我慢限界な八重くんは、世話焼き同期を独占したい

白盾

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第二話 会議室ですれ違う想い(R18)

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 --次の日。


「橘先輩おはようございます。
アンタ一体、八重さんに何したんすか?」
「ええ?!!」
「はぁ、僕に朝からねちねちねちねち凄いんすよ。柚木ちゃんに何した。手を出したら許さねぇからな……とかって」
「……ん?」
「この鈍ちんコンビめ」


 いつも通りに出勤すれば、席につくなり赤木くんに心底嫌そうな顔で詰められる。
 いつものように喧嘩なら、放っておくことも出来ない。


 よしここは、先輩として一肌脱いで仲裁しよう!
 

 仕事をひと段落させて、休憩がてらコーヒーを淹れて八重くんの席に運んだ。



「お疲れ様!」
「お疲れ。
コーヒー淹れてくれたの?」
「うん、どうぞ!」
「ありがとう。
ッくぅう!柚木ちゃんの一杯は、やっぱ至高だよぉ」



 普段通りの、大型犬のようなほっこり笑顔の八重くん。
 全然思ってたより普通じゃないか。
 なんだ、赤木くんの勘違いだこれ。



「大袈裟だよ!
……そう言えば赤木くんがさっき不貞腐れてたけど」
「なんで赤木の話?
あぁ……そう言えば、好きなんだっけアイツが。
一緒にいたのに全然気づかなかったなぁ」



 彼からは聞いたことのない低音域の、怒りを孕んだ声。

 それに一瞬たじろぐ。
 昨夜のこと、覚えていたようだ。
 もしや、それで怒っているのだろうか。


 でも、それじゃまるで……八重くんが嫉妬しているみたいだ。



「あ、あの、その実は好きな人の話なんだけど、本当は私八重くんがス」
「……ス?」

「ス!!!!」


 言わないと、伝えないと本当の気持ちを。


 でも緊張してしまって、声が喉に詰まる。
 普段と違う威圧的な八重くんに、縮こまってしまう。

 恐る恐る八重くんを見れば、傷ついたような悲しい瞳と目が合った。



「俺は……諦めねぇから。
俺の方が幸せにできるし、愛してるから我慢だってしてきたんだよ」

(我慢?)

「え?ええと」
「俺は、柚木ちゃんのこと入社した時から……好きだ。全然諦めらんねぇよ」
「……すき!!!?」
「ッ!い、今のは!!ああああ!!!?
ほーら戻った戻ったー!!あー!はははははは」


 
 好き。
 あのニュアンスは、likeではなくてloveに聞こえた。
 

 そうだとしても、嬉しさよりも自身が嘘をついてしまった罪悪感が拭えないでいた。





                      *   *   *   *   *   *



 八重くんの言葉が、頭から離れない。
 そうこうしていれば、悶々としたまま休憩時間がやってきた。

 お昼を食べ終え、一人うなりながら廊下を歩く。


 前方から、足早な八重くんを見つけてつい隠れてしまう。


「あれ、柚木ちゃんいねぇじゃん」


(どうしよう。
思わず逃げ込んでしまったけど……)


 空いている会議室にわざわざ滑り込んでしまう。


『俺は、柚木ちゃんのことが入社した時から……好きだ。全然諦めらんねぇよ』



 これって好きってことだよね。
 私のことを、当時から……。

 あああああ私、本当に最悪な嘘をついて……。



「あ、柚木ちゃぁぁあん!
ハァ、ハァ。ようやく、見つけたぁ!!んも!ここで何してんのさ」


 ビクッと、振りかえると息を切らした八重くんに迫られていた。


「わっ!!!な、なんで気づいて」
「そんな不審者と出会《でくわ》したみたいな反応、傷つくじゃん」


 嘘をついてしまった分、罪悪感がのしかかる。
 本当に自業自得だ。
 顔も合わせられない。


「大丈夫?もしかして体調悪い?」
「だ、大丈夫」
「大丈夫そうには見えねぇけど。顔真っ赤じゃん」



 八重くんの、男らしい顔立ちがこちらを覗く。
 破壊力のある上目遣いに、胸が高鳴る。

 その距離、目と鼻の先。


「ねぇ、柚木ちゃん俺の話聞いてる?」
「へ?」
「さっきの話の続きを……」
「べぶ」


 頬を大きな手に捕まえられてしまい、顔が真正面に向くように固定される。
 どこに視点を定めればいいかわからず、四方八方泳ぎまくる。



「ねぇよそ見は……駄目だ」

「ッ~~~」
「なんで、俺のこといつもみたいに見てくんねぇの?」
「……しょれは」
「俺があんなこと言ったから?
引いてる?実は何年も好きでいたこと……。
ねぇ教えてよ」
「わたひね、その」
「うん」



 壁に追いやられて、行手を阻まれる。
 身体同士は密着し合い、互いの鼓動が重なり合う。

 言わないと謝らないと。


「や、八重くん……ご、ごめんなさい!!!
私、嘘ついてて……」

 顔が強張ったのがわかった。
 八重くんは、わかりやすい人だから。

「嘘?何が」
「好きな人の話。本当は、八重くんのことが」

「俺のことが好きとか言って、この場だけ凌《しの》ごうとしてる?」
「凌ごうだなんて思ってないの。本当に好きで」
「言っとくけど俺は、赤木にも他の誰にも譲ってやるつもりなんてない。俺の方がずっとずっとずっと!!
誰よりも柚木ちゃんのこと、愛してるんだから」



 整った八重くんの顔が、ゼロ距離に近づいて。

「……ンン?!!」
 

 柔らかな感触が、何度も何度も唇に重ねられていく。
 持ち上げられた顎は簡単に振り解けず、追い込むように口付けされる。


 息継ぎする間もなく、触れるだけのキスは一変する。
 割り入れられた分厚い舌が、ねっとりと熱く絡んだ。

 
 いやらしい水音が、静かな会議室にこだまする。


「ンンンンッ!!!んふぅ……」


 胸板を押して引き剥がそうとするが、びくともしない。


「柚木ちゃん、飲んで?」


 次の瞬間。
 八重くんの唾液が口の中いっぱいに流れてくる。
 こんなことダメなのに、初めてのことに抵抗できず飲み込んだ。



「……口の中見せて。うん、ちゃんと飲めてる。
ハァ……なんで、俺じゃないの。俺の方が一緒に居るのも長いのに……」
「わ、私が好きなのは、八重くんだよ。
釣り合わないって自信なくて……咄嗟に嘘ついちゃったけど」
「違う、そうやって俺から逃げたいからでしょ。
ッいや、そんなこと言いたいわけじゃ……ハァ、落ち着かねーと。ねえ、吸わせて?好きっていうなら俺に委ねて?」


 懇願する眼差しを、拒めない。
 
 首元に顔を埋めて、思い切り臭いを吸われる。

 そのまま、ゆっくりと首筋を舐め上げられ這い上がる口元は耳たぶに熱い吐息を吹きかける。


「っん」
「やばい……声、可愛い。ここ弱いんだ?」
「ちが!!あっ……」


 耳をねっとりとした舌が這う。
 息と、唾液がまじった音は、とても淫靡《いんび》で思わず膝を擦り合わせていた。


 それに気づいてか否か。
 スカートの中へと大きく骨ばった手が太ももを撫でる。


「きゃッ」


 遠慮のない手は、お尻まで到達して激しい手つきで揉みしだく。

 割れ目をわざと押し広げてみせたり、穴を探し当てようと付近を指で掠めたり、焦らされてしまう。
 

「……ッ」
「やわらけぇ、柚木ちゃんのお尻触っちゃった。もちろん赤木より先だよね?」
「や、だっ!!触っちゃダメッ」
「やだ?ホントに俺のこと好きならさ、こういうことだっていずれするかもしれないよ」


 お尻を弄っていた手を目の前に差し出された。
 匂いを嗅いだり指の隅々までゆっくりと舐め上げていく。


「ほら、甘い味がするよぉ?
ハァ、柚木ちゃんの、味。おいひい、おれすっごいしあわせ」
「汚いから舐めないでッ!!」
「まさか、全部綺麗だよ。
全身余すことなく、味わいたい」


 いつもの八重くんじゃない。
 顔を赤らめてうっとり恍惚《こうこつ》としている。

 こんなこと駄目だよ。
 誤解されたままなんて。
 でも、どうしたらやめて話を聞いてくれる?


「あ!ここ、会社だから……」
「会社じゃなければ、いいの?」
「……それは」
「好きならさぁ、即答できるよね?
どーなの?ねぇ、なんで答えてくんねーの
……ッ!!!」

「……ひぅッ!!?痛ッ!!」


 首筋に歯を立てて、噛み付かれた。
 その痛みに追い打ちをかけるように、執着に舐め回す。


「ッイ、ぁ、ッぐぅ」
「痛いでしょ」
「ゔ、やめ」
「わざと痛くしてんだよ。
無防備すぎる柚木ちゃんが悪いから」
「……ごめ、なさいッ」
「ホントにわかってんの?
他の男に同じことされたら、ちゃんと抵抗する?」
「う、うんッ!!する!!絶対に」
「本当にい?」
「絶対するからッ」
「んぅ……、わかった信じるよ」


 ちゅぱっと、わざと音を立てて首筋から遠のく。


「自衛だけはしてね。
俺以外とか絶対に許さないから」


 その視線に、見下ろされながらどこかまだ期待している愚かな私。


 疼く下腹部が刹那げで、まだその先を望んでいる。



 でもまだ私たちは、ただの同僚なはずで。
 そう思うのに、剥がされた恋欲はもう誤魔化しは効かない。


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