出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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 イザークは呼び出された家に仕方なく戻り、そこに待ち構えていた家族と話をして感情を殺して侯爵家に奉公のために立ち寄る。本当にあの人たちは迷惑でしかない。自分に与えられた部屋に一度立ち寄る。顔を洗って鏡をみるが、これでミカエラの家に向かうわけにはいかない。少し落ち着いて気持ちを整理させなければ行かない。顔を洗って手を見ると爪が食い込んで血が流れている。試作品でもらっている魔道具の治癒が働いて傷はすぐに治る。触れているだけで彼女の魔力を補充して壊れたら新しい石をつけてもらう。勿論きちんと作業に対して彼女に対価を支払いながら。1つ割れた。怒りはしないだろうが一応聞かれるだろう。




「で、面倒事があったようだが報告は?」

ユーリが部屋に来た従者に尋ねる。魔力が揺れているし不安定だ。

「えぇ。面倒事です。領地から勝手に私の婚約予定者を連れてきて紹介されました。」
「伯爵も攻めるね。受けたのかい?ミカエラはふぅんって言いそうだけど。」
「断りましたよ。それなら縁をさっさと切ってくれ。と、言ってきました。お手数をお掛けします。」
「いいよ。帰る間に頭を冷やして甘えてきたらいい。」




レオンハルトは夕食を食べてから帰宅する。入れ替わりにイザーク様が来た。帰って来たと言いたくない。雰囲気が少し違う。

「イザーク様、食事どうされますか?」
「…いえ。勉強で忙しいと思いますが時間を頂いても宜しいですか?」

顔を撫でながら聞かれた。これは断る方が面倒くさいことになりそうだ。頷いてさっさと部屋に戻る。成人男性…部屋に行くと見上げる。顔を持たれてカプっと耳を甘噛みされた。

「ひぇっ。」
「噛んでいいですか。」
「既に噛んでます…嫌です。」
「胸を貸してください。」

貸す、貸さないではなく、この暴走気味の時は勝手に借りて顔を埋めているだろう…埋めるほどないけど。ベッドに移動する。ソファーでもいいけど、私が眠くなった時にそのまま寝たい。毛玉ならしっぽで機嫌の善し悪しがわかるけれど…

「落ち着きます…」
「そうですか…体格差を理解してさっさと降りてください。」
「私の個人的なことではあるのですが…主と番以外には触られたくないんです。」
「話長いなら降りてくださいね。」

まぁ、部屋から出るとずっと手袋しているし、潔癖なのかと思うくらいに人との接触はあまりない。その代わりこっちですごいベッタベタだし、潔癖ぽいのに人の足にキスをしようとするし間違って顔を蹴っても痛くないと言う人だ。面倒くさいことは理解しているがどうしたのだろう。

「父が婚約者予定だと女性を紹介してきたんです。」
「じゃあ其方と婚姻を結んだら良いでは無いですか。お貴族様紹介なら出るとこ出て引っ込んでるところは引っ込んだ綺麗な人なのでは?」
「断りましたよ。貴方でなければ意味が無い。婚姻を勝手に進めるなら勘当してくれた方がマシだと喧嘩腰にならないように出てきました。ミカエラは私が嫌いなのですか…」
「嫌いだったらこんな状況になって悲鳴ひとつ上げずに話聞いたりしませんよ。穏便に済ませて欲しかったな。くらいです。聞く限りだと揉めてますよね。更に。」
「呪い持ちだと差別して放置していた子種の元とはいえ由緒正しき伯爵家の人間が元平民の少女に現を抜かして骨抜きにされているのが許せないと、急に父親という肩書きを使っているだけです。」

クッションで角度を調節していたのに腰に手を回して顔を埋めているのでどうにかしたい。眼帯を外してワシワシと撫で回す。

「毛玉の時は丁寧なのにこの姿だと雑ですよね…」
「嫌ならしません。」

ぐい…何も言わずゼロ距離頭突きというか頭を押し付けてくる。

「嫌とは申し上げていません…」
「はいはい。揉めたんですよね。」
「…さぁ分かりません。目の前で縁を切られた方がマシだと啖呵切って帰ってきましたので。」

揉め事が増えていないだろうか。面倒くさいと思いながら髪を指で梳きながら元に戻す。そしてこれはへそを曲げたとかではなく八つ当たりするよりも実利を優先したのか。

「家族というのをあまり実感してない私が言うのもなんですが、家族って仲良くするものでは???と、思ってました。」
「どこもそうとは限りませんよ。特に貴族は跡継ぎ以外は結婚のための道具という意味合いが強いです。領地、領民の為と言えば聞こえはいいですが、血の繋がりや家族という概念を大切にすると言うなら平民の方が強いですよ。良くも悪くも利権ですから。貴族は。」

重い…物理的に…



えっと、私の領主候補過程再入学に仕事にイザーク様には婚約者(仮??)が現れたと。貴族って…本当に…面倒くさい。
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