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77 初体験
しおりを挟む意識して眠れない…ミカエラは背中を向けて寝ようとするが身体をあまり動かしていない。つまり眠気が来ていない。灯りをつけて仕事は迷惑だし…
「眠れるようにします。」
昏倒させるための魔法じゃ…頭を撫でられたら意識が遠のいた。ミカエラは意識を手放した。
翌朝目を覚ましたら1人でベッドを使っていた。イザークは身嗜みを整えて熊肉を売り払っていた。売った方が良いと思ったし、先に痛む前に処分したいことも伝えていたけれど…良いお値段になっていた。
「おはようございます…」
「おはようございます。眠れましたか?」
「…お陰様で。イザーク様こそ眠れましたか??」
「えぇ。寝ましたよ。」
体力があるからと徹夜していた。が、1番有り得る。
「本当ですか!?」
「嘘ならどうするのですか?もう一泊した所で変わりませんよ?」
「な…本気で口説くと仰るなら私に対して嘘をつかないで下さい。」
恥ずかしい…が、その約束を取り付けないとこの人は気をつかって嘘をつく。見上げると眼帯をしている片方の目で頭を撫でられた。
「分かりました。あまり眠れていませんが、延泊したところで眠れないので変わりません。」
「何故ですか?」
「貴方が傍にいるので。触れないですし、触ったらそれ以上を願ってしまうので。」
「それ以上…えぇ…」
「ですから年齢分こじらせていますので。花街等も行きましたし、ユーリ様に色々渡されましたが全く興味を持ちませんでしたから。」
「接客をした娼婦の方が可哀想です。」
「えぇ、色々して下さったのですが、無反応でしたからね。ミカエラでないと反応しないようです。」
サラッと言われてしまったがこれはありなのだろうか。馬車に乗り隣に座る。それは男性として大変なのでは???と、思いながら見上げる。
「ミカエラ、こういう会話で顔色変えませんね。」
「男しかいなかった宝石工房の下働きで下世話な話を聞きながら仕事してましたから。どこの娼館の誰々の何が良かったとか。どこなら安いとか。締まり具合がいいと…」
手で口を塞がれた。
「貴方の口からそういうのは聞きたくありませんし、女性の口から出すものではありません。口付けをして塞ぎますよ。」
「…したいのですか?」
「したいですよ。抱き潰したいと申し上げたはずですが。」
「…ダメです。」
手を伸ばした彼は手で唇を軽く撫でる。乾燥してる??
「乾燥してます?」
「生殺しされているので色々勘弁して欲しいですね。」
「私が悪いのですか?」
「そうですね。何が不満なのですか?」
「不満の有無ではなく人が変わり過ぎです。それについていけてません。」
「そうですか。では、お金を後で支払うので膝に乗せていいですか?ヘラルド様と同額支払います。」
「う…別にお金はいいですよ。人に見せ付けるようとしてお金を取っているだけですから。」
馬を止めて貰い傍に移動すると抱き上げられて膝に乗せられた。近い。とても近い。嫌でも嫌いでもなければ避ける理由がない。ヘラルド様にチュチュと唇を寄せられたりして嫌いではなく比較的好意がある男性に手や額にキスされる分は慣れた。
「ミカエラはいい匂いがしますね。」
「絶対鼻の異常です。神殿で治療受けた方がいいです。」
「そう感じるので諦めて下さい。これは平気なのですか。」
「ヘラルド様の仕事で膝に乗せられたりわざとらしく額や首筋にキスされるので慣れました。」
「お金なら支払うのでしてもいいですか…」
「悲痛な声で言わないでください…」
何故そこまで悲痛な声が出せるんだ。護衛の仕事をしてくれ…道中安全だから仕事がないのかもしれない。
「私が言うのも何ですが仕事をして下さい。」
「してますよ?呪いの弊害で視覚は人より少しいい程度ですが耳と鼻は犬並なので。ふざけたことを口にしていますが耳と鼻で警戒してますよ。」
ふざけたことを口にしている自覚はあったのか。ミカエラは急に接し方が困る人になってしまった。と、思ったが、嘘つくなと言った弊害なら私のせいだ。
「ミカエラは男性に何があれば満足なのですか?経済力?容姿の美醜?」
「お金は私が稼いでますし、美醜をどうこう言える程私の顔は美人でもなければ胸がある訳でもないです。特に何も求めてません…現状苦手な事を請け負って貰える今のロズウェル侯爵家との関係が落ち着いているので好きです。」
「ですからユーリ様の仕事の手伝いもしているので領地運営関係も出来ますと前向きに検討をと伝えているのですが?」
「…後ろ向きに考えている訳では無いですよ?前向きでもないですが…」
「脈アリですか。」
「…何故そうなるのです。それにロズウェル侯爵家がずっと懇意にしてくれるとは限らないのですが。」
「私がユーリ様の護衛を務める限りは問題ないでしょう。とりあえず当代はミカエラの技術で安泰です。」
既に勝手にお持ち帰り前提の計算してないです???見上げると大人の余裕とやらをもった笑顔だった。これはどうしたらいいの!?!?
用意周到な貴族怖い。
そういう話題避けよう。
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