恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川

文字の大きさ
52 / 258

階段が13段のアパート

 島田秀平の有名な話である。
 ある日後輩の芸人がアパートを新しく借りることにしたらしい。
 下北沢でアパートがわずか8200円、その値段を聞いた瞬間に誰もが思った。その物件はやばい、と。
 近年の不動産屋は問題物件はそれを説明しなければならない義務があるので、その不動産屋もその後輩の芸人Aさんに説明したそうだ。
 「どういうわけかここは誰も2週間もたずに出て行ってしまう物件なんです。一人だけ2週間持ったかたは13日目に死体で発見されました………」
 明らかに本物である。しかも死んだ住人の死因は窒息死であったという。
 首をつったわけでもないのになぜ窒息したのか、その原因は不明なままであったらしい。

 「お前本当に大丈夫なの?」
 「大丈夫ですよ。楽しみにしていてください」

 芸人根性とよぶべきか、Aさんはいいネタになるくらいに考えているらしかった。

 翌日、Aさんから電話がかかってきた。
 1日目の夜、ふとAさんは目を覚ました。時刻は午前2時22分。子供たちの可愛い声で「わーっ」という声が階下で響いたかと思うとコツンと物音がしたという。
 「島田さん、やっぱりやばいですわ」
 そういいつつもAさんはその部屋に住み続けた。
 なんといってもAさんは貧乏で引っ越し費用をねん出するのは難しかったのだ。
 その後島田が不動産屋に聞いたところでは、どうやら階段が13段のアパートで階段をあがったすぐ角の201号室は例外なく問題物件であるという。
 もしも皆さんがアパートに住んでいるのであれば確認してみて欲しい。
 再びAさんからの電話が島田にかかってきたのは13日目の朝だった。
 
 「やばいです。俺もこれ以上は無理だから今日引っ越そうと思うんですが手伝ってもらえませんか?」
 「おいどうした?何があった?」
 
 Aさんの語るところによれば、毎日午前2時22分になぜか目を覚ます日が続いていたという。
 しかし子供のにぎやかな声が聞こえるだけで危険を感じさせるものではなかったようだ。
 だが気になるのはいつも最後にコツンと聞こえる音だった。
 しかも毎日一つづつ音が増えていく。Aさんはようやくひとつの推理に思い当った。
 そうか、毎日一段登ってくるんだ。ということは2週間たつとあいつらが登り切って入ってきちゃうんだ。だからみんな2週間持たずに出て行ってしまったんだ……。
 
 「それでも子供の声だしそれほどやばいことにはならないんじゃないか、って思ってたんです。でも昨夜は子供じゃなくて、明らかに大人の声でうなるような声がしてものすごい音でドドドドド!と階段を上がってきたかと
思うと玄関のドアがドーン!ドーン!って叩かれるんですよ。今夜あいつらが来たらどんなことになるかわからないんでお願いします!」
 「わかった。みんなにも声をかけておくから急げ!」

 これはやばいと思った島田は仲間たちに神社やお寺からお札やお守りを持ってこい、それを貼って早いとこ引っ越し終わらそう、と声をかけた。
 しかし皆さんも引っ越しをした人はわかると思うが、なんの準備もなく一日で引っ越しを終えるのは至難の業である。
 大勢の芸人仲間を動員したが引っ越しは終わらず時刻が午後7時半を回ろうとしたそのときだった。
 バン、という大きな音がしたかと思うと電気が落ちて室内がまっくらになった。
 ブレーカーを上げたが電源は戻らなかった。そのうえAさんの苦しそうなうめき声が聞こえ始める。

 「おい、大丈夫か?A!」

 そう聞かれてもAさんは苦しそうにうめくだけである。
 とにかく明るいところに行こう、とAさんを引きずるようにして仲間たちは屋外の街灯の下に向かった。
 街灯の下ではAさんが首もとを抑えるようにしてうずくまっていた。

 「大丈夫か?A?」

 それでも苦しそうにしたまま答えないAの様子に島田たちは慌てて救急車を呼んだ。
 どんどんAさんの顔色は紫色になっていき、救急車が到着したころにはすでに意識がなかったという
 幸い消防署が近かったせいか5分程度で救急車がついたからよいようなものの、もう少し到着が遅ければAさんの命はなかったらしい。
 なぜならAさんが苦しんでいたのは喉の奥にあるものが詰まっていたからなのだ。
 喉につまっていたそれは物凄い圧力で圧縮されたお札とお守りであった。

 2週間後窒息死していた前の住人、喉がつまって九死に一生を得たAさん。
 なぜそんな事態に陥ったか合理的な説明はできない。
 ただ、まるで石のようにギュッと圧縮されたお札とお守りは確かに存在し、今もAさんが大切に所有しているという……。
感想 56

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話