出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

142 教室にて

教室に入るとこちらを見る学生ばかりだ。まぁ、親から色々聞いているだろう。視線が刺さる。気にしない気にしない。相手は親の肩書きしかないお子様たち。職員棟に行くとミカエラのことを聞いていたのか腐っても爵位を持っているからなのか応接室に通されてお茶が出て来た。誰が何言った…

「フィル子爵とお呼びすればよろしいでしょうか。」
「ミカエラで問題ありません。私が欲しくて取った爵位でもないので。私は1度平民の実技コース取ってますので…」

とりあえず…普通に話をして送迎で自分の家というか迎えが来るので職員棟等を使うことや依怙贔屓はしなくてもいいが、舐めた態度を取るとこっちも考えがある。という話をしておく。

「ミカエラ様、この課程に入る方は思考が固まっている方が多いので…」
「でしょうね。リンドブルム大公の甥っ子双子が酷かったので。」

吐き捨てるように孤児院に放り込んだのはいい思い出だ。と、思ったくらいなのだが、教員達が黙った。固まった。私変なことを言っただろうか？？？

「双子？？？」
「ヴィルフリート様とギルバート様ですね。」
「ミカエラ様は御二方とも懇意なのですか？」
「懇意というか普通に友達ですね。季節の手紙とかのやり取り程度ですが…ヘラルド様のお宅に行くとたまに遭遇する程度ですし。」

お菓子のランクが上がった。食べ終わってから教室に向かうと適当に空いている席に座る。

レフィラ・アンバース子爵令嬢がいた。というかそんな年下なのに私喧嘩売られていたのか。いや、私はそんなことよりも採掘権を掛けた旅行の為に成績を取らないと行けない。着飾ったご令嬢や子息ばかりで私は比較的？いやかなり質素な装いだ。勉強しに来てるんですよね？？？さて。どうしよう。声の大きな人は爵位も比例しているのか取り巻きが出来て派閥も既に出来ている。

興味無いし、勉強真面目にしよう。そう思いながら編入生として紹介される。

「ミカエラ・フィル子爵は男爵叙爵後1年で子爵位を賜ったので基礎を学ぶために来ています。彼女自身が実力で爵位を得たということを念頭に置いてください。」

　目立つ。というよりヒソヒソ話ながら大して変わらない見た目の子供だろうとか色々言ってくれているが、私が小柄なだけで成人はしている。まぁ好き勝手に言ってくれていいけれど。おとなしく勉強をさせてくれるならそれでいい。

　授業が始まる。一応予習として習ったことばかりで、青少年相手の授業だから家庭教師たちみたいに容赦なしの教えかたよりはわかりやすい。というよりも早く教えられて大雑把だった箇所を補完してくれるように感じたのであの無理やり詰め込み後は凄く分かりやすい。ミカエラはそう思いながらメモをしていく。もしかして2年ですることを一回詰め込まれたのか？？？そう思いながら
　真面目に勉強しているのだが、始まった瞬間部屋から出て行った人間もいる。余裕あるんだな。そう思いながら気にしないで自分の勉強をする。

「この程度もわからないのですか？フィル子爵？」
「私のことは気になさらず。レフィラ様と違って私学園での成績を気にしている方が多数いらっしゃるのでできる努力が必要なんです。」

　お昼ご飯はランチボックスで人のいない庭でもそもそと食べる。変に人と絡むのもバカバカしいし。アリアのご飯がとてもおいしい。美味しい。保温するためのクズ石。暖かい食事だけで満足だ。

今のところなんとかなる。

午後からの講義も意外に行けるのでは？？？と、思いながら手を動かす。こんな感じならなんとかなる。特に帳簿！！！！帳簿読めるし書けるから余裕。今のところ。

そう思っていたら午後が過ぎた頃にイザークが迎えに来た。初日は何とかなったのだが、校舎に入って迎えに来た。

「早…眼帯どうしたのです。」

医療用のガーゼ眼帯だ。荷物を取られてしまう。
「いると聞いたので少し色とかを変えてきました。」

服装もだが髪の色が少し違う。そして眼帯もいつもと逆の目を隠している。当たり前のようにちゅちゅと手や頬に唇を寄せてくる。

「これが2年続くのは辛いですね。」
「…ベッタリしすぎた弊害ですね。家でベッタリしてるのだから良いでしょう？」
「宜しくないです。」

見上げると寂しかったのだと訴えるような目で見下ろしていたのでペチペチと軽く頬を叩く。背が届かないので頭は撫でられない。叩くと言うより撫でる様なものだけど。引っぱたいても怒りはしないと思う。何度も蹴ったりしてるし。

「フィル子爵は従者とそのような関係なのですか？」
「アンバース子爵令嬢。お気になさらないでください。ただの戯れです。」
「帰りましょうか。話したいことも沢山ありますから。」

無視してイザークを見上げると良い笑顔でエスコートしてくれる。さっさと帰ってお菓子を食べて寝よう。素通りをする。

「アンバース子爵令嬢、また明日。」

帰ろう。と、素通りして家に帰る。