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一章
優しさと暖かさ
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鏡よ、鏡 どうか姿を見せておくれ
美しく清らかな姿を見せておくれ
見えぬ空の瞳にあの姿を
もう一度だけでいいの
私の愛しい娘の姿を映しておくれ
※※
「可愛い子、最後にこうして会えた事を私は忘れません。貴女は優しく聡明な子ですもの、夜が明ける前にこの塔から立ち去りなさい。そして振り返る事なく、幸せにおなりなさい。」
鏡を見つめるお姫様にお妃様は言葉をかけました。
それを聞いたお姫様はたじろぐ様に、王妃様へ問いかけました。
「お母様? どうしてそんな事を言うの?私の幸せはお母様の側でしか、お母様と共にしかありませんわ。」
お姫様はお妃様に縋り付き、腕に伝わるほど薄くなった身体に気づき自分の体を震わせました。
「あぁ・・・、お母様。どうしてこんなことにッ!お願いよ、どうか私と一緒にお城を出ましょう?」
「それはなりません、可愛い子。私たちはこの国の民を見捨てるわけには行かないのです。」
震えるお姫様の言葉に、お妃様は哀しげにけれども凛とした声音で窘めました。
そんな二人の姿を写す鏡は、何処か歌うように語り始めました。
【哀れな美しい人の子たち、あの獣畜生にも劣る男の存在で運命を狂わされた愛しい人の子よ。眩ゆく癒す月の光から産まれた子、哀れで優しく美しい子。囚われの月に太陽の雫が救いをもたらした、けれども太陽に恋い焦がれた王様は月から太陽を奪い去った。太陽を奪われた月は闇に呑まれて、沈みゆく。沈んだ魂は決して戻らぬと言うのに。】
鏡の言葉にお妃様はそっと目を伏せ、お姫様はそんなお妃様の様子を見て悟りました。
お妃様はもう永くは無く、そしてその魂に救いはもたらされないのだと。
「なんてこと、なんて事なの。お父様はお母様に呪いを与えたのね?!魂を蝕む、永遠に続く呪いを!あぁ、ごめんなさいお母様!私の所為だわ、私が産まれた所為なのよ!」
お姫様は絶望に顔を歪め、涙を流しお妃様から後ずさりました。
「それは違うわ、貴女が産まれ私はとても幸せであったの。それはこの先の希望の光、貴女さえ幸せであれば私は闇の中であっても耐えられると思えるほどに。だからこそ、貴女は今日この時を胸に秘め、光の中で幸せを掴んで欲しいのです。」
お妃様はそれはそれはとても幸せそうな笑みを浮かべ、お姫様をそっと抱きしめました。
けれどもその腕から伝わる熱は、以前のように暖かさはなく驚く程に冷たいものでした。
その腕の中で消えていくお妃様の想い出の欠片にお姫様は声もなく、涙を流すしかありませんでした。
それと同時に、王様への赦すことの出来ぬ想いを抱き始めておりました。
美しく清らかな姿を見せておくれ
見えぬ空の瞳にあの姿を
もう一度だけでいいの
私の愛しい娘の姿を映しておくれ
※※
「可愛い子、最後にこうして会えた事を私は忘れません。貴女は優しく聡明な子ですもの、夜が明ける前にこの塔から立ち去りなさい。そして振り返る事なく、幸せにおなりなさい。」
鏡を見つめるお姫様にお妃様は言葉をかけました。
それを聞いたお姫様はたじろぐ様に、王妃様へ問いかけました。
「お母様? どうしてそんな事を言うの?私の幸せはお母様の側でしか、お母様と共にしかありませんわ。」
お姫様はお妃様に縋り付き、腕に伝わるほど薄くなった身体に気づき自分の体を震わせました。
「あぁ・・・、お母様。どうしてこんなことにッ!お願いよ、どうか私と一緒にお城を出ましょう?」
「それはなりません、可愛い子。私たちはこの国の民を見捨てるわけには行かないのです。」
震えるお姫様の言葉に、お妃様は哀しげにけれども凛とした声音で窘めました。
そんな二人の姿を写す鏡は、何処か歌うように語り始めました。
【哀れな美しい人の子たち、あの獣畜生にも劣る男の存在で運命を狂わされた愛しい人の子よ。眩ゆく癒す月の光から産まれた子、哀れで優しく美しい子。囚われの月に太陽の雫が救いをもたらした、けれども太陽に恋い焦がれた王様は月から太陽を奪い去った。太陽を奪われた月は闇に呑まれて、沈みゆく。沈んだ魂は決して戻らぬと言うのに。】
鏡の言葉にお妃様はそっと目を伏せ、お姫様はそんなお妃様の様子を見て悟りました。
お妃様はもう永くは無く、そしてその魂に救いはもたらされないのだと。
「なんてこと、なんて事なの。お父様はお母様に呪いを与えたのね?!魂を蝕む、永遠に続く呪いを!あぁ、ごめんなさいお母様!私の所為だわ、私が産まれた所為なのよ!」
お姫様は絶望に顔を歪め、涙を流しお妃様から後ずさりました。
「それは違うわ、貴女が産まれ私はとても幸せであったの。それはこの先の希望の光、貴女さえ幸せであれば私は闇の中であっても耐えられると思えるほどに。だからこそ、貴女は今日この時を胸に秘め、光の中で幸せを掴んで欲しいのです。」
お妃様はそれはそれはとても幸せそうな笑みを浮かべ、お姫様をそっと抱きしめました。
けれどもその腕から伝わる熱は、以前のように暖かさはなく驚く程に冷たいものでした。
その腕の中で消えていくお妃様の想い出の欠片にお姫様は声もなく、涙を流すしかありませんでした。
それと同時に、王様への赦すことの出来ぬ想いを抱き始めておりました。
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