【完結】足影(アシカゲ)~歪んだ街、足音が響く~

ゆう☆

文字の大きさ
6 / 36

安堵の中のひずみ

しおりを挟む
眩しいほどの光が視界を満たしたとき、美月はようやく足を止めた。

コンビニの看板が真夜中の街を明るく照らしていた。
大通りに出たのだ。 車のヘッドライトが行き交い、信号が点滅している。
人影は少ないが数人の歩行者が前後に見える。

「……っは……っ、はぁ……」

肩で息をしながら、美月はコンビニの前に立ち尽くした。
全身の緊張が汗とともにじわじわと抜けていく。

後ろを振り返る。
暗い川沿いの道が街灯の先で黒く途切れている。
そこには、誰も──いない。

「なんだったの、今の……」

自分にそう呟いてみても現実感がなかった。
ただ、肌に残る冷気と妙に湿った足音の記憶が、空想ではないと訴えていた。

スマートフォンを再び取り出す。

画面は今度はちゃんと点いた。
通知もない。 ただの真夜中のホーム画面。
時間は──午前1時12分。

(終電を逃したどころの騒ぎじゃない……)

LINEを見ると、千紗からのメッセージが一通だけ届いていた。

「大丈夫? 橋本、なんか変だったけど……無理しないでね」

美月はその文面をしばらく見つめた。

変だった。 確かに変だった。
でも、あの「足音」は橋本なんかじゃなかった。
何かもっと……。 名前のつけられないものだった。

ふと視界の端に人の影が動いた気がした。
コンビニの入口、自動ドアの前に──誰かが立っている。

(え……?)

美月が顔を向けたとき、そこにはもう誰もいなかった。
ドアは開いていない。 音もしていない。

「……やめて、ってば……」

自分に言い聞かせるように呟いて美月はコンビニに入り、明るい蛍光灯の下で手を拭った。
商品棚の中の飲み物や菓子類が妙に整然として見える。

でも、どこかに「ズレ」がある気がした。
棚の一角──ペットボトルのラベルがすべて裏返っている。

(……こんなこと、ある?)

誰かが意図的にやったようにしか見えない。

ザッ。

外から、砂を踏むような音がふたたび聞こえた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...