出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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134 お茶会にて

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本日はロズウェル侯爵家の人に招待されたお茶会。社交シーズンだから王都の貴族以外の意見や流行をこっそり知ることが出来る。市場調査にどうだろう。と、提案されたので職人としての新作をエリザベス様に渡してデザインノートと試作を貸出してフィル女男爵として参加。確かに地方貴族の衣装やその人たちに受けるデザインを考えるのに現物を見た方がいいと思った。いつもなら放って置いてくれるのに珍しいと思いながら参加した。

紹介と挨拶とテンプレを熟すが驚かれる。成り上がり男爵だの囲われた平民だのと色々言われているのは知っている。大した問題でもないし、名前だけ聞くと発注書と繋がるからこちらとしては誰が何を買ってくれているか、好みが何となく把握出来た。旦那の趣味なのか絵師がしっかり話を聞いてないのか少し違う気がするが、言われたものを作るのが仕事だからそれ以上何も言わないのが私だ。余計なことは増やさない。

「フィル女男爵はリンドブルム大公といらっしゃる所をよく見かけていましたので…こういう社交はお嫌いなのかと思っていましたわ。」

「お見かけするのがリンドブルム大公と参加する夜会ばかりでしたものね。」

つまり身の程知らずがどの面下げて高貴な方のそばに居るんだ???位の意訳をしてもおおよそ間違ってないのかな???そこでヘラルド様の虫除けですと正直に言えば契約違反になるからニッコリとしておくしかない。流石にレオンハルト様とどうとかは言わないか。

「普段は王宮の魔導師団で仕事をしているのでお茶会等に参加する機会があまりなくて。」

すると働くのはみっともない。と、女は家門を護るのが仕事だと特に外の人は色々言ってくれる。ヘラルド様という囲ってくれる人がいるなら爵位も返して愛妾でいるべきとご自由に発言してくれる。

「ヘラルド様は家に閉じこもってお友達との社交よりは色々と視野を広げた話題豊富な人の方が話をしていて楽しいと仰っていますので皆様とは意見が会わなさそうですね。レオンハルト様も女性の流行の機微より最近研究が進んでいる分野や騎士らしく武芸の話題の話をしている方が楽しいようなので、見た目だけや家柄はあまり関係ない世界なのかも知れませんね。私はどちらかということヘラルド様やレオンハルト様とそういう話をすることが多いので。」

話題がたかがしれているご令嬢や奥様方よりはあなたの知らない世界の1面として重宝されているらしい。そういう話が面白いと好評だ。

自慢と言うより事実なんだけど。お気に召さなかったようだ。じゃあどうしろと???私単独狙いというのも性格悪いと思う。エリザベス様に申し訳ないというのもか…喧嘩買っちゃったからなぁ。アイコンタクトでお詫びしつつ…

話題を切り替えてもらった。と言っても私の新作をお披露目するだけだ。次期侯爵夫人の流行発信は大事なのだろう。私は宝飾品をあまり付けていない。自作したものをちょこちょこと控えめなものをつけるだけにして夜会は新作。宣伝するのは夜会とロズウェル侯爵家やお客様たちにお任せだ。それにしても王都外の貴族の嫌味は分かりやすい。悪意などなど。王都にいる奥様方の方が怖い、悪意や嫌味をそうとは感じさせないから。それにしても王都のお友達はそういう素振りを見せないのに何故一部の方々は露骨な話をしているのだろう。私も勉強をしているとは思わないのだろうか。

「レフィラ様は最近明るい話題があると噂で聞きましたよ?」
「皆様お耳が早いのですね。実は婚約のお話が纏まりそうですの。」

 へぇ。そんな話をこういうところでもするのか。お茶会で派閥表明とか???それとも情報収集???
「親族の方のご紹介ですか??」
「それが父の知り合いのスカルラッティ家の方と聞いておりまして。まだお会い出来ていないのですがロズウェル次期侯爵様の側近とか。」

 お茶を噴き出さなかった私えらい。エリザベスも目をパチクリとさせておめでたいお話が進んでいますね。と、こちらをチラリと見るが私は笑いそうなのをどうしたものかと別のことを考える。レフィラは姿絵を見ただけで父は問題ないと教えてくれてと。浮かれているが・・・楽しそうで何よりである。イザーク様の体質を知らない人がほとんどで詳細を知っているのはユーリ様と私くらいだろう。ミカエラはうまくいけば良いですね。と、口にはしないがニコニコするだけにする。

 喧嘩を売ってきたのがこのレフィラ様だからわざとかな????こちらを明らか敵視しているし。ミカエラは溜息をつくこともしないでお茶会が終わる頃に迎えとしてイザークが姿を見せないように医療用のガーゼの眼帯にフードを被った従僕として側に来た。

「馬車の準備ができましたよ。」
「ありがとうございます。少しお願いがあるのですが。」
「????」

 耳元にレフィラの事を伝えるとすんすんと何か匂いを確かめている。そのまま帰りますよ。と手を引かれる。

「ミカエラ、お菓子を持ち帰りますか?」
「あ、いただきます。アリアが喜びます。」

 お客様たちが全員帰ると当たり前のように腕の中にすっぽり収めるように抱きしめられながら箱詰めされるお菓子を眺める。

「イザーク、あなたの自称婚約者を見てどうでした??」

エリザベスが困ったわね。と、微笑みながら残ったクッキーをミカエラの口元に持っていくと小動物のようにぱくりと食べてくれる。

「見ただけですけれど、何か化粧が派手で香水もふんだんに振りまくった方でしたね。鼻が曲がりそうです。」
 人の頭に顔を埋めて鼻が曲がりそうだからこっちの匂いを嗅いで鼻を元に戻す。と、言いながら人をぬいぐるみにしている。重いし邪魔だ。

「急に噛み付いてくると思ったのだけれども、ミカエラのことを知っていたのね。」

「みたいですね。これを見せてやりたいです。目立って姿を隠していないのに渡された姿絵は違うもののようですね。あ、お菓子ありがとうございます。」

 帰ることにした。お菓子のお土産のために来たものだ。アリアと食べて忘れよう。
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