【完結】足影(アシカゲ)~歪んだ街、足音が響く~

ゆう☆

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背後にいるもの

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足音が──追いかけてくる。

(違う……、これはもう“気のせい”なんかじゃない)

歩幅を狭めても足音はぴたりと揃って遅くなる。
急ぎ足になればやはり後ろから急ぐ音がついてくる。

けれど、振り返れば誰もいない。

川沿いの道はうっすらとカーブしていて、向こうに見える橋の下が黒くぽっかりと口を開けていた。
そこを越えれば人通りのある大通りが近い──。 そう自分に言い聞かせながら美月は歩を早めた。

足音が聞こえなくなった。

美月は立ち止まった。 呼吸が少し荒い。
風が止んであたりの音がすっと消える。

その瞬間、首筋にふわりと冷たい風が当たったような感覚があった。

──誰かがすぐ後ろにいる。

美月は息を止めたままその場に凍りついた。
動けない。 振り返るのが怖かった。
一歩、前へ進もうとした足がわずかに震えた。

それでも視線を逸らすようにスマートフォンを取り出す。
画面に目を落とすと何かがおかしいことに気づく。

──暗い。 反応しない。

電源は入っているはずなのに画面は真っ黒なまま点かない。
強制再起動をしても反応がない。

ポケットにしまった瞬間、足音が──、また聞こえた。

今度は右斜め後ろから。
何かがわずかに砂利を踏む音がした。

(違う、これはもう……、本当に……)

美月は走り出した。 もう“歩く”速度では耐えられなかった。

何かが背後で動く気配が一定の距離を保ちながらついてくる。
後ろを見てはいけない──そう思いながらも、美月はちらりと視線を戻した。

その瞬間。

欄干の向こう、川の縁に──“誰か”が立っていた。
白い服。 髪が長く、顔は見えない。
でも、はっきりと自分を見ていると感じた。

美月はそのまま走り抜けた。 視界の端にそれがぬるりと追うように動くのが見えた。

走っても走っても、背中に貼りついた冷たい視線が離れなかった。
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