托卵された公爵

はまち

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情報を集めるために店を開く。架空の商人、オーナー、後ろ盾ではなく、お酒を卸しているのが公爵家。その程度にして公爵家が援助をしている孤児院の人間を雇い、孤児の自立を促すように昼は食事中心。冒険者向けの大衆食堂で夜は情報交換も出来る酒場。娼婦もいるし、貴族対応の出来る別室、宿も併設している。という複合施設にしてみようかと思う。
 高級娼館併設の酒場。お酒は公爵家から仕入れているので品質が保証されている。希望をまとめたものをラファエルに渡して黒烏の人間や娼婦も邸の執務室で見せる。公爵家が国の裏側、暗部を押さえているのは大きい。

「姫様の言いたいことはわかるが、金かかるぞ?」
「お金ならあるから。似たような建物ある?利益は従業員に還元でいいの。こちらとしては店運営が赤字にならない程度でいいし。欲しいのは情報だからそれさえ守ってくれるなら娼婦や従業員にお金回していいわ。昼は利益率を低めに設定しておいしくてお腹いっぱいになる食堂にして夜は単価高めでお酒も飲めて娼婦が給仕してくれてお喋りしてくれる。くらいかな??」
「……分かりました。ではすぐに準備に掛からせて頂きます。公爵家にはどのような情報を?」
「全て。精査はこちらでするから噂話などをこまめに報告して。必要可否はラファエル達が精査するから。」

 人任せ。ラファエルが吐血しそうではあるが裏側のことはそっちで人を回して良いように運営してくれたらいい。

「公爵家の看板を出さなくて良いのですか?ここまでいくと慈善事業になると思うのですが。」
「我が家にとって都合の良い配分を決めているだけで取れるところから取るようにしているから慈善ではなく偽善だから。私の要望はそれくらいだから細かいことはラファエルと詰めて置いて。お金だけなら出すし、たまに視察するから。庶民のことは詳しくないからそちらの決め事に則って違法性がないようにしてくれたらいいわ。」

 仮面をつけて声を変えて面会をしたがこういうのは疲れる。仮面を外して天井を見上げる。ラファエルは私の言ったことをするため外に出るだろう。

「姫様、ラファエル様が外に出るとのことですが……」
「許可するからお父様に出す報告書も作るように伝えておいて。」

 私はして欲しいことを指示するだけ。欲しいものを伝えたし、お金の利益が欲しいわけでもない。それにお酒を卸すだけで利益は出せる。

「エメル、変装して認識阻害もして城下を見たいってわがままは対応できる?」
「私が城下のことや庶民の常識に疎いので本日すぐには対応できません。騎士に声をかけますのでいつ頃に出かける希望とかございますか?」
「急いでないけれど天気の良い日がいいかな。」

 エメルが調整してアンジュと護衛騎士2人が着くように調整したようだ。

「姫様、とりあえず、2人を本日お借りしてもよろしいですか?」
「???」
「この格好で護衛につかせるには浮きますから。ちょっと服を買いに行くだけです。」
「あぁ、確かに。メイド服や従僕の服しかないから。屋敷の外にお使いに出すかもしれないから適当に買って来て。」

 護衛騎士とはいえ貴族の令息。城下での買い物の仕方や歩き方を教えたりするのだろう。
 珍しく騎士だけが護衛に部屋についている。昔は素顔を晒していたのに仮面をつけて生活をしている。イクスが別邸にいることも原因の一つだが、彼らは別に気にしていない。公爵家の姫は結婚まで基本仮面を付けて素顔を隠すもの。その認識が当たり前だからだ。

「2人ともなんだか疲れてない?」

 騎士たちと外に出るための服を買いに出たのは知っているが、帰ってきた2人は疲れきっていた。表情が。疲れている。体力は数日間飲まず食わずで走り続けることができるはずなんだけれど。

「それは……ブティックではなく服飾ギルドで姫様の護衛として様々な衣装が必要と伝えたところずっと試着をさせられていましたから。」
「なるほど。私が見てないのに着せ替えさせられたら疲れるか。精神的に。2人ともお疲れ様。」

 騎士を下げて仮面を外してヨシヨシと頭を撫でる。下がっていいよ。指示をすると頭を下げて下がった。本当に疲れているのだろう。ヴェロニカは2人の行動や何を勉強したのか報告書を読む。今度のお出かけは楽しいことになりそうだ。楽しみにしながら買ったものを見ると結構な枚数を買わされたようだ。

   2人を連れて出かけるのが楽しみだ。



「着せ替え人形にするのが流行るの……わかる気がする。」

   顔がいいから色々着せるのが楽しい。羞恥心もないのでお互いに目が届かない箇所のボタンを止めたりリボンやタイの調整をし合っている。

「そうですか?」
「姫様の美しさが圧倒的ですので姫様のお召かえの方が楽しいのでは?」
「私は自分のことに興味がないの。2人が着飾るのは見ていて楽しいかも。それが仕事じゃないから命じることはしないけれど。」

   これからも時々しようか……
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