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安堵の中のひずみ
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眩しいほどの光が視界を満たしたとき、美月はようやく足を止めた。
コンビニの看板が真夜中の街を明るく照らしていた。
大通りに出たのだ。 車のヘッドライトが行き交い、信号が点滅している。
人影は少ないが数人の歩行者が前後に見える。
「……っは……っ、はぁ……」
肩で息をしながら、美月はコンビニの前に立ち尽くした。
全身の緊張が汗とともにじわじわと抜けていく。
後ろを振り返る。
暗い川沿いの道が街灯の先で黒く途切れている。
そこには、誰も──いない。
「なんだったの、今の……」
自分にそう呟いてみても現実感がなかった。
ただ、肌に残る冷気と妙に湿った足音の記憶が、空想ではないと訴えていた。
スマートフォンを再び取り出す。
画面は今度はちゃんと点いた。
通知もない。 ただの真夜中のホーム画面。
時間は──午前1時12分。
(終電を逃したどころの騒ぎじゃない……)
LINEを見ると、千紗からのメッセージが一通だけ届いていた。
「大丈夫? 橋本、なんか変だったけど……無理しないでね」
美月はその文面をしばらく見つめた。
変だった。 確かに変だった。
でも、あの「足音」は橋本なんかじゃなかった。
何かもっと……。 名前のつけられないものだった。
ふと視界の端に人の影が動いた気がした。
コンビニの入口、自動ドアの前に──誰かが立っている。
(え……?)
美月が顔を向けたとき、そこにはもう誰もいなかった。
ドアは開いていない。 音もしていない。
「……やめて、ってば……」
自分に言い聞かせるように呟いて美月はコンビニに入り、明るい蛍光灯の下で手を拭った。
商品棚の中の飲み物や菓子類が妙に整然として見える。
でも、どこかに「ズレ」がある気がした。
棚の一角──ペットボトルのラベルがすべて裏返っている。
(……こんなこと、ある?)
誰かが意図的にやったようにしか見えない。
ザッ。
外から、砂を踏むような音がふたたび聞こえた気がした。
コンビニの看板が真夜中の街を明るく照らしていた。
大通りに出たのだ。 車のヘッドライトが行き交い、信号が点滅している。
人影は少ないが数人の歩行者が前後に見える。
「……っは……っ、はぁ……」
肩で息をしながら、美月はコンビニの前に立ち尽くした。
全身の緊張が汗とともにじわじわと抜けていく。
後ろを振り返る。
暗い川沿いの道が街灯の先で黒く途切れている。
そこには、誰も──いない。
「なんだったの、今の……」
自分にそう呟いてみても現実感がなかった。
ただ、肌に残る冷気と妙に湿った足音の記憶が、空想ではないと訴えていた。
スマートフォンを再び取り出す。
画面は今度はちゃんと点いた。
通知もない。 ただの真夜中のホーム画面。
時間は──午前1時12分。
(終電を逃したどころの騒ぎじゃない……)
LINEを見ると、千紗からのメッセージが一通だけ届いていた。
「大丈夫? 橋本、なんか変だったけど……無理しないでね」
美月はその文面をしばらく見つめた。
変だった。 確かに変だった。
でも、あの「足音」は橋本なんかじゃなかった。
何かもっと……。 名前のつけられないものだった。
ふと視界の端に人の影が動いた気がした。
コンビニの入口、自動ドアの前に──誰かが立っている。
(え……?)
美月が顔を向けたとき、そこにはもう誰もいなかった。
ドアは開いていない。 音もしていない。
「……やめて、ってば……」
自分に言い聞かせるように呟いて美月はコンビニに入り、明るい蛍光灯の下で手を拭った。
商品棚の中の飲み物や菓子類が妙に整然として見える。
でも、どこかに「ズレ」がある気がした。
棚の一角──ペットボトルのラベルがすべて裏返っている。
(……こんなこと、ある?)
誰かが意図的にやったようにしか見えない。
ザッ。
外から、砂を踏むような音がふたたび聞こえた気がした。
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