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7 魔王城の波乱。そして……
7 魔王城の波乱。そして…… ③
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ミサキは、アレクセイに寄り添うように一歩下がった。これで、アレクセイを傷つけようとしても……ミサキが障害となって急所を狙う事が難しい。ミサキ丸ごと射抜くことが出来るのであれば話は、別だが……シャルロッテの手は大きく震えた。
「どうして、貴女がこんなところに! ……ミハイル様のもとにいるのではないのですか?!」
「……確かに、お前たちにしてみれば兄上の元が一番安全か。さて、どうする? シャルロッテ」
アレクセイの腕が、ミサキの肩と腰に回る。背中にぴったりと彼の厚い胸板が触れた。そのアレクセイの背後を守るように、異父弟であるドラゴンが小さく旋回している。
「コイツごと貫けば、俺は死ぬが……どうせお前にその度胸はないだろう?」
「……くっ」
「ミサキは兄上の花嫁でもあるからな。傷つけることもできないだろう?」
「卑怯な真似を……!」
シャルロッテは、唇を噛んだ。そこから、血がぽたりと流れ始めていく。
「……シャルロッテさんがこんなことをするのは、ミハイルに魔王になってもらうため?」
「ええ、もちろんです。武力でもって国を豊かにしようとする魔王様やアレクセイ様とはちがい、ミハイル様は、全ての民が等しく豊かな生活を送れるように政治そのものを変えてくださる……私が生まれ育った村でも、皆貧しい暮らしを強いられている……その生活を変えるためにも、なんとしてもミハイル様には魔王になって頂かなければならないのです!」
「それは、そうだけど……もっと別のやり方があったんじゃ」
「別のやり方! それはミサキ様がミハイル様の子を宿すことを祈ることでしょうか?! それなら、毎晩しておりますよ! それでも、その兆候もなければ……アレクセイ様のお相手ばかりなさる! それならばいっそ、アレクセイ様を亡き者にした方が……」
シャルロッテはぎゅっと短刀を両手で握り直す。そして、ミサキとアレクセイの正面に立った。
「ミサキ様、避けてください」
「絶対いや」
「ならば、貴女もろとも……刺し殺します。貴女が亡き者になれば、また新しい花嫁が来るに違いない……ですから!」
シャルロッテは目を瞑る。そして、駆け出していた。その切っ先は、真っ直ぐミサキとアレクセイに向いている。アレクセイはミサキを抱いていた腕を離し、もう一度自分の胸の中に引きこんだ。そして、無理やり体を半回転させる。まるでミサキをかばうように……ミサキも抗うが、男の力に勝てることはなかった。
「……っ」
しかし、いつまで経っても痛みや衝撃が襲ってこない。ミサキとアレクセイは恐る恐る目を開ける。
二人の視界に飛び込んできたのは、腕から血を流すミハイルと茫然としたシャルロッテの姿だった。
「兄上!」
アレクセイは焦った様子でミハイルの元に駆け寄った。ミサキもそれに続く。ミハイルはそのままズルズルと床に崩れ落ちていった。
「そ、そんな……」
シャルロッテも、我を失ったように座り込んだ。体中が震え、目からは涙がこぼれている。
「兄上、大丈夫ですか!」
「アレクセイ……体は揺すらないでください、これくらいの傷なら……自分で治せます」
「でも、血が……いっぱい出てる」
「ミサキ……こんなところにいたのですね」
「……え?」
「探しましたよ、城の気配が不穏なのが気になって……貴女に関しても、良くない情報ばかり耳に入るようになったから」
ミハイルは刺さったままの短刀を腕から引き抜く、溢れるように血が流れる患部を抑え……ゆっくりと呪文を唱えていった。幾ばくもしない内に出血が止まり、ミハイルは楽になったのかほっと息を吐いた。
「良くない話と言うのは、どういうことだ。兄上」
「たった今シャルロッテが話していた通りです。……ミサキを亡き者にして、新しい花嫁を召喚させようと。魔術部はもう召喚の準備を始めていると」
「まさか、セルゲイが?」
「ええ……だから、私は……」
ミハイルは、ミサキの腕を掴んだ。その力は、弱弱しい。
「貴女を、元の世界に返そうと決めたんです」
「え? ど、どういうこと?」
「その言葉通りですよ。貴女を亡くすくらいなら、例え二度と会えなくても……貴女を生かす方法を考えたい」
ミサキの足元が、青白く光りはじめる。幾重にも重ねられた魔法陣だ。
「それで、いいですね。アレクセイも」
「ああ……仕方がないな」
「アレクセイ……? なんで、アレクセイまでそんなことを」
「お前を守るためだ、達者で暮らすんだな」
アレクセイはミサキに手を伸ばし、優しく抱きしめた。そして耳元で小さくこう囁くのだ。
――愛してる
と。ミサキの目からは涙がこぼれる、竜巻のような風が吹きミサキを包み込んでいく。ミサキがいくら叫んでも、もう彼らにその言葉は届かない。ミサキは……祈るように目を閉じていた。
「どうして、貴女がこんなところに! ……ミハイル様のもとにいるのではないのですか?!」
「……確かに、お前たちにしてみれば兄上の元が一番安全か。さて、どうする? シャルロッテ」
アレクセイの腕が、ミサキの肩と腰に回る。背中にぴったりと彼の厚い胸板が触れた。そのアレクセイの背後を守るように、異父弟であるドラゴンが小さく旋回している。
「コイツごと貫けば、俺は死ぬが……どうせお前にその度胸はないだろう?」
「……くっ」
「ミサキは兄上の花嫁でもあるからな。傷つけることもできないだろう?」
「卑怯な真似を……!」
シャルロッテは、唇を噛んだ。そこから、血がぽたりと流れ始めていく。
「……シャルロッテさんがこんなことをするのは、ミハイルに魔王になってもらうため?」
「ええ、もちろんです。武力でもって国を豊かにしようとする魔王様やアレクセイ様とはちがい、ミハイル様は、全ての民が等しく豊かな生活を送れるように政治そのものを変えてくださる……私が生まれ育った村でも、皆貧しい暮らしを強いられている……その生活を変えるためにも、なんとしてもミハイル様には魔王になって頂かなければならないのです!」
「それは、そうだけど……もっと別のやり方があったんじゃ」
「別のやり方! それはミサキ様がミハイル様の子を宿すことを祈ることでしょうか?! それなら、毎晩しておりますよ! それでも、その兆候もなければ……アレクセイ様のお相手ばかりなさる! それならばいっそ、アレクセイ様を亡き者にした方が……」
シャルロッテはぎゅっと短刀を両手で握り直す。そして、ミサキとアレクセイの正面に立った。
「ミサキ様、避けてください」
「絶対いや」
「ならば、貴女もろとも……刺し殺します。貴女が亡き者になれば、また新しい花嫁が来るに違いない……ですから!」
シャルロッテは目を瞑る。そして、駆け出していた。その切っ先は、真っ直ぐミサキとアレクセイに向いている。アレクセイはミサキを抱いていた腕を離し、もう一度自分の胸の中に引きこんだ。そして、無理やり体を半回転させる。まるでミサキをかばうように……ミサキも抗うが、男の力に勝てることはなかった。
「……っ」
しかし、いつまで経っても痛みや衝撃が襲ってこない。ミサキとアレクセイは恐る恐る目を開ける。
二人の視界に飛び込んできたのは、腕から血を流すミハイルと茫然としたシャルロッテの姿だった。
「兄上!」
アレクセイは焦った様子でミハイルの元に駆け寄った。ミサキもそれに続く。ミハイルはそのままズルズルと床に崩れ落ちていった。
「そ、そんな……」
シャルロッテも、我を失ったように座り込んだ。体中が震え、目からは涙がこぼれている。
「兄上、大丈夫ですか!」
「アレクセイ……体は揺すらないでください、これくらいの傷なら……自分で治せます」
「でも、血が……いっぱい出てる」
「ミサキ……こんなところにいたのですね」
「……え?」
「探しましたよ、城の気配が不穏なのが気になって……貴女に関しても、良くない情報ばかり耳に入るようになったから」
ミハイルは刺さったままの短刀を腕から引き抜く、溢れるように血が流れる患部を抑え……ゆっくりと呪文を唱えていった。幾ばくもしない内に出血が止まり、ミハイルは楽になったのかほっと息を吐いた。
「良くない話と言うのは、どういうことだ。兄上」
「たった今シャルロッテが話していた通りです。……ミサキを亡き者にして、新しい花嫁を召喚させようと。魔術部はもう召喚の準備を始めていると」
「まさか、セルゲイが?」
「ええ……だから、私は……」
ミハイルは、ミサキの腕を掴んだ。その力は、弱弱しい。
「貴女を、元の世界に返そうと決めたんです」
「え? ど、どういうこと?」
「その言葉通りですよ。貴女を亡くすくらいなら、例え二度と会えなくても……貴女を生かす方法を考えたい」
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「それで、いいですね。アレクセイも」
「ああ……仕方がないな」
「アレクセイ……? なんで、アレクセイまでそんなことを」
「お前を守るためだ、達者で暮らすんだな」
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――愛してる
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