出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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177 禁書庫

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 禁書庫では古い本や模写すら禁止の本が多数ある。読むことは許されているけれど、外に出せない理由もなんとなくわかるものがあった。単純に昔の人は色々やらかしていた。魔石を食べた人や神聖属性持ちがいるからと罪人を生きながらに解体して医療の発展に寄与させようとしたとか。エルフやドワーフ、亜人と呼ばれる人たちの特性や体の中身などなど……国がしていたことを知られるわけにはいかないし、近親相姦の果てであったり、拷問の記録。お子様に見せては行けないものや犯罪につながるもの、当時は合法でも今では違法であり、貴族の諍いで議会などが止まるだろう。読書として読むなら面白いけれど、他人事だから面白いのかもしれない。ミカエラはそう思いながら仕事に繋がりそうなことをメモしておく。それにしても聖女の出現は本当にランダムだ。それに強さもまばらだ。聖女は貴族、平民問わずだけれども共通しているのは見つけた貴族が養子にしてそこから上の貴族の家に売り込んでいる。それだけだ。

「ミカエラ、時間ですよ。」
「分かりました。」

  それでも問題ない情報は外に開示されている。貴族からしたら問題ないのだろう。昔からある貴族にとっては自分たちで記録しているだろうから。貴族としての勉強にも疲れてきた。

   菓子屋というのが本当にない。砂糖やバターが高価だし料理人に作らせるのが大半だ。私のおやつも侯爵家経由で買ってきてもらったり王城のシェフが試作を譲ってくれたり。
  家にあるのは保存の聞く焼き菓子、果物、ドライフルーツが大半だ。文句はないけど、ふらっと食べたいと思った時に食べれないのが少し悲しい。

「何か困ったことでも?」
「困ってはいません。生菓子が気楽に手に入れば良いな。と、思っただけで……」

   帰りの馬車で城の料理人から王妃や王子の婚約者のお茶会で出た余りを貰ったのでそれを見つめながら直な感想を伝える。

「焼き菓子の店はあるようですが、下位貴族や富豪向けですね。味は家の料理人が作る方が美味しいでしょう。」
「そーなんですよね。」
「生菓子が食べたいならお茶会の誘いを受ければ良いでしょう。」
「……いやいや、菓子食べたいからって流石に。」
「エリザベス様なら笑って許可されると思いますよ。仕事優先、貴族対応めんどくさいで全て断っているだけなんですから。」

   頭の中でお菓子と奥様方のネタにされるを天秤にかけた。そして根底にある貴族めんどくさいがせめぎ合って貴族めんどくさいが勝ってしまう。

「貴族めんどくさいのでいいです。」
「そうですか。喜ばれると思いますが???」
「いや、それよりもめんどくさいのでいいです。それよりも次の年も忙しいんでしょうか?」
「学園はそうですね。ユーリ様はなんとかなったようですが、実践に近いようですね。」

 聞きたくなかった。でもアレックス様の授業の後に別の教師ならまだ頑張れそうだが、アレックス様続投だったら残った人間一致団結して進めないと多分やばい。今は社交シーズンだから学友も社交に出ているようだけれども……そんな話の手紙はきているが、来年度が怖すぎて勉強のために図書館に引きこもりたいという嘆きもチラホラと届いている。私も危ないと思いながら復習ではなく法律関係の本や作物、天候など必要な知識を様々叩き込んでいくというよりは忘れない程度に記憶の片隅に放り込んでおく。

「……嫌な予感しかしない。」
「まぁ、今年の方針が変わったので余計来年はわからないでしょうが、なんとかなりますよ。」
「余計に不安だ。なんでこうなったんだろう。」
「クビになる前の仕事の方がよかったですか???」
「……さぁ、わかりません。こっちの方が楽ですけれど、義務が増えたというか。比較できませんから。」

 家に帰ると仕事の依頼もちらほら入っているが、イザーク様が急ぎかどうかだけを確認してアリアに断りを代筆するように指示をしていた。

「私も確認した方が。」
「ミカエラ曰くクソ面倒くさい貴族の対応です。ユーリ様に丸投げしましょう。」

 いい笑顔で提案されたので頷くしかない。そんなに面倒くさいなら任せよう。詳しく聞くと対応せざるを得なくなるから余計に任せることは任せておこう。

「わかりました。お願いします。」
「信頼してくれてありがとうございます。」

 穏やかに言われても、経験値の差があるのだから任せるし、何かあるならユーリ様ひっくるめて対応してくれるから出会って私が何かできるわけではないのだから当然だ。そこの勘違いを指摘すべきか、本人が満足そうにしているならそのままで良いのだろうか。いいだろう。私に何か悪いことがわるわけでもないし。ジィッと見上げて少し考えて納得して頷く。

「ミカエラ?」
「いえ、よろしくお願いいたします。信頼していますし、ユーリ様にということは何かあった時には助けてくれるまたは責任とってくれるということだと思っているので。」
「もちろんです。」
「じゃあそういうことです。」

 信じるしかない。それしかできないのだし。そうするだけだ。
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