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第十話【差し入れレアチーズムース】報告と告白はきっちりと!?
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ちゃぽん。湯船に足を入れる。
温めの設定されたお湯の中に静かに体を浸し、肩まで浸かったところで美寧はゆっくりと長い息を吐きだした。
「またちゃんと言えなかったな……」
一人の男性として怜のことを好きだと意識するようになってから、簡単に「好き」と口にすることが出来なくなった。
うっかりすると今日のように軽々しく「好き」と口にしそうになるけれど、それは何だか自分が考えている告白とは違う。
(おじいさまに言ってた時の調子で、勝手に口から出ちゃうんだもの……)
祖父は生前、一人孫娘である自分のことをとても可愛がってくれていた。小さなころから祖父と暮らしていた美寧は、孫に甘い祖父にくっついては「おじいさま大好き」と口にしていたのだ。
(れいちゃん、困ってたのかなぁ……)
彼の横顔を思い出す。耳の端が赤く染まっている。
普段はあまり大きく表情を変えることのない怜が、そんなふうになることは珍しい。それがどうしてなのか美寧には見当もつかなくて、また自分の発言が彼を困らせてしまったのかも、と心配になる。
ちゃんと告白しようと思えば思うほど、かえってそれを意識してしまうせいで不自然な態度を取ってしまい、どんどん言いづらくなってしまっていた。
むき出しの首筋にひとすじの汗が伝う。温めとはいえ、晩夏の夜、長湯をすればすぐにのぼせてしまう。
夏でもシャワーだけでなく湯を沸かすのは、冷え性の美寧の体を改善するための怜の思惑だ。怜が一人だった時はシャワーだけで済ませていたことを、美寧は知らない。
ずぶずぶと、口のすぐ下まで湯船に埋める。愛用のタオル生地のヘアキャップはユズキからもらった“女の子の必需品”の一つで、洗いあがりの長い髪がまとめて包める優れものだ。
「頑張ろう……」
小さく呟くと、美寧は湯船から立ち上がった。
美寧が風呂から上がると、怜はソファーで本を読んでいるところだった。
彼は美寧の姿を見るとすぐに、読みかけの本を閉じ、掛けていた眼鏡と一緒にローテーブルの上に置いた。
「大丈夫ですか?」
「ん?」
何を心配されているのかピンと来なくて、美寧は小首を傾げる。すると、ソファーから立ち上がった怜がこちらまでやってきた。
「真っ赤になっています。のぼせましたか?」
今度はちゃんと分かって、「ううん」と小さく頭を振る。
「でもちょっと湯船に浸かり過ぎちゃったかも」
体がとても熱くて、のぼせる寸前だった自覚はあった。
「気分は?」
長い指がすーっと美寧の頬を撫でた。
「大丈夫だよ?ちょっと熱いだけ」
ひんやりとした指先が気持ち良くてうっとりと瞳を細めると、頬を撫でていた手が一瞬ピタリと止まった。
そして「ちょっと待っていてくださいね」と言い残すと、怜はキッチンの方へ行ってしまった。
すぐに戻っていた怜の手には、氷の入ったグラスがある。
「どうぞ」
「ありがとう」
グラスを受け取ると、両手がひやりと気持ち良くなる。
美寧はグラスに口をつけてごくごくと一気に半分ほど飲んだ。
「おいしい~っ!やっぱりれいちゃんの梅サイダーは美味しいね」
自家製の梅シロップを炭酸水で割った梅サイダーを風呂上りに飲むことが、この夏の美寧の定番となっている。
「気に入って貰えて良かったのですが、あと少しで梅シロップが無くなりそうです」
夏の終わりと共に、この定番ドリンクも終わろうとしているようだ。
怜の言葉を聞いた美寧は眉を下げ、手に持っているグラスの中身をじっと見つめた。
「そっかぁ……もう飲めないんだね……」
至極残念そうに呟いた声に、怜は思わず口にした。
「次はもっと沢山作りますね」
「ほんと?」
「はい。来年の梅はミネの為にたくさんシロップ漬けにします」
「やった!楽しみにしてるね」
「はい」
美寧は嬉しそうにグラスの残りを飲み干した。
そしていつものように彼女の髪をドライヤーで乾かした怜は、自分も風呂入ってくるとリビングを後にした。
ちゃぽん。湯船に足を入れる。
温めの設定されたお湯の中に静かに体を浸し、肩まで浸かったところで美寧はゆっくりと長い息を吐きだした。
「またちゃんと言えなかったな……」
一人の男性として怜のことを好きだと意識するようになってから、簡単に「好き」と口にすることが出来なくなった。
うっかりすると今日のように軽々しく「好き」と口にしそうになるけれど、それは何だか自分が考えている告白とは違う。
(おじいさまに言ってた時の調子で、勝手に口から出ちゃうんだもの……)
祖父は生前、一人孫娘である自分のことをとても可愛がってくれていた。小さなころから祖父と暮らしていた美寧は、孫に甘い祖父にくっついては「おじいさま大好き」と口にしていたのだ。
(れいちゃん、困ってたのかなぁ……)
彼の横顔を思い出す。耳の端が赤く染まっている。
普段はあまり大きく表情を変えることのない怜が、そんなふうになることは珍しい。それがどうしてなのか美寧には見当もつかなくて、また自分の発言が彼を困らせてしまったのかも、と心配になる。
ちゃんと告白しようと思えば思うほど、かえってそれを意識してしまうせいで不自然な態度を取ってしまい、どんどん言いづらくなってしまっていた。
むき出しの首筋にひとすじの汗が伝う。温めとはいえ、晩夏の夜、長湯をすればすぐにのぼせてしまう。
夏でもシャワーだけでなく湯を沸かすのは、冷え性の美寧の体を改善するための怜の思惑だ。怜が一人だった時はシャワーだけで済ませていたことを、美寧は知らない。
ずぶずぶと、口のすぐ下まで湯船に埋める。愛用のタオル生地のヘアキャップはユズキからもらった“女の子の必需品”の一つで、洗いあがりの長い髪がまとめて包める優れものだ。
「頑張ろう……」
小さく呟くと、美寧は湯船から立ち上がった。
美寧が風呂から上がると、怜はソファーで本を読んでいるところだった。
彼は美寧の姿を見るとすぐに、読みかけの本を閉じ、掛けていた眼鏡と一緒にローテーブルの上に置いた。
「大丈夫ですか?」
「ん?」
何を心配されているのかピンと来なくて、美寧は小首を傾げる。すると、ソファーから立ち上がった怜がこちらまでやってきた。
「真っ赤になっています。のぼせましたか?」
今度はちゃんと分かって、「ううん」と小さく頭を振る。
「でもちょっと湯船に浸かり過ぎちゃったかも」
体がとても熱くて、のぼせる寸前だった自覚はあった。
「気分は?」
長い指がすーっと美寧の頬を撫でた。
「大丈夫だよ?ちょっと熱いだけ」
ひんやりとした指先が気持ち良くてうっとりと瞳を細めると、頬を撫でていた手が一瞬ピタリと止まった。
そして「ちょっと待っていてくださいね」と言い残すと、怜はキッチンの方へ行ってしまった。
すぐに戻っていた怜の手には、氷の入ったグラスがある。
「どうぞ」
「ありがとう」
グラスを受け取ると、両手がひやりと気持ち良くなる。
美寧はグラスに口をつけてごくごくと一気に半分ほど飲んだ。
「おいしい~っ!やっぱりれいちゃんの梅サイダーは美味しいね」
自家製の梅シロップを炭酸水で割った梅サイダーを風呂上りに飲むことが、この夏の美寧の定番となっている。
「気に入って貰えて良かったのですが、あと少しで梅シロップが無くなりそうです」
夏の終わりと共に、この定番ドリンクも終わろうとしているようだ。
怜の言葉を聞いた美寧は眉を下げ、手に持っているグラスの中身をじっと見つめた。
「そっかぁ……もう飲めないんだね……」
至極残念そうに呟いた声に、怜は思わず口にした。
「次はもっと沢山作りますね」
「ほんと?」
「はい。来年の梅はミネの為にたくさんシロップ漬けにします」
「やった!楽しみにしてるね」
「はい」
美寧は嬉しそうにグラスの残りを飲み干した。
そしていつものように彼女の髪をドライヤーで乾かした怜は、自分も風呂入ってくるとリビングを後にした。
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