出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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58トイレ休憩

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 一度身支度を整えるためにヘラルドから離れて手洗いも済ませて一息をつく。
お金の話はよくないだろうけれど、見積もりは出していないし、良いお値段なのは貴族なのだから当然のことだろうけれど、ヘラルド様にくっつくのでない嫌悪?憎悪?とりあえずあまりよろしくない目線を向けられていた。口紅を引き直して汗で少し崩れたところを修復しておく。

「フィル女男爵ですよね?」

 振り返ると知らない女性が複数名。メイドも控えているけれど、うーん。これはヘラルド様関連の方なのか、双子の方なのか。お年頃にも見えるから双子狙いなのだろうか。

「貴女、どれだけ殿方を誘惑したら気が済みますの?」
「????仕事上のお付き合いですが。」

ヘラルド様の愛人役も含めて全員仕事でのお付き合いだ。間違っていない。

「ヴィルフリート様やギルバート様、ヘラルド様、レオンハルト様とまでお仕事と仰いますか?」
「えぇ。皆様お仕事上のお付き合いで仲良くしていただいております。」

 むしろ仕事以上の付き合いはロズウェル侯爵家くらいだ。基本は仕事で新作を先に見たいとかそんな話くらいだし。それよりもだ。誰だ。この人たち。身だしなみからして貴族、それなりに高位の家格の御令嬢なのだろう。それくらいしかわからない。発注書には顧客の家名や情報も記載されていない。それはギルドに任せて忖度した順番にしてもらっており、直接注文を聞くことはほとんどしない。エリザベス様やカノン様達なら届いたものに対してお金を追加で支払うから少し修正をして欲しいとか、新作のデザインの石を足して欲しいとかそういうリクエストはあるけれど、個人のご要望をあって話を聞いたことはほとんどない。それにロズウェル侯爵家の勉強でも爵位に応じた家の数やこれくらいの場所を領地にしている。程度のぽやんとした情報だけで家名等は仕事の邪魔になるだろうから知る必要がない。気が向いたら調べるなりヘラルド様から習うといいと言うほどに情報が制限されている。変に細かい情報を知りすぎて忖度を更にしてしまうことがないように自己防衛のためでもある。

「貴女、男爵に上がったばかりの新参者がステーシア侯爵令嬢であるヴィーラ様に対して失礼ではなくて???」

 何がどう失礼なのだ???上の人と思しいから話終わるまで口は開いていない。
話はちゃんと聞いている。それに親の威光を使うのもいいだろうけれど、それが貴族のやり方なのも知っている。知っているけれど、個人資産という話であれば私の方が多分持っているし稼いでいるし、生活力はあるぞ。国が今傾いても生き残るのは私だと思う。
 とか、言ったら揉めるだろうし、こういうことはヘラルド様の仕事なのに離れた瞬間に声をかけるようにしてきたのだから計算というよりもそうするつもりでいたのだろう。私が納品した髪飾りやネックレスをつけているようだけれど…今注文にあった気がする。
 それを口にするのも馬鹿らしいので取り巻き御令嬢達が色々貴族らしい表現で嫌味をたくさん言ってくれているのだっけれどもとりあえず笑顔で嫌味を聞いておく。

「はぁ。それでどうしろと?お友達ですと紹介すればいいんですか?名前も知りませんが。」
「名前を知らない!?!?!」
「ヘラルド様が探しに来られる前に会場に戻ります。そのヘラルド様に御用でしたらご一緒に如何ですか?私は起きた事を正直にお話ししますけれど。失礼いたします。私に何か失礼がございましたら教育をして下さったロズウェル侯爵家のユーリ様かヘラルド様にお願いいたします。」

 付き合っているのもアホらしい。ミカエラは頭を下げてスタスタと会場に戻ることにした。とりあえずヴィーラ・ステーシア様とそのお友達が絡んできたことは報告しよう。それくらいしても許されるはずだしこれからどうすべきも指示を仰がないと私はその辺のことをまっったく知らないので聞いてからじゃないとさらに何か面倒ごとになる。
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