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75 告白
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イザークは夜の帳が降りて虫の音と薪がぱちぱちと爆ぜる音が聞こえるだけ。獣の気配はあるけれど近くではなく距離はそれなりにあるので問題ない。馬車の中に入ると彼女はすやすやとまだ眠っている。髪に触れると起きる気配もなく熟睡している。亜麻色の髪を掬い上げて唇を寄せるだけにしてずれた毛布をきちんとかける。
瞼を震わせてぼんやりとミカエラが目を覚ました。
「眠ってください。」
「イザーク様も寝ないとダメですよ…」
寝ぼけている。昨日も寝ぼけて抱きついていたのだが…髪を撫でると手を掴まれた。
「ミカエラ」
「イザークしゃま…」
「何です?」
「デートしてみたいでしゅ…」
手を握ってすやぁと眠ってしまった。
「これも似たようなものですよ。少しは自惚れたいのですけどね…」
パチっと薪の音で目を覚ました。毛布を掛けたであろう手を私が手を握っている。パッと手を離して身体を起こした。
「…ミカエラ?」
「変な事口走ってなかったですか…???」
「いいえ。不安なら横にいますよ。」
「……野宿はあまり慣れてなくて。」
「女性の野宿は推奨出来ませんからね。まだ夜ですから。」
頭を撫でられた。どうにかして正当な理由でも付けて休んでもらわなければ…
「イザーク様徹夜されるつもりですか?」
「適度に仮眠は取ってますよ。」
「見張り交代するので寝てください…」
「職務怠慢になるのでダメです。寝てますから。」
安心させるように寝かせる。目をしょぼしょぼとさせながらもそもそと横になり眠りについた。
気まずい。私一人ぐーすか寝てしまっていた…
「イザーク様本当にすみません。1人ぐーすか寝てしまって…」
「構いませんけど、そこまで気にしてるなら身体で支払ってもらっても?」
「…へ?」
真顔で何を言っているんだこの人。
「仮眠取りますので枕になって下さい。所謂膝枕ですね。」
「あ、はい。分かりました…」
ん???膝を貸すだけだし、クッションを用意したけれど木陰にお茶や保存食を用意されて当たり前のようにドサッと膝に頭を置かれてしまった。
「少し寝たら起きます。」
「…はい。」
直ぐに眠ってしまった。素材は大体集められたし。少しくらい平気だ。くすんだ灰色の髪を触るくらいしかすることはなさそうだけど、そんなことをする度胸はあまりない。怖くて出来ない。眼帯をしている方を下にして仮眠してしまった。触れたら怒るんだろうなぁ。というより起こす。でも、この後毛が少しぴょんと外ハネしているのがとても気になる…綺麗に整っているのにここだけ跳ねてる…
思ったよりぐっすり眠っている。クッション敷いて良かった……
ミカエラはうずうずとしながらもそっと頭を撫でる。手を取られた。ぼんやりと目を覚ましてガブッと人差し指を噛まれた。根元辺りを咥えて歯型が付く程度に…
「あの、美味しくないですよ?」
「…すみません。」
「いえ、お疲れですよね…」
ペロっと歯型を舐められてしまった。
「だ、大丈夫です////」
「心地よすぎて負担を掛けてしまいましたね。」
身体を起こして抱きついてきた。寝ぼけているのですよね。多分きっと。ヘラルド様の仕事で腕の中に収まることにはある程度慣れている!!抵抗も出来るし、やんわりとした断り方も知っている。
「突き飛ばすくらいしたらどうです。」
「相手見て決めてます。」
「…私も男ですよ。」
「えと…どうされました???」
「……理性と本能の葛藤でしょうか。特殊技能採用だとお伝えしましたが…」
「はい。お伺いしましたが…私が知る必要…ない事ですよね?」
「…被害を被るのは貴方なので話しておいた方が良いと思っています。」
眼帯を外すと紫と青の瞳が現れた。眼帯無いとさらに美形だ。なんかこの色の配色見覚えがある。えっとあまり考えたくなかったのだけどもあのモフモフと同じ色だ。
「…この目は呪の影響です。」
「呪ですか?」
「父が昔魔獣を討伐してそれに呪われた。神聖属性持ちだった母が解呪したはずが母に呪いが移り表に出ず燻ったまま私ができてしまった。そして魔獣の影響を強く受けて生まれたのが私です。」
「魔獣ですか…竜とかでしょうか。」
「狼の王フェンリルです。」
「…イザーク様もしかして狼の姿になったりします?」
聞いてみる。否定して欲しい。
「そうですね。まぁ、それはユーリ様や一部の人は知っていますが…狼は番を持つものですからそれの弊害が酷いので。」
「番???」
「…困ったことにミカエラにしか性的魅力を感じません。」
「へ?」
どういう事だ????極端なぶっちゃけにミカエラは情けない返事をして固まってしまった。
「そういう魔狼の影響です。」
「何故暴露されたのです!?」
「…暴露して結婚して下さるならこれ幸いと思いましたし、抱き枕にされた時に我慢の限界が近付いたので。」
「…私にどうしろとおっしゃるのです…」
「子爵も確定していますので、子爵になられたら婿入させてください。面倒事な貴族の付き合い等全て引き受けますよ。」
あっさりとプロポーズをされてしまった。ふわりと柔らかい笑顔で言われて不意打ち過ぎて真っ赤になった。顔をばっと逸らす。今までそんな笑顔すら見せたことありませんよ!?
瞼を震わせてぼんやりとミカエラが目を覚ました。
「眠ってください。」
「イザーク様も寝ないとダメですよ…」
寝ぼけている。昨日も寝ぼけて抱きついていたのだが…髪を撫でると手を掴まれた。
「ミカエラ」
「イザークしゃま…」
「何です?」
「デートしてみたいでしゅ…」
手を握ってすやぁと眠ってしまった。
「これも似たようなものですよ。少しは自惚れたいのですけどね…」
パチっと薪の音で目を覚ました。毛布を掛けたであろう手を私が手を握っている。パッと手を離して身体を起こした。
「…ミカエラ?」
「変な事口走ってなかったですか…???」
「いいえ。不安なら横にいますよ。」
「……野宿はあまり慣れてなくて。」
「女性の野宿は推奨出来ませんからね。まだ夜ですから。」
頭を撫でられた。どうにかして正当な理由でも付けて休んでもらわなければ…
「イザーク様徹夜されるつもりですか?」
「適度に仮眠は取ってますよ。」
「見張り交代するので寝てください…」
「職務怠慢になるのでダメです。寝てますから。」
安心させるように寝かせる。目をしょぼしょぼとさせながらもそもそと横になり眠りについた。
気まずい。私一人ぐーすか寝てしまっていた…
「イザーク様本当にすみません。1人ぐーすか寝てしまって…」
「構いませんけど、そこまで気にしてるなら身体で支払ってもらっても?」
「…へ?」
真顔で何を言っているんだこの人。
「仮眠取りますので枕になって下さい。所謂膝枕ですね。」
「あ、はい。分かりました…」
ん???膝を貸すだけだし、クッションを用意したけれど木陰にお茶や保存食を用意されて当たり前のようにドサッと膝に頭を置かれてしまった。
「少し寝たら起きます。」
「…はい。」
直ぐに眠ってしまった。素材は大体集められたし。少しくらい平気だ。くすんだ灰色の髪を触るくらいしかすることはなさそうだけど、そんなことをする度胸はあまりない。怖くて出来ない。眼帯をしている方を下にして仮眠してしまった。触れたら怒るんだろうなぁ。というより起こす。でも、この後毛が少しぴょんと外ハネしているのがとても気になる…綺麗に整っているのにここだけ跳ねてる…
思ったよりぐっすり眠っている。クッション敷いて良かった……
ミカエラはうずうずとしながらもそっと頭を撫でる。手を取られた。ぼんやりと目を覚ましてガブッと人差し指を噛まれた。根元辺りを咥えて歯型が付く程度に…
「あの、美味しくないですよ?」
「…すみません。」
「いえ、お疲れですよね…」
ペロっと歯型を舐められてしまった。
「だ、大丈夫です////」
「心地よすぎて負担を掛けてしまいましたね。」
身体を起こして抱きついてきた。寝ぼけているのですよね。多分きっと。ヘラルド様の仕事で腕の中に収まることにはある程度慣れている!!抵抗も出来るし、やんわりとした断り方も知っている。
「突き飛ばすくらいしたらどうです。」
「相手見て決めてます。」
「…私も男ですよ。」
「えと…どうされました???」
「……理性と本能の葛藤でしょうか。特殊技能採用だとお伝えしましたが…」
「はい。お伺いしましたが…私が知る必要…ない事ですよね?」
「…被害を被るのは貴方なので話しておいた方が良いと思っています。」
眼帯を外すと紫と青の瞳が現れた。眼帯無いとさらに美形だ。なんかこの色の配色見覚えがある。えっとあまり考えたくなかったのだけどもあのモフモフと同じ色だ。
「…この目は呪の影響です。」
「呪ですか?」
「父が昔魔獣を討伐してそれに呪われた。神聖属性持ちだった母が解呪したはずが母に呪いが移り表に出ず燻ったまま私ができてしまった。そして魔獣の影響を強く受けて生まれたのが私です。」
「魔獣ですか…竜とかでしょうか。」
「狼の王フェンリルです。」
「…イザーク様もしかして狼の姿になったりします?」
聞いてみる。否定して欲しい。
「そうですね。まぁ、それはユーリ様や一部の人は知っていますが…狼は番を持つものですからそれの弊害が酷いので。」
「番???」
「…困ったことにミカエラにしか性的魅力を感じません。」
「へ?」
どういう事だ????極端なぶっちゃけにミカエラは情けない返事をして固まってしまった。
「そういう魔狼の影響です。」
「何故暴露されたのです!?」
「…暴露して結婚して下さるならこれ幸いと思いましたし、抱き枕にされた時に我慢の限界が近付いたので。」
「…私にどうしろとおっしゃるのです…」
「子爵も確定していますので、子爵になられたら婿入させてください。面倒事な貴族の付き合い等全て引き受けますよ。」
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