托卵された公爵

はまち

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 リオン、デオンは妹が部屋から出た背中を見送って側近達がお茶を用意するために動いているを見ながらミハイルのベッドに腰掛ける。何があったのかは聞いた方がよさそうだ。

「何があったの?」
「路地裏生活でもそうはならないだろ。読み書き、礼儀作法があれば商家で帳簿つけるとか出来ただろう?」
「……全部話す方がいい?サクッとして置きたいんだけど。」
「どっちでもいいよ。こっちで調べようと思えばどうにでもできる。」
「えー……2人なら話聞きながら勝手に余計なことまで調べそう。まぁ、へなちょこと呼ばれるのは良いとして……」

 母親は娼婦だし、地方出身で王都に知り合いは皆無。それでも長子だからとすり寄っていた貴族たちは確かにいた。ポルクスとカストロが生まれても学業成績とかでそれなりに良い成績を残して悪い噂もない自分を援助するという貴族はちらほらいたが、徐々に双子が育つ過程で魔力や色のことで離れているのもなんとなく感じていたが品行方正よければ評価されると思っていた。だが、
 それは甘かった。
 嵌められて叩き出されて高級娼館に売り払われていた。
 男娼なんてするつもりはなかったし、とび出して下町での息抜き方とか商人になる方法なんて分からなかったし、盗みや詐欺なんて出来ない性格だからなんとか食い繋いでいたが上手くいかなくなって餓死寸前のところを拾われた。と、さっくり説明した。

「……いや、うん。まぁ、勉強しかしてなくて社会経験なかったらそうなりそうだけれど。」
「流石に自分より年下が死にそうだったから蓄えを渡したりしてたら手持ちが無くなってね。」
「……そういう性格なのは知ってたけど。ミハイル、どうすんの。妹のやとわれ店長するの?同級生のよしみで公爵領で雑用係で雇っても良いけれど。こっちも人手不足だし。」

 ミハイルはうーん。と首を傾げる。
「シュヴァリエ公女の雇われ店長って私がしても良い仕事なのかな。それに公爵領は貴族が入ることに制限欠けているのに、私が平民になったからと言って入れるのか?」
「そこは私たちが書類でちゃんと決済すれば良いだけだし、妹と父上の印章使えば一発だし。まぁ、その体じゃ役立たずだし、時間はかかるだろうけれど、好きにすれば?」
「ウチってそのへん結構寛容というか、すべきことをちゃんとしていたら自由というか。ウチにそれなりに利用されて良いならいても良いって感じ??」

 リオンとデオンは簡単に利用するとか言ってくるが、友人としてなのか、貴族としてなのか分からないが嘘はつかないし、後になって親切で言っていた。と、分かることが多い。

「妹に近づく男は全員殺すとか言っていた2人とは思えないなぁ。」
「色目を使う男は全員殺す気だけど?」
「従業員とかまで制限させたら妹の迷惑でしかないだろう?」
「2人からしたら私がここにいて公女の従業員店長をしても良いと???」

 学園で一緒にいたから忌憚ない意見をくれるだろう。2人は少し考えて明日返事する。と、出て行った。これは本当に考えてくれるようだ。勉強しかできないから考えてくれるのだと思う。多分。たまに嘘つかれて痛い目に遭ったけれど、善意がひねくれているだけで悪意はない2人だ。




「ヴェロニカ、本当にミハイル従業員というか、店長にする気?」
「はい、企画書と客層とか、目的。これを見てお兄様たちが 向いていると思ったらそうするつもり。他に本人がしたいことがあるならそれでもいいと思っています。」

 企画書をラファエルから渡してもらう。兄達は目を通してうーん。と首を傾げる。

「ヴェロニカ、ミハイルは勉強はできるが社会経験が皆無なんだよ。」
「見たいですね。行動歴を大雑把に洗ったらガバガバな社会経験で驚きました。なので、従業員をしつつ店長をしてもらおうかと。花街の店長くらいなら簡単でしょう。帳簿と情報整理くらいだし、行動的には問題ないから従業員の体調とか気にしてくれそうだから……社会経験は屋敷でリハビリ兼ねて執事の仕事に同伴させたら少しずつ覚えると思っています。それにすぐに店も開店しませんからその間に商業関係を叩き込むだけの教材などもうちにあるし……お兄様たちは向いてないという判断でしょうか?」
「魔力は結構あるし、元とはいえアベイルを手元に置いておくのはありだと思う。公爵領で雑用でも良いけれど、それよりは王都で動きを把握できる方が好きなタイミングで使えるから。」
「友達ではあるけれど、妹のために使える駒と思えるかといえば是だし。父上も手元ですぐに切れるカード落ちとして置いておくことには賛成すると思う。」

 それならミハイルは私の作るお店の店長をしてもらう。それに決まった。社会経験ない。触れる機会も皆無で外に放り出されるとは。それなのに盗みなども行わないというのが……きちんとと利益を計算できるようになってもらわないといけない。

「勉強が出来て善性の塊だから悪いやつじゃないよ。」
「そうそう、平和主義者というより、ただの良い人だから。からかい過ぎなかったら慈善事業で自分の財布を溶かすほどの善人だからちゃんと色々教えたら大丈夫だ。」

 少し心配になったが、勉強できるからしてほしいことをきちんと教えたら損得勘定もできる人らしい。それならラファエルに任せるべきだろうか。と、見上げると笑顔が固まっていた。

「姫様?」
「ラファエル、諸々のことをお願いね。彼を店長予定にするから読むべき本を押し付けて回復する頃にはある程度の商業的知識が入っているようにしておいて。」
「……それくらいなら。家庭教師を命じられるかと思いました。」
「そこまでは言わないけれど、帳簿関係とか適当に渡しておけば覚えるでしょう?それにラファエルに押し付けるには仕事が多すぎるのも理解しているし。」

 一応どれだけの仕事を任せているか理解している。
   無理だ。それくらい私でもわかる。
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