愛以上、恋未満 ―処女未亡人は、危険なオトコの愛欲に溺れる―

indi子/金色魚々子

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3話

3話 ④

 プリプリと怒っている琴音さんの後ろをついて行く。

「何かトラブルでもあったんですか?」
「ああ、アレ? なんかクラブの中で勝手にシャブ売ってた奴がいたんだって。それを、加州組の人たちが絞めに来たみたい」
「カシュウグミ?」
「莉乃は知らなくてもいい事! しばらくは怖くて、あそこには行けないね~」

 そう話す琴音さんは全く恐怖なんて感じていない様子に見えた。

 ゆっくりと開いた記憶の蓋、そこにいたのは……まぎれもなく、加州さんの姿があった。

「私、加州さんと会ってたんですね」
「覚えてなかったのね。あの後、莉乃は家の事で大変そうだったから、忙しくて忘れちゃったのかもね。でも、私はヒヤヒヤしたんだよ、莉乃があの加州暁生に話しかけちゃってさぁ」

 ラストのドルチェを一口食べた琴音さんは、その時の事を思い出したかのように体をブルリと震わせる。

「加州さんってそんなに有名なんですか?」
「有名っていうか、私が良く行くクラブを仕切ってるのは加州暁生だったから顔も見る事あったし、自然と覚えたと言うか……あ」

 琴音さんはスプーンを持ったまま、私の背後を見て口をあんぐりと開ける。私は琴音さんの視線の方向に振り返った。

「か、加州さん?!」

 人混みを掻き分けるように、加州さんがこちらに向かってきているのに気づいた。その姿は、どんどん近づいて来ている。

「か、加州暁生……!」

 琴音さんの顔が驚きのあまり青白くなっていく。私も驚きのあまり口があんぐりと開いていく。

「莉乃、友達か?」
「加州さん、あの、どうしてここに……?」
「……近くまで来たら、莉乃の姿が見えたんだ」
「はぁ、そうですか……」

 琴音さんは青い顔のまま、ドルチェを素早く食べ進めていく。あっという間にお皿は空になり、財布を開いていた。

「じゃあ、私はこれで失礼するね。よ、用事もあるし」
「え? 琴音さん?」

 お金をテーブルに置いていこうとしたけれど、加州さんがそれを止める。

「ここの会計は私がするので」

 加州さんの声音はよそいきの優しいものだった。しかし、琴音さんは硬直していく。
 
「えぇっ! で、でも、さすがにそれは悪いというか……」
「気にしないでください。莉乃の友人なら、ぜひご馳走させてください」

 助け船を求めるように私を見つめる琴音さんに、私は何度も忙しなく頷いた。こうなってしまったら、加州さんは頑なだ。琴音さんは諦めたように大きく息を吐き「それなら」と頭を下げていた。

「ありがとうございます。ごちそうさまです……」
「いえ。莉乃、払ってくるから待ってて」
「はいっ!」

 琴音さんは開けていた財布を閉じて、そのままカバンにしまっていく。私ははっと思い出したことがあった。

「琴音さん、連絡先教えてください!」
「あ、そっか。私莉乃の新しい連絡先知らないもんね」

 スマートフォンを見せ合って、互いに連絡先を交換する。
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