出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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171 夜会当日

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 夜会当日。アリアはまだいない。侯爵家から人を借りたら……と思いながらもそんな用意をしていない。あっさり言われて私はされるがままにドレスを着せられて化粧や髪型も整えられた。髪型に合わせた新作の髪飾りを作ったけれどそこまで派手ではない。イザーク様がキチっとした従僕や護衛ではなく伯爵家令息らしい服だ。靴も光っているし、髪型もピシっとしている。眼帯もいつもと違う。

「誰です?」
「それはそれでひどいですね。ミカエラ。」
「普段の楽な服装が見慣れていますから。」

   夜会になってしまった。エスコートをされて王城に向かう。領主候補生の留年組もいるらしく絶対に気まずい。イザーク様と衣装の色を揃えて一緒に歩く。

「ミカエラ様、ご機嫌いかがですか。」

  ローズ嬢だ。男装だ。ただスカートにも見えるように布もたっぷりと使っている。綺麗カッコイイ。指先にキスをされそうになったが肩を抱かれて後ろに引かれた。

「ローズ嬢ですよ。ご存知ですよね?」
「拗らせているのでご理解下さい。」
「……したかないですけどね。」
「ミカエラ様、そちらの方は……」
「ユーリ様の護衛騎士のイザーク様です。私が面倒事製造機なのでお世話になっているんです。」
「傷を刻む間柄でしょうに。」

   何の比喩????石や宝石にカットして傷とか名前とか色々刻んでますが???宝石とか色々。首を傾げて見上げてみるが笑顔一択。ローズ嬢を見るが真っ赤になって扇で口元を隠していた。どういう意味だ。
  何の比喩だ。

「ミカエラ様、そんなお話あったのですね?」
「???私何か隠してました???」

   何の話だ????ミカエラはそう思いながらローズを見るが彼女はまた後で。と、離れてしまった。何の話をしているんだ???そう思いながら彼を見上げるがニコッとするだけだ。これは何を言っても教えてくれなさそうだ。知り合いのところに行こう。レオンハルト様は騎士の装いだ。警備担当なのだろうか???

「ミカエラ、久しぶりだね。」
「レオンハルト様お久しぶりです。」
「元気そうでよかったよ。学園楽しい???」

 ……楽しいかどうか。即答はできない。楽しいのだろうか。嫌味と嫌がらせとかなり厳しい教師と……仕事がなくてよかったけれどよかったかどうかはどうなのだろう。はっきり言いにくい。むむっと考えていたらレオンハルトは笑いながらわかったと。察してくれた。楽しかったかどうかは別だ。

「でも首席って頑張ったんだね。ご褒美にお酒とかの方がいい??美味しい食事は出ているだろうから。」
「……お、お酒は大丈夫です。倉庫に消費しきれない量があります……お気持ちだけいただきます。」

 酒癖悪いからお酒だけは辞めてくれとか言えない。何があったか聞かれて余計に何も言えなくなる。

 顔が赤い。思い出したくない。

「ミカエラどうしたの?」
「醜態を思い出して自己嫌悪中です。お酒は渡さないでください。迷惑をかける系の酔い方なので。」
「わかった。いいよ。無し?それとも制限程度?」
「外では禁酒で。」
「うん。わかったよ。ジュース取ってくるよ。」

 ジュースをとって来てもらって口をつける。酒精がなくて美味しい。イザーク様とユーリ様が何か楽しげに会話をしている。何事もなく宙吊り2曲連続で終わりますように。

「イザークと何かあった?」
「……いえ。良くしてもらってますよ??」
「そ?何か困ったことがあったら言ってね。兄上に言い難いこととか。俺からやんわり伝えるし。」

   スッゴイ良い人。辺りを見渡すと確かに留年した同級生とその親?は友人に紹介したりして人脈を広げようとしているのは分かるが相手困ってないか???流石に留年した子供を紹介されても能力に疑義があるわけで……教師はヘラルド様が持ってきたわけだし。それにしてもこれからどうしたものか。肩を抱かれて引き寄せられた。イザーク様に引き寄せられていた。

「何ですか???」
「いえ……」
「ダンスの際はよろしくお願いします。練習すらしてません。体幹は鍛えてましたけれど。」
「お任せください。」

 憂鬱だ。壊滅的なダンスをしなければならないなんて。ため息をつくしかない。ジュースや食事を口にするにしても数量は制限されているし。

「あぁ、時間ですね。」
「うぇ……」

 手を取られてダンスを踊る。つま先が着くかつかないか程度に宙吊りにされて一曲目。宙吊りで足もぶらぶらとならない様に体幹で堪える。顔がスンとしているけれど、この身長差腰に来るでしょう。

 二曲連続で踊り終わったが、イザーク様の顔色は変わっていなかった。

「治癒は必要でしょうか???」
「腰にいただけますか……」

 流石に身長差で腰はくるだろう。腰に触れて治癒を施す。それにしてもスカルラッティ辺境伯とレフィラ嬢がすごい顔で睨んでいる。見上げると勝ち誇ってニコッとしていた。そして彼は膝をついて足の爪先に唇を落としてきた。

はい?????

「立ち上がってください!!!!」

 ハンカチを取り出して腰を曲げてもらって唇をゴシゴシと拭う。

「なぜ拭うのです。」
「靴に何故するのです!?」
「牽制です。」

 いやいや……スカルラッティ伯爵がすごく睨んでいるし……
   
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