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一章
在りし日の幸せな国のお姫様
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ある国のお姫様
昔の昔、はるか昔のある国にそれはそれは大層美しいお姫様がおりました。
お姫様は美しいお妃様の、大きな愛に包まれ育ちました。
お妃様は愛に溢れ、愛する王様の子であるお姫様を大事に育てました。
そうして育ったお姫様は大きな愛に包まれ、誰からも愛される国随一といわれるほどの美しさを持つ悲しいお姫様となりました。
過ぎた美しさは、新たな物語への幕開けとなりました。
そんなお姫様の、始まりの終わった物語。
※※
国一番の愛を持つお妃様の元に、それはそれは美しいお姫様が授かりました。
お妃様は夜空を映した様な見事な黒髪に、星の瞬きに似た輝く瞳を持ち月の女神の様な美貌に、太陽の様に暖かな愛を持つ素晴らしいお妃様でした。
そして彼女は夫である王様を、それは一等愛しておりました。
お妃様はそんな王様との娘を、それはそれは深く愛しておりました。
ある昼下がり、広いお城の一室でお妃様は歌う様に声を掛けました。
「あぁ! 私の可愛いレディ、どうか私にその可愛いらしい姿を見せてくれないかしら。」
そんなお妃様の声に弾かれる様に、物置の衣装棚から小さな黒い影が飛び出し、お妃様の腰ほどに抱きつきました。
それはお妃様の深い愛に包まれ育った、お妃様譲りの見事な黒髪を持ち、王様譲りの榛色のまん丸な瞳の愛らしいお姫様でした。
「お母様ッ、お仕事は終わりましたの?」
そんなお姫様はどんな時も彼女を探し、一番に抱きしめてくれるお妃様を大層愛しておりました。
「えぇ、私のお姫様。 貴女に退屈ばかりさせてしまって、ごめんなさい。」
「いいえ、お母様。お母様は不貞腐れてもいつでも私を見つけてくださるもの、何だか遊戯みたいで楽しいのよ!それにしても、お母様は何処にいても私を見つけてしまうのね。」
「うふふ、それはきっと私が貴女を愛しているからね。可愛い貴女を何時までも一人きりで居させたくはないのよ。」
お姫様を腕に収めたお妃様は、それはそれは幸せそうな笑みを浮かべ、お姫様に答えました。
「でも私にはお母様の居場所がちっとも分からないわ・・・、私だってお母様をこーんなにも愛しているのに!」
小さなお姫様は精一杯腕を広げ、頬を膨らませました。
そんなお姫様の姿にお妃様は少しだけ、目を見張りそれは一等美しい笑顔を浮かべました。
「そうね、だったら貴女がもう少し大きくなった頃、私の愛を貴女にも教えてあげるわ。愛は分け与えることも出来るのよ?」
「どうして、今ではダメなの?」
「愛は素敵なモノだけど、同時に重く大きなモノなの。だから今の小さなレディのままではきっと、ぺちゃんこに潰れてしまうわ。」
「もう少し大きくって、あとどれくらい?」
「そうね、貴女が16になる頃には私の塔に入れるでしょう。そしたら私のとーっても大きな愛を、貴女にも教えてあげるわ。」
「とーっても大きいの? それってどれくらい?!」
「そうね~、この国中のみんなを愛せるくらいかしら。」
「そんなに大きいの? 私ぺっちゃんこになっちゃうわ・・・。」
「大丈夫。その時は私と半分こして貴女が一人でも抱えられる様になるまで、私が側にいるもの。」
「お母様と半分こ、だったら大丈夫だわ!だってお母様がいると私なんでもできちゃうもの! 森にだって、入れるのよ。」
「あら、おてんばさんね。いつ森へ行ってきたのかしら?」
そんな美しくも愛らしいキラキラとした二人の親娘は、城中から見守られ愛されていました。
そして、その二人の可愛いらしい約束の時をみなが心待ちにしておりました。
この素晴らしい二人に、きっと愛よ祝福が降りるだろうと。
しかし
在りし日の美しい思い出を胸に成長していくお姫様の運命と共に、物語は動き出す。
昔の昔、はるか昔のある国にそれはそれは大層美しいお姫様がおりました。
お姫様は美しいお妃様の、大きな愛に包まれ育ちました。
お妃様は愛に溢れ、愛する王様の子であるお姫様を大事に育てました。
そうして育ったお姫様は大きな愛に包まれ、誰からも愛される国随一といわれるほどの美しさを持つ悲しいお姫様となりました。
過ぎた美しさは、新たな物語への幕開けとなりました。
そんなお姫様の、始まりの終わった物語。
※※
国一番の愛を持つお妃様の元に、それはそれは美しいお姫様が授かりました。
お妃様は夜空を映した様な見事な黒髪に、星の瞬きに似た輝く瞳を持ち月の女神の様な美貌に、太陽の様に暖かな愛を持つ素晴らしいお妃様でした。
そして彼女は夫である王様を、それは一等愛しておりました。
お妃様はそんな王様との娘を、それはそれは深く愛しておりました。
ある昼下がり、広いお城の一室でお妃様は歌う様に声を掛けました。
「あぁ! 私の可愛いレディ、どうか私にその可愛いらしい姿を見せてくれないかしら。」
そんなお妃様の声に弾かれる様に、物置の衣装棚から小さな黒い影が飛び出し、お妃様の腰ほどに抱きつきました。
それはお妃様の深い愛に包まれ育った、お妃様譲りの見事な黒髪を持ち、王様譲りの榛色のまん丸な瞳の愛らしいお姫様でした。
「お母様ッ、お仕事は終わりましたの?」
そんなお姫様はどんな時も彼女を探し、一番に抱きしめてくれるお妃様を大層愛しておりました。
「えぇ、私のお姫様。 貴女に退屈ばかりさせてしまって、ごめんなさい。」
「いいえ、お母様。お母様は不貞腐れてもいつでも私を見つけてくださるもの、何だか遊戯みたいで楽しいのよ!それにしても、お母様は何処にいても私を見つけてしまうのね。」
「うふふ、それはきっと私が貴女を愛しているからね。可愛い貴女を何時までも一人きりで居させたくはないのよ。」
お姫様を腕に収めたお妃様は、それはそれは幸せそうな笑みを浮かべ、お姫様に答えました。
「でも私にはお母様の居場所がちっとも分からないわ・・・、私だってお母様をこーんなにも愛しているのに!」
小さなお姫様は精一杯腕を広げ、頬を膨らませました。
そんなお姫様の姿にお妃様は少しだけ、目を見張りそれは一等美しい笑顔を浮かべました。
「そうね、だったら貴女がもう少し大きくなった頃、私の愛を貴女にも教えてあげるわ。愛は分け与えることも出来るのよ?」
「どうして、今ではダメなの?」
「愛は素敵なモノだけど、同時に重く大きなモノなの。だから今の小さなレディのままではきっと、ぺちゃんこに潰れてしまうわ。」
「もう少し大きくって、あとどれくらい?」
「そうね、貴女が16になる頃には私の塔に入れるでしょう。そしたら私のとーっても大きな愛を、貴女にも教えてあげるわ。」
「とーっても大きいの? それってどれくらい?!」
「そうね~、この国中のみんなを愛せるくらいかしら。」
「そんなに大きいの? 私ぺっちゃんこになっちゃうわ・・・。」
「大丈夫。その時は私と半分こして貴女が一人でも抱えられる様になるまで、私が側にいるもの。」
「お母様と半分こ、だったら大丈夫だわ!だってお母様がいると私なんでもできちゃうもの! 森にだって、入れるのよ。」
「あら、おてんばさんね。いつ森へ行ってきたのかしら?」
そんな美しくも愛らしいキラキラとした二人の親娘は、城中から見守られ愛されていました。
そして、その二人の可愛いらしい約束の時をみなが心待ちにしておりました。
この素晴らしい二人に、きっと愛よ祝福が降りるだろうと。
しかし
在りし日の美しい思い出を胸に成長していくお姫様の運命と共に、物語は動き出す。
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