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突然の出会いにドキドキ!
しおりを挟む私は重い足取りでお堂へ向かい、お賽銭を入れてお参りをした。ちなみにここはお寺なので二礼二拍手一礼ではなく、静かに合掌する。
そして寺務所で御朱印をいただき、七福神巡りを続ける。
これくらいのことで負けるもんか! きっとこれは神様や仏様からの試練なんだ。乗り越えれば良いことがきっとある。それに今以上に悪いことなんて、そうそう続かない。
私はそう自分に言い聞かせ、寿老人(神)が祀られている次の四除寺へ向かって歩き出す。距離は約800メートルだ。
――が、私の災難は続いた。
四除寺では階段を踏み外し、危うくスネを強打しそうになってしまった。さらに恵比寿を祀る五功神社では御朱印の初穂料のお釣りを間違えられ、弁財天を祀る六波羅神宮では境内にある池にハンカチを落としてしまう。
こうして最後に辿り着いたのが、福禄寿を祀る七界神社。お参りを済ませて御朱印をいただけば、ようやく七福神巡りも終わりとなる。
もちろん、これだけ災難が続けばここでもまた何かが起きそうな予感がしてならない。だから私はビクビクしながら参拝をする。ただ、結果的にその不安はなぜか杞憂に終わり、社務所で御朱印をいただくまで平穏に時が過ぎていったのだった。
手の中にある色紙には、宝船を中心に七福神の御朱印が揃っている。苦労して集めただけあって、過去に色々な寺社を巡った時よりも感動が大きいような気がする。
「やったぁ……」
私は万感の想いを噛みしめつつ色紙を優しく抱きしめる。
自宅へ戻ったら玄関へ飾って毎日拝もう。あ、まずはコートをクリーニングに出さないといけないけど。
私はホッと息を吐き、自宅へ帰ろうとゆっくり歩き出す。
――その時のことだった。
「あっ!」
不意に突風が吹いてきて帽子が飛ばされてしまい、ストレートのロングの黒髪が激しくなびく。咄嗟に手を伸ばしても届かず、虚しく空を切るだけ。一先神社で七福神巡りを始めた時にはわずかな風さえ吹いていなかったというのに……。
空高く舞い上がった帽子は遠くへ飛ばされ、程なくゆっくりと落ちてくる。ただ、急いで拾わないとさらにどこかへ飛ばされてしまうかもしれない。なのにこの痛む足では走れない。
やっぱり災難は終わっていなかったのだ。
ささやかな幸せに浸っている中から不幸のどん底へたたき落とされ、思わず泣きそうになる。
私は必死に帽子の方へと歩いていく。どうか辿り着くまで飛ばされないでいてと祈りながら足を動かす。でも無情にもまた強い風が吹いてきて――。
「っと、危ない危ない」
まさに帽子が飛ばされる寸前、誰かが私の帽子を拾ってくれた。その人は軽く帽子を叩いて砂埃を落とすと、それを持って私の方へ歩み寄ってくる。
そしてその顔を見た瞬間、私は心臓がドキッと高鳴って全身が徐々に熱くなっていく。
「あれ? もしかして安楽か?」
帽子を拾ってくれたのは、なんとクラスメイトの発田光雲くんだった。彼は温かそうな茶色のモコモコジャケットにクリーム色のマフラー、藍色のジーンズを身につけている。
発田くんはサッカー部に所属していて、学業成績は中の下くらい。性格は明るくて優しくて、ルックスは結構カッコいい。
実は私が密かに想っている相手なんだよね。まさかこんな形で出逢えるなんて……。
発田くんは目の前まで駆け寄ってくると、帽子を私の頭へ無造作に被せてくる。その際に彼の指がかすかに私の髪に触れ、私は照れくさくて瞬時に顔全体が熱くなる。
「安楽、帽子を飛ばされないように気をつけろよ」
「あ……う、うんっ! 拾ってくれてアリガトっ!」
「お前、こんなところで何してるんだ? って、その色紙、もしかして七福神巡りか?」
「そ、そうだよ……。ちょうど終わったところ」
「そりゃ、そうだろうな。七界神社がゴール地点だからな。へぇ、安楽って信心深いんだ」
発田くんは感心したように述べ、さわやかな笑みを浮かべる。
当然、それをこんな至近距離で見ているのだから、もう胸がキュンキュンして苦しくなってくる。きっと顔は真っ赤になっているだろうな。変に思われてないかな?
私はせめて態度だけは必死に平静を装って答える。
「うーん、どうなのかな? 私、御朱印集めが趣味なだけだから」
「おっ! だったら隣の八善寺にも寄っていったらどうだ? 御朱印を受け付けてるぞ」
「そうなのっ? じゃ、これも何かのご縁だからいただいていこうかな」
「そうしろそうしろ! 案内してやるよ!」
なぜか大喜びしながら私を先導する発田くん。でもその時、私の歩く様子を見て彼の表情が瞬時に曇る。その視線の先にあるのは私の右足だ。
ちょっと引きずったように歩いていたから、違和感を覚えたのかな?
「……お前、足、どうした?」
「あ、七福神巡りの途中で足首を捻っちゃったみたいで。少し痛むけど歩けるから大丈夫」
「見せてみろ」
発田くんは真顔になってすかさずしゃがみ、私の右足首を触らずにじっくりと観察する。
「少し腫れてるな。うちに湿布があるから貼ってやる。それとテーピングもな。俺や部の連中も練習中によくやるから慣れてるんだ」
「えっ? い、いいよ、大丈夫だよ」
「酷くなったらどうするんだ! 素直に治療されておけ!」
「あっ! ちょっ!?」
戸惑う私を他所に、発田くんは有無を言わさず私に肩を貸して歩き始めた。彼のガッシリとした筋肉と力強さ、肌の温かさが伝わってくる。
なにより私の顔のすぐ横には凛々しい彼の顔。しかも息がかかりそうなくらいに超接近しちゃってるっ!
――ヤバイヤバイヤバイヤバイッ!
私の顔も全身もインフルエンザにかかったみたいに熱い。照れくさすぎて何も話せない。
でもこの時間が永遠に続いてくれたらとも思ってしまう。もちろん、彼は私の怪我を心配してくれているわけだから、不謹慎かもしれないけど。
(つづく……)
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