競輪師匠の躾け方

熊次郎

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弟子を守る

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『どうする?どうする?どうしたらいい?
あ、何を脅されてるか聞くの忘れた。金か?八百長か?でも金持ちって言ってたからな、、、。ええい、もう当たって砕けろ!土下座でもなんでもやってやる!』

想像もつかないピンチを乗り越える考えも思いつかず、俺は独り言を呟きながらホテルに着いた。
最近出来たラグジュアリー系リゾートホテル。高過ぎて泊まれないと、競輪仲間で有名だ。

ホテルの部屋に向かおうとするとホテルマンに止められた。
ふと周りを見るとゴージャスな作り、高そうな服を着た外人がウロウロいる。自分のジャージ姿が恥ずかしい。
相手から聞いた部屋番号と会う約束してるとだけホテルマンに伝えると、コンシェルジュデスクに行って何やら話をしている。

(通報されて、会えずに警察に連れてかれるかも、、、。)
ドキドキしているとホテルマンがやってきてエレベーターに案内してくれた。カードをかざし、最上階のボタンを押して俺を見送る。

スケルトンのエレベーターは星空に近づくように最上階に向かう。
(どんな奴だ?どう話を持っていこう?俺、バカだからちゃんと話せるかな、、、。)
混乱が頭を駆け巡る。無性に喉が渇き、脇に嫌な汗を感じながら最上階に着いた。

最上階に着くとイヤフォンマイクをつけたホテルマンが部屋に案内にしてくれた。扉を開けると見たことのないゴージャスな廊下が奥の部屋へと続いている。

『すご、、、、。』
奥に前面が大きな窓の部屋が見える。
恐る恐るキョロキョロ周りを見ながら部屋に進むと、見たこともない豪華なスィートルームだった。

『ひぇー、、、。』
周りの家具や全面の夜景をキョロキョロ見ながら部屋に進んだ。左右にいくつも部屋があり、トレーニングルーム、ガラスの部屋にはデカいジャグジー。俺の家より広い部屋の作りに圧倒されていた。

『いらっしゃい。』
背後から声をかけられ、我に帰った。
(そうだ、ホテル見学に来たんじゃない。)
そう思い、振り返ると大きなガラス張りのダイニングテーブルに座った小洒落た中年男と横にプロレスラーのようなゴツい男が立っていた。

『お前か!大悟を脅してるのは!もうやめてくれ!何が目的なんだ!』
俺はまず一発かました。こう言う時は初めが肝心だからだ。

『挨拶もなしでいなり怒鳴るんやない。せやけど、昔と威勢の良さはあんま変わってへんな。キング。』
『えっ。』
久々に呼ばれるキングのあだ名。俺のことを知っていることに驚いた。知り合いかとまじまじと男をみたが知らない顔だった。

『いや、知り合いちゃうで。俺が一方的にめちゃめちゃファンやってん。谷のキング。昔、ごっつい大活躍した時の人やったやんけ。』

『えっ?』
(俺の昔のファン?それなら話がうまくいくかも。)

『ま、お前の用件はよう分かってるから、焦ることない。まずは喉を潤そうや。おい、シャンパンを。』
中年男がゴツい男に指示をすると、ドンペリゴールドが何本も出てきた。昔、絶頂期時代によく飲んでいたシャンパン。

『キング、これ好きやろ?ま、飲んでじっくり話そうや。』
『あ、おう。』

(俺のことをどこまで知ってるんだ?まずは相手のことを知ろう。)
そう策略を考えながらも目の前の冷えた好物のシャンパンを喉が欲していた。
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