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ミハイルは客人というより急患扱いだ。様子見のためにヴェロニカは部屋に通って食べて寝ているだけの青年を眺める。骨と皮になる程に飢えていたのか……この顔なら娼館で客を採ることも出来るだろう。
商人の所でもあったはずだ。読み書き計算、礼儀作法も出来れば仕事は腐るほどある。そんなに仕事を選り好みしていたのだろうか。
「姫様、仕分けは終わっておりますので確認を。」
「わかった。」
餓死寸前の人間を助ける方法なんて1つしかない。しっかりと食べさせて体力を回復させるだけ。ミハイルは兄達と同学年なのか。元王族……今は平民だし、母親は娼婦なのだから別に気を使う必要は無い。
「ラファエル、今ウチの騎士に敬語使うの抵抗ある?」
「???あぁ、干物さんのことですか?姫様、敬意を持てば姫様でも自然と頭が下がります。口調も改めます。今の所姫様が尊敬できる人間が少ない建前しかないだけです。姫様は姫様のままで大丈夫なのですよ。」
「お兄様達が帰ってくるかもしれないから用意しておいて。」
兄は本当に直ぐに返ってきた。
「馬車やっぱり不便だな……」
「仕方ない……使役は外に出てないんだし。」
領地だと移動する時馬車ではないらしい。身長凄い伸びてる。仮面を外して兄を見上げると兄2人に可愛い。と、抱き締められる。
「お兄様達達、領地での仕事は宜しいのですか?」
「おじ上達にずるいとかお土産押し付けられる前に来たから。」
「おじ上達の嫉妬が凄まじいくらいでまだまだ下っ端だからね。」
下っ端なのか。一応直系なのに。
「お爺様が絵画を部屋に飾って拝んでる。」
「あそこだけ変な宗教部屋になってるよね。仕方ないけど。」
ドレスの絵がそんなことになっているのか。私は王都から出られないし、祖父も歳だからとあまり動けない。色々理由があってそうなっている。
「それにしてもアベリアの血統主義も面白いよね。」
「確かに。金髪金目が至上とか言いながらね。」
こっちを見る。髪に指を通されたり頬をモチモチと撫でられる。
「あんなのよりウチの妹の方が優秀で美人だ。」
あんなの。我が家の王家に対する評価は大体こんなものだ。公爵家は王家の親類になるので腐っても王家を倒してその地位に付けなくもないが我が家はバカにするだけ。
絶対に国王になろうとはしない。出す気もない。
領地は広大では無いけれど肥沃な土地で山と海があり、領地の入口が絞られて山を超えたら聖王国という立地条件だけで十分なのだろう。聖王国と公爵領を山を抜いて繋ぐことも過去に一度考えたらしいが、魔物の強さや安全面、国防という観点で周囲から大反対を受けて頓挫している。山越はさらに難しい天然の城塞である。標高が高すぎる。
「それで可愛い妹はどうしてお兄様に会いたくなったのかな?」
「しかも意味深に一言速達っていうのがね。」
「それは部屋に来ていただければわかるかと思います。」
歩きながら今別邸には聖王国からの留学生が逗留していることや、王族が相変わらず残念であることを伝えた。
「公爵領はヴェロニカが来ても楽しめると思う。あのことを解禁したから色々と研究者たちが好き勝手に研究を盛んに始めたから。いいんじゃないかな。」
「騎士団の方も彼らが増えたから練習相手とか、斥候を頼んだりと魔物討伐が捗っているから重用してる。」
「それ、嫌がることを押し付けてません???」
「そんなことはないよ。人数は多くないし。それに奥様たちの反発が強い。」
なんのことだろう。造形的に綺麗に作る方が簡単で、試作型でも引き取りたい方が多く、そんな美形を率先して危険なことばかりさせるなら騎士団が鍛えて逆に守るくらいになれ。という猛抗議があるらしい……顔に傷でも入れたものなら旦那様がネチネチと締め上げられてみんな仲良く任務に当たっているらしい。
当の人造人間本人はすぐ治るのに。とか、思っているらしいが、口を挟んだらさらに大変なことになると同胞から聞いているので黙っているらしい。
「僕たちもあとで聖王国の宰相の息子に会っておく??」
「まぁ、遠い親戚みたいなものだし。会っても良いだろう。」
その辺は自由にしてもらっていいけれど。そう思いながら肝心の部屋に案内する。ミハイルは眠っているだろうけれど……
「最近人を拾ったのですが、お父様からお兄様に連絡をした方がいいだろうとおっしゃったので。」
中に入るとベッドで姿勢を起こしたミハイルが本を呼んでいた。メイドたちに言えば大体自由にしていい。とメイドには指示をしていたが元気になっているのだろうか。
暇だから読書をし始めたのか。
相変わらず骨と皮状態だが、血色は良くなっているし、少しずつ見た目が整っているだろうか。
「姫様と……」
「ヴェロニカ、なんでへなちょこがウチにいるんだい?」
「へなちょこが骨と皮になっているし……」
うちの兄2人とミハイルの関係性はどういうものなのだ。
「私は仕事があるのでお兄様はゆっくりしてくださいね。」
「うん。そうするけれど、妹や父上はどうするつもりなの?」
「お父様は拾った私に一任するそうです。私は本人次第ですが、穀潰しは不要だという考えです。どこも行く所がないなら私が新しく事業をするのでそこで店長を任せる予定です。そのくらいしか決めてないので、お兄様たちがお持ち帰りするなら止めません。」
商人の所でもあったはずだ。読み書き計算、礼儀作法も出来れば仕事は腐るほどある。そんなに仕事を選り好みしていたのだろうか。
「姫様、仕分けは終わっておりますので確認を。」
「わかった。」
餓死寸前の人間を助ける方法なんて1つしかない。しっかりと食べさせて体力を回復させるだけ。ミハイルは兄達と同学年なのか。元王族……今は平民だし、母親は娼婦なのだから別に気を使う必要は無い。
「ラファエル、今ウチの騎士に敬語使うの抵抗ある?」
「???あぁ、干物さんのことですか?姫様、敬意を持てば姫様でも自然と頭が下がります。口調も改めます。今の所姫様が尊敬できる人間が少ない建前しかないだけです。姫様は姫様のままで大丈夫なのですよ。」
「お兄様達が帰ってくるかもしれないから用意しておいて。」
兄は本当に直ぐに返ってきた。
「馬車やっぱり不便だな……」
「仕方ない……使役は外に出てないんだし。」
領地だと移動する時馬車ではないらしい。身長凄い伸びてる。仮面を外して兄を見上げると兄2人に可愛い。と、抱き締められる。
「お兄様達達、領地での仕事は宜しいのですか?」
「おじ上達にずるいとかお土産押し付けられる前に来たから。」
「おじ上達の嫉妬が凄まじいくらいでまだまだ下っ端だからね。」
下っ端なのか。一応直系なのに。
「お爺様が絵画を部屋に飾って拝んでる。」
「あそこだけ変な宗教部屋になってるよね。仕方ないけど。」
ドレスの絵がそんなことになっているのか。私は王都から出られないし、祖父も歳だからとあまり動けない。色々理由があってそうなっている。
「それにしてもアベリアの血統主義も面白いよね。」
「確かに。金髪金目が至上とか言いながらね。」
こっちを見る。髪に指を通されたり頬をモチモチと撫でられる。
「あんなのよりウチの妹の方が優秀で美人だ。」
あんなの。我が家の王家に対する評価は大体こんなものだ。公爵家は王家の親類になるので腐っても王家を倒してその地位に付けなくもないが我が家はバカにするだけ。
絶対に国王になろうとはしない。出す気もない。
領地は広大では無いけれど肥沃な土地で山と海があり、領地の入口が絞られて山を超えたら聖王国という立地条件だけで十分なのだろう。聖王国と公爵領を山を抜いて繋ぐことも過去に一度考えたらしいが、魔物の強さや安全面、国防という観点で周囲から大反対を受けて頓挫している。山越はさらに難しい天然の城塞である。標高が高すぎる。
「それで可愛い妹はどうしてお兄様に会いたくなったのかな?」
「しかも意味深に一言速達っていうのがね。」
「それは部屋に来ていただければわかるかと思います。」
歩きながら今別邸には聖王国からの留学生が逗留していることや、王族が相変わらず残念であることを伝えた。
「公爵領はヴェロニカが来ても楽しめると思う。あのことを解禁したから色々と研究者たちが好き勝手に研究を盛んに始めたから。いいんじゃないかな。」
「騎士団の方も彼らが増えたから練習相手とか、斥候を頼んだりと魔物討伐が捗っているから重用してる。」
「それ、嫌がることを押し付けてません???」
「そんなことはないよ。人数は多くないし。それに奥様たちの反発が強い。」
なんのことだろう。造形的に綺麗に作る方が簡単で、試作型でも引き取りたい方が多く、そんな美形を率先して危険なことばかりさせるなら騎士団が鍛えて逆に守るくらいになれ。という猛抗議があるらしい……顔に傷でも入れたものなら旦那様がネチネチと締め上げられてみんな仲良く任務に当たっているらしい。
当の人造人間本人はすぐ治るのに。とか、思っているらしいが、口を挟んだらさらに大変なことになると同胞から聞いているので黙っているらしい。
「僕たちもあとで聖王国の宰相の息子に会っておく??」
「まぁ、遠い親戚みたいなものだし。会っても良いだろう。」
その辺は自由にしてもらっていいけれど。そう思いながら肝心の部屋に案内する。ミハイルは眠っているだろうけれど……
「最近人を拾ったのですが、お父様からお兄様に連絡をした方がいいだろうとおっしゃったので。」
中に入るとベッドで姿勢を起こしたミハイルが本を呼んでいた。メイドたちに言えば大体自由にしていい。とメイドには指示をしていたが元気になっているのだろうか。
暇だから読書をし始めたのか。
相変わらず骨と皮状態だが、血色は良くなっているし、少しずつ見た目が整っているだろうか。
「姫様と……」
「ヴェロニカ、なんでへなちょこがウチにいるんだい?」
「へなちょこが骨と皮になっているし……」
うちの兄2人とミハイルの関係性はどういうものなのだ。
「私は仕事があるのでお兄様はゆっくりしてくださいね。」
「うん。そうするけれど、妹や父上はどうするつもりなの?」
「お父様は拾った私に一任するそうです。私は本人次第ですが、穀潰しは不要だという考えです。どこも行く所がないなら私が新しく事業をするのでそこで店長を任せる予定です。そのくらいしか決めてないので、お兄様たちがお持ち帰りするなら止めません。」
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