【完結】本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~

汐埼ゆたか

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3.あの頃と同じこと、違うこと。***

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 お、おでこ……?

『相性を確かめる』なんて言うからなにをされるかと身構えたが、若干拍子抜けだ。離れていく気配にほっと胸をなで下ろした、そのとき。

「いっ!」

 カプリと鼻の先をかじられた。痛みに驚いて目を開いたら、口の端を持ち上げた彼と目が合う。
 からかわれたんだ!

 ひどい! と抗議の声を上げようとした次の瞬間、チュッとすばやく唇を啄まれた。

 一瞬なにが起きたかわからずに、ぽかんとする。それがキスだと気がつくと同時に、再度唇を塞がれた。

「んっ」

 今度はさっきよりもしっかりと唇同士が密着し、相手の体温や柔らかさを感じる。じっと動かず押しつけられているだけなのに、心臓がドクドクと脈打っている。音が彼に聞こえてしまいそうだ。

 あまりの長さに息苦しくなって、彼の胸を押す。酸素を求めて息を吸い込んだそのとき、噛みつくように唇を塞がれた。

 ぬるりと押し入って来た彼の舌が、奥に逃げようとする私のものをあっという間に絡め取る。頬に添えられていた手はいつの間にか首の後ろに回されていて、逃げ道を封じられていた。
 舌の表面も裏側も、余すところなく丹念に撫でられる。

「んっ……ふぁっ」

 少しでも私が反応する場所があれば、そこを何度も執拗にこすられる。強引なようでいて、その動きは繊細かつ甘やかで、与えられる刺激に悶えた。

 こんなに気持ちいいキスがあるなんて……。
 これまで経験したキスなんて全然比べものにならない。
 すがるように目の前のシャツをきゅっと握ると、それを合図に動きが激しくなった。
 歯列や口蓋の裏まで余すところなく丹念になぞられる。ぴちゃぴちゃと淫靡な水音が頭の中に直接響いた。

 彼のシャツを握り締めて甘い痺れに悶えているうちに、彼の唇はリップ音を立てて離れて行った。
 やっと解放された口から大きく息を吸い込む。コホッと咳込むと、背中をトントンと優しく撫でられる。

 相性を確かめると言っていたけれど、私は合格なのだろうか。有って無いようなレベルの経験値しか持ち合わせていないので、どういう判定が下されるのかまったくわからない。わかったことといえば、自分と違って彼は経験豊富だということだ。

 やっぱり不合格だって言われるかしら……。

 胸の奥がチクンと痛んだのに気づかないふりをしたとき、背中でなにかがシュルシュルと解かれる音がした。まさか、と思い振り向くと彼の手がブラウスのリボンをつまんでいる。

「なっ」

 なにをしているのと抗議の言葉を口にするより早く、大きくいたところから手が侵入してきた。

「きゃっ」

 乾いた手のひらに背筋をたどられ、体をのけぞらせたが逆効果だったかもしれない。反り返った喉元に唇を寄せられ、上下唇で軽く挟まれながら吸いつかれる。

「んやっ」

 彼の胸を両手で押し返すがびくともしない。それどころか反対に押されてソファーに仰向けに倒れ込んだ。

「あ……っ」

 真上からじっと見つめられる。瞳の奥にこれまで向けられたことのない熱が見え隠れする。鼓動が早鐘を打ち、頭が真っ白になる。

「ちゃんとわかったか?」
「え、あ……え」

 意味を瞬時に理解できない。考えようと思うのに頭がうまく働かないのだ。彼はそれをわかったかのように妖艶な笑みを浮かべる。

「男としての俺は合格?」

 本当だったら迷わず肯定すべきところだ。けれど首を縦に振るのをためらった。なんとなく癪だったのだ。キスでいいように翻弄された後でうなずけば、簡単に堕ちる女だと思われてしまう。

 そもそもこんなテスト、私には必要ないのに。そう思ったらむくむくと反抗心が湧き上がった。

「そういう圭吾お兄ちゃんこそどうなの? 変な同情なんて要らないから正直に答えてよ」

 だめならだめだといっそはっきり言ってほしい。その方がスッパリと諦めもつくだろう。淡い初恋の残骸をシンガポールの海に捨ててしまうのも手かもしれない。
 覚悟を決めて見上げたら、彼が答えづらそうに視線をさ迷わせた。

 やっぱりだめなんだ……。
 あんなに官能的なキスを交わしても、彼の中の私は〝妹〟から脱却できないのだ。そう考えたら幼なじみという関係すらむなしくなってくる。
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