐突に乳首を噛まれて声を上げる。
「声、抑えないと外に聞こえるよ」
「やだ・・・。佐倉、お願い」
「それはどっちのお願い?止めて欲しい?それとも、ここ、触って欲しい?」
佐倉の指がトントンと僕の竿の先端をノックし、僕の中心は触れられたことを喜ぶかのようにビクンと揺れた。
「渉、唇、噛まないで」
佐倉の唇が僕の唇に触れ、少しのシャワーの水と共に僕の口の中に侵入してくる。その間にも佐倉の手は僕の乳首を弄んだ。激しさを増すキスに壁に体を押し付けられる。佐倉がシャワーを反対側に向け自身の手にも石鹸を塗った。泡だらけになった手で優しく僕の中心に触れる。
「んっ・・・あっ・・・」
佐倉の唇が僕の唇から離れるたびに声が漏れる。
気持ちいい・・・。
石鹸のヌルヌルした感触が佐倉の手の滑りを良くし、佐倉の手が僕の体のあらゆるところに触れる。中心に触れては2、3回上下に抜き、中心が喜びに震えた瞬間に手は別の場所を愛撫する。粗く息を吐きながら僕は懇願の言葉を口にすることが出来ずに佐倉を見た。
「石像の渉に触ったやつら、渉がこんな顔して鳴くなんて思いもしないんだろうな」
恥ずかしさに佐倉の胸倉をつかんで、視線から逃れるように佐倉の胸に顔を埋めた。そのまま僕を抱きかかえるようにした佐倉の右手が僕の腰を撫で、やがて僕の蕾に触れた。
「やだっ」
佐倉の左手は僕の中心を掴みゆるゆると快楽を与えてくる。佐倉は僕の言葉を無視して耳に口づけた。
「もっと深いところに触れたい」
佐倉の声が甘く脳内を侵食していく。
「さぁ、今日も張り切っていきましょーっ!!」
昨日、3万円を売り上げた苅部は気合入りまくりでご機嫌だ。
「苅部、僕、今日は午後抜けるから。僕も芸術祭を見ておきたいし」
「おー、いいよ。ってかその格好で歩き回ればお金も稼げて一石二鳥じゃね?」
「目立つからそれは嫌だ」
「あら、そう?」
「苅部はその格好で回るの?」
「勿論。お金って大事よ?」
いつもの場所にいく道すがら、もう視線を感じる。
「あ、高橋君。これ良かったらどうぞ。今日も暑いだろうし」
駆け寄ってきたのは全然知らない女の子だ。
「どうも」
ペコっと頭を下げると女の子は嬉しそうに、少し恥ずかしそうにほほ笑む。
「あとで写真お願いします」
「あ、はい」
女の子がいなくなると苅部が「かぁーっ!」と声をあげた。
「タカと俺の扱いの重さが違う気がする」
「当り前じゃない」
突然割り込んできたのは僕が二年生の時にモデルをお願いした今日子さんだ。
「今日子さん、お久しぶりです。帰ってきたんですね?」
「やほー。丁度昨日帰ってきたから芸術祭でも覗こうと思ってね」
今日子さんは僕の一学年年上で今年卒業予定だ。和楽器の奏者で大学に通いながら全国ツアーもこなす。
「当り前って・・・ひどいっ」
「苅部君と渉君じゃレア度が違うでしょ」
「レア度って人を珍しい動物みたいに」
「そう言われたくなきゃもっと愛想よくしなさいな。いつも黙々と絵を描いてるから話し掛けづらいって人多いよ」
「それ、昨日も言われた。僕、そんなに話し掛けづらいですかね?」
「そりゃあねぇ。人を寄せ付けない空気があるわよ」
「自分じゃ良く分からないな」
「俺も良く分からん」
「苅部君はそういう空気が読めないから渉君と仲良くなれたんでしょ」
今日子さんは可笑しそうに笑う。それから「人を寄せ付けないオーラ、渉君は持っていても良いと思うよ」と言った。
「どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味よ。じゃ、私、校内を回るから。ばいばーい」
「あ、はーい」
今日子さんと別れていつもの場所に台を置きポーズを取ると、すぐに何人かの人が寄ってきた。
「眼鏡、取り忘れてるよ」
「あ・・・もしかして壮太・・・くん?」
「憶えてくれたの?」
返事をする代わりに頷いて口を閉じて、人差し指を唇の前で立てた。もう話さないよ、というサインだ。
「あーぁ、もう石像になっちゃった。ざんねん。でも、憶えて貰えて嬉しいなぁ。また来るねー」
手を振って壮太君がいなくなる。それからは、僕の衣装の中を覗く子供や、口に薔薇を咥えさせる人、そのバラを取って持っていく人。僕をお姫様抱っこして写真を撮ろうとしたマッチョな男性の時は手足を曲げてしまわないようにするのが大変だった。出来るかどうかの賭けだったらしく、賭けに勝ったその男性はチップを2000円とはずんでくれた。
午後1時。僕は台から降りると自由の女神に手を振りシャワー室へと向かった。シャワー室は制作室のある階の一番奥にある。それぞれが簡単な壁で区切られておりカーテンで個室になるよくあるタイプのシャワー室だ。最大で6人が一度にシャワーを浴びられるようになっている。途中、事務室に寄りシャワー室のカギを受け取った。どうやら今の時間は誰も使用していないらしい。
胸、顔、足、腕、石像塗料がついているのはこの4か所だ。苅部に貰った強力な石鹸でゴシゴシと身体をこすると、灰色の泡が立った。一度目のシャワーを浴びる。こうして体を洗うのも5回目となれば一度では色が落ちきらないことは解っているので、もう一度体に石鹸を塗っていると、外から僕を呼ぶ声が聞こえた。
「渉?」
僕を名前で呼び捨てにするのは佐倉しかいない。
「何?」
顔も出さずに返事をすると、カーテンが空いた。
「ちょ、何だよ!」
「何って体を洗うのを手伝ってやろうと思って」
「ひとりでできる」
「そう?ほらここ、頬のところにまだ色が残ってる」
佐倉の手で頬をこすられる。
「服、濡れるぞ」
「いいよ、別に。ほら、首にも」
佐倉の手が僕の首を撫でる。シャワーの雫が佐倉の髪の毛を濡らしてその雫が佐倉の唇を濡らした。
「ここも、まだついてる」
「なっ・・・」
佐倉の指が僕の乳首に触れ、人差し指と中指で乳首を挟むようにしてこすった。
「あっ、やっ・・・」
突然もたらされた刺激に佐倉の腕にすがる様にして捕まる。
「早瀬に胸元を触られて嬉しかった?」
「何言って・・・あぁっ!!」
唐突に乳首を噛まれて声を上げる。
「声、抑えないと外に聞こえるよ」
「やだ・・・。佐倉、お願い」
「それはどっちのお願い?止めて欲しい?それとも、ここ、触って欲しい?」
佐倉の指がトントンと僕の竿の先端をノックし、僕の中心は触れられたことを喜ぶかのようにビクンと揺れた。
「渉、唇、噛まないで」
佐倉の唇が僕の唇に触れ、少しのシャワーの水と共に僕の口の中に侵入してくる。その間にも佐倉の手は僕の乳首を弄んだ。激しさを増すキスに壁に体を押し付けられる。佐倉がシャワーを反対側に向け自身の手にも石鹸を塗った。泡だらけになった手で優しく僕の中心に触れる。
「んっ・・・あっ・・・」
佐倉の唇が僕の唇から離れるたびに声が漏れる。
気持ちいい・・・。
石鹸のヌルヌルした感触が佐倉の手の滑りを良くし、佐倉の手が僕の体のあらゆるところに触れる。中心に触れては2、3回上下に抜き、中心が喜びに震えた瞬間に手は別の場所を愛撫する。粗く息を吐きながら僕は懇願の言葉を口にすることが出来ずに佐倉を見た。
「石像の渉に触ったやつら、渉がこんな顔して鳴くなんて思いもしないんだろうな」
恥ずかしさに佐倉の胸倉をつかんで、視線から逃れるように佐倉の胸に顔を埋めた。そのまま僕を抱きかかえるようにした佐倉の右手が僕の腰を撫で、やがて僕の蕾に触れた。
「やだっ」
佐倉の左手は僕の中心を掴みゆるゆると快楽を与えてくる。佐倉は僕の言葉を無視して耳に口づけた。
「もっと深いところに触れたい」
佐倉の声が甘く脳内を侵食していく。
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