5 / 36
背後にいるもの
しおりを挟む
足音が──追いかけてくる。
(違う……、これはもう“気のせい”なんかじゃない)
歩幅を狭めても足音はぴたりと揃って遅くなる。
急ぎ足になればやはり後ろから急ぐ音がついてくる。
けれど、振り返れば誰もいない。
川沿いの道はうっすらとカーブしていて、向こうに見える橋の下が黒くぽっかりと口を開けていた。
そこを越えれば人通りのある大通りが近い──。 そう自分に言い聞かせながら美月は歩を早めた。
足音が聞こえなくなった。
美月は立ち止まった。 呼吸が少し荒い。
風が止んであたりの音がすっと消える。
その瞬間、首筋にふわりと冷たい風が当たったような感覚があった。
──誰かがすぐ後ろにいる。
美月は息を止めたままその場に凍りついた。
動けない。 振り返るのが怖かった。
一歩、前へ進もうとした足がわずかに震えた。
それでも視線を逸らすようにスマートフォンを取り出す。
画面に目を落とすと何かがおかしいことに気づく。
──暗い。 反応しない。
電源は入っているはずなのに画面は真っ黒なまま点かない。
強制再起動をしても反応がない。
ポケットにしまった瞬間、足音が──、また聞こえた。
今度は右斜め後ろから。
何かがわずかに砂利を踏む音がした。
(違う、これはもう……、本当に……)
美月は走り出した。 もう“歩く”速度では耐えられなかった。
何かが背後で動く気配が一定の距離を保ちながらついてくる。
後ろを見てはいけない──そう思いながらも、美月はちらりと視線を戻した。
その瞬間。
欄干の向こう、川の縁に──“誰か”が立っていた。
白い服。 髪が長く、顔は見えない。
でも、はっきりと自分を見ていると感じた。
美月はそのまま走り抜けた。 視界の端にそれがぬるりと追うように動くのが見えた。
走っても走っても、背中に貼りついた冷たい視線が離れなかった。
(違う……、これはもう“気のせい”なんかじゃない)
歩幅を狭めても足音はぴたりと揃って遅くなる。
急ぎ足になればやはり後ろから急ぐ音がついてくる。
けれど、振り返れば誰もいない。
川沿いの道はうっすらとカーブしていて、向こうに見える橋の下が黒くぽっかりと口を開けていた。
そこを越えれば人通りのある大通りが近い──。 そう自分に言い聞かせながら美月は歩を早めた。
足音が聞こえなくなった。
美月は立ち止まった。 呼吸が少し荒い。
風が止んであたりの音がすっと消える。
その瞬間、首筋にふわりと冷たい風が当たったような感覚があった。
──誰かがすぐ後ろにいる。
美月は息を止めたままその場に凍りついた。
動けない。 振り返るのが怖かった。
一歩、前へ進もうとした足がわずかに震えた。
それでも視線を逸らすようにスマートフォンを取り出す。
画面に目を落とすと何かがおかしいことに気づく。
──暗い。 反応しない。
電源は入っているはずなのに画面は真っ黒なまま点かない。
強制再起動をしても反応がない。
ポケットにしまった瞬間、足音が──、また聞こえた。
今度は右斜め後ろから。
何かがわずかに砂利を踏む音がした。
(違う、これはもう……、本当に……)
美月は走り出した。 もう“歩く”速度では耐えられなかった。
何かが背後で動く気配が一定の距離を保ちながらついてくる。
後ろを見てはいけない──そう思いながらも、美月はちらりと視線を戻した。
その瞬間。
欄干の向こう、川の縁に──“誰か”が立っていた。
白い服。 髪が長く、顔は見えない。
でも、はっきりと自分を見ていると感じた。
美月はそのまま走り抜けた。 視界の端にそれがぬるりと追うように動くのが見えた。
走っても走っても、背中に貼りついた冷たい視線が離れなかった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる