出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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179 最終学年準備

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  最終学年始まる前に嫌な情報が飛び込んできた。聖女が一学年下に入るらしい。知りたくない情報だ。ミカエラの元にもその情報が運ばれてきて侯爵家やヘラルド様や周りの人が集め、整理した情報がドン!と積み上げられている。

「ミカエラ、前に気にしていたことはこれですか?」
「これです。関係ない……関わりたくないなぁと思っていたのにこの資料集……」
「侯爵家の人間が複写した資料ですから。無下になさらないでください。」
「……分かっているので困ったなぁと思いまして……」

 目の前にある資料はカリアス男爵と聖女と呼ばれる女性、イリヤと言う名の女性の情報だ。イリヤは孤児ではなく貧民街の少女のようでカリアス男爵がその魔力を知り、養女として迎えた。そして男爵の手元において養育したらしいけれど、当時のイリヤ嬢の家族の家は火災で消失している。都合のいいことだ。そして最近私が依頼を全て切った依頼に関してプンスカと怒っているらしい。これはすごく面倒くさい。問題しかない。なんでもガラスの靴がどうしても欲しかったらしい。王子の婚約者用に作った2足しかないし、展示しているのはアリアのサイズだから入らない人は入らない。ミカエラは読みながら顔に出ていたのかポンポンと頭を撫でられた。

「大丈夫ですか???」
「……頭が痛いです。レフィラ嬢と同学年になるんですよ。1人でも面倒くさいのに面倒くさい2人が合わさると書いてあるんですよ?」
「あぁ、確かに。面倒くさかったら内々に処理しますから。」

 内々に処理って。物騒なことを言わないでほしい。ミカエラはそう思いながらむすっと見上げると額に唇を寄せられた。家の中では暗器を忍ばせた硬い服ではなく剣を下げているが軽装だ。気を抜いているのかぬいぐるみにされて膝に移動させられてもちもちと触ってくるのはやめてほしい。

「バレなきゃ何してもいい訳では無いです。」
「ミカエラのためであればなんでもしますよ。」
「重い……」
「当然ですよ。私の優先順位をお伝えしてきたはずですが???」

 邪魔はしないようにぬいぐるみにされている。もたれ掛かるとしっかり抱きしめられた。イリヤ・カリアス男爵令嬢を警戒すべきか、レフィラ嬢を気にすべきか。資料を置いて見上げるが何か嬉しそうだ。

「……私をぬいぐるみにするか、膝を枕にするか。どちらになさいますか?」
「座り心地が悪いと?」
「資料読み込みがしにくいからです。」
「……では部屋を整えましょう。」

   資料の山を持って部屋に上がってしまわれた。追いかけようとしないで飲みかけの冷めたお茶を飲む。お茶を飲み干す頃には整ったからとあっさり抱き上げられた。

「では、部屋に移動しましょうか。」
「ありがとうございま……」

   あっさり抱き上げられた。部屋にテーブルや資料を積み上げられてクッションなども整えられている。お茶もある……準備がいい。クッションに埋もれて資料を読む。楽な部屋着で目を通していくのだが腹部に頭がある。適度に頭を撫でて目を通す。腰に腕を回されてぎゅっと距離を詰めてくる。

「何が良いんですか?」
「……これだけで心地いいんです。ミカエラは嫌ですか?」
「うーん。慣れては来ましたけれど、慣れてきただけです。イザーク様、聖女と接触する予定はございますか?」
「望まれない限り。呪いが解けたらなんて考えないでください。……私が責任を取るのですから。」
「えぇ……」

 資料を読み込みながら膝の上でゴロゴロしている頭部を見る。なんだか満喫している。これで五感が鋭いのに疲れないんだろうか。そう思いながら彼の髪に手を触れたりしながら聖女様の肩書きや魔力の強さや何が起きているのかという情報の山に目を通す。これだけの情報をどこから集めてきて整理をしたのだろうか。これを覚えて対処を考えておかないと私が学園で痛い目に合う。勉強苦手なのに。

「イザーク様、こんなのどうやって覚えたんですか?」
「人の特徴や経歴を覚えるのは護衛の務めですよ。少し危機感を持てば嫌でも覚えますよ。ミカエラ、覚えないと面倒ごとが今まで以上にやってきて仕事には戻れないし、余計なことだけが増えて落ち着いた仕事とは無縁の貴族のゴタゴタに巻き込まれて辟易することになるのですから。」
「……覚えます。なんでこんな面倒ごとばかり。」
「貴族とはそんなものですよ。」
「……カリアス男爵と会ったことありますか?」

 資料をおいてワシワシと髪を撫でながら尋ねる。イザークはそう言いながらこちらを見上げてくる。ふわふわの前髪だ。嫌そうな顔をしないんだよなぁ。

「見かけたことありますよ。」
「見かけた???」
「えぇ。ユーリ様に取り入ろうとしていたというよりは繋がりを得ようとしていましたね。年齢は侯爵より年下ですが、元冒険者であり、騎士なので肉はありますよ。」
「……勝てますか?」
「それはもちろん。手が止まってますよ。」

 撫でろというのか。話も有料??ということなのだろうか。髪を撫でるくらいならいいんだけれども。撫でながら男爵の生の情報を得ていく。
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