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4話
4話 ②
***
「こ、こんなに立派なじゃなくても大丈夫です!」
「いいから、気にするな」
「気にしますってば!」
朝食を食べて身支度を整えた後、私たちはさっそく外出した。以前フジイさんが運転していた車ではなく、二人乗りの小さな車(私でも知っている、高級車のエンブレムがついていた)に乗り、向かったのは繁華街近くにある調理用品の専門店だった。
「この店、うちが出店するときに全部任せているところなんだ。店長とも親しくてな」
そう話す加州さんを追いかけるように、私もお店の中に入っていく。すぐにお店の人が近づいて来て、加州さんに挨拶をした。彼が話す通り、随分お得様のようだった。少しお店の中を見て回っていると、店長というネームタグをつけた男性が近づいて来る。
「加州さん、ご無沙汰しています」
「ああ、久しぶり」
「本日はいかがされました? 新しくお店を出すなんて噂、聞いてないですけど」
店長は私を見つけると、営業スマイルで小さく頭を下げる。
「今日はうちで使う物を見に来たんだ」
「家で? 加州さん、ついに料理でも始めました?」
「俺じゃない、使うのはこっちだ」
そう言って、加州さんは私の肩に手を乗せて引き寄せた。
「えっ!」
店長は、とても驚いたのかギョッと大きく目を広げた。
「て、てっきりその子に新しいお店持たせるのかと思ったんですけど、違うんですか!?」
「なんだよ、それ」
「だって、加州さんがこの店に女の人連れてくるのはいつもそうだから……。加州さんが女性と暮らしてるなんて、聞いたことないですよ。部屋に連れ込んだならまだしも!」
「一緒に暮らし始めたのも最近だからな……何か使いやすいものはないか?」
「彼女さんは、こだわりとかありますか?」
「へっ!?」
確かに、この店長は今私を見て「彼女さん」と言った。決してそういう関係ではない……つもりなので私は否定したかったけれど、店長は「家庭用品ならこちらです」と歩き出してしまう。私は加州さんに肩を抱かれたまま、彼を追った。
「せっかくだし、家にある物は全て捨てて、全部新調するかな」
「え?」
「あはは! そうして頂けるなら、うちも嬉しいです。少しくらいはお値引きもいたしますよ。さ、彼女さん選んでください」
目の前には、高級メーカーのお鍋やフライパンが並んでいる。値札を見ると、今まで見たことのない、目玉が飛び出るくらいの金額だった。私はぶんぶんと首を横に振る。
「どうした、莉乃。必要だと言っていただろう? なんでもいいぞ」
「そうですよ、彼女さん。加州さんの機嫌がいいうちにおねだりしておかないと!」
「でも、どれも全部お高いじゃないですか! こ、こんなに立派なじゃなくても大丈夫です!」
「いいから、気にするな」
「気にしますってば!」
私たちの言い争いを、店長はなんだかほほえましく見守っている。頑なに拒む私の様子を見て、加州さんは業を煮やしたらしい。少しため息をついて、店長の方を向いた。
「悪い、適当に見繕ってくれ。いくらかかってもいい」
「毎度、ありがとうございます!」
「か、加州さん……っ!」
最終的に、キッチン雑貨も含めて店長さんがすべて選んでしまった。後日家に届くように手配もされ、私は買い物の実感がないまま店を後にする。
「あんな高級な物、使いこなせるかな……」
車に戻り不安を口にすると、加州さんは私の頭をポンポンと軽く撫でる。
「使いこなそうとしなくてもいい。莉乃が、普段使っている通りやってくれれば」
「でも……買ってもらってばかりだと悪いですし……」
「莉乃が作った飯を食えるのが楽しみなんだ、だから、気にしなくてもいい」
「そんなに立派なお料理は作れませんよ」
肩をすぼめながらそう言うと、加州さんは柔らかく笑った。
「莉乃が普段から食べているようなもので構わないさ。大げさなものじゃない方が、こっちも安心するしな」
「こ、こんなに立派なじゃなくても大丈夫です!」
「いいから、気にするな」
「気にしますってば!」
朝食を食べて身支度を整えた後、私たちはさっそく外出した。以前フジイさんが運転していた車ではなく、二人乗りの小さな車(私でも知っている、高級車のエンブレムがついていた)に乗り、向かったのは繁華街近くにある調理用品の専門店だった。
「この店、うちが出店するときに全部任せているところなんだ。店長とも親しくてな」
そう話す加州さんを追いかけるように、私もお店の中に入っていく。すぐにお店の人が近づいて来て、加州さんに挨拶をした。彼が話す通り、随分お得様のようだった。少しお店の中を見て回っていると、店長というネームタグをつけた男性が近づいて来る。
「加州さん、ご無沙汰しています」
「ああ、久しぶり」
「本日はいかがされました? 新しくお店を出すなんて噂、聞いてないですけど」
店長は私を見つけると、営業スマイルで小さく頭を下げる。
「今日はうちで使う物を見に来たんだ」
「家で? 加州さん、ついに料理でも始めました?」
「俺じゃない、使うのはこっちだ」
そう言って、加州さんは私の肩に手を乗せて引き寄せた。
「えっ!」
店長は、とても驚いたのかギョッと大きく目を広げた。
「て、てっきりその子に新しいお店持たせるのかと思ったんですけど、違うんですか!?」
「なんだよ、それ」
「だって、加州さんがこの店に女の人連れてくるのはいつもそうだから……。加州さんが女性と暮らしてるなんて、聞いたことないですよ。部屋に連れ込んだならまだしも!」
「一緒に暮らし始めたのも最近だからな……何か使いやすいものはないか?」
「彼女さんは、こだわりとかありますか?」
「へっ!?」
確かに、この店長は今私を見て「彼女さん」と言った。決してそういう関係ではない……つもりなので私は否定したかったけれど、店長は「家庭用品ならこちらです」と歩き出してしまう。私は加州さんに肩を抱かれたまま、彼を追った。
「せっかくだし、家にある物は全て捨てて、全部新調するかな」
「え?」
「あはは! そうして頂けるなら、うちも嬉しいです。少しくらいはお値引きもいたしますよ。さ、彼女さん選んでください」
目の前には、高級メーカーのお鍋やフライパンが並んでいる。値札を見ると、今まで見たことのない、目玉が飛び出るくらいの金額だった。私はぶんぶんと首を横に振る。
「どうした、莉乃。必要だと言っていただろう? なんでもいいぞ」
「そうですよ、彼女さん。加州さんの機嫌がいいうちにおねだりしておかないと!」
「でも、どれも全部お高いじゃないですか! こ、こんなに立派なじゃなくても大丈夫です!」
「いいから、気にするな」
「気にしますってば!」
私たちの言い争いを、店長はなんだかほほえましく見守っている。頑なに拒む私の様子を見て、加州さんは業を煮やしたらしい。少しため息をついて、店長の方を向いた。
「悪い、適当に見繕ってくれ。いくらかかってもいい」
「毎度、ありがとうございます!」
「か、加州さん……っ!」
最終的に、キッチン雑貨も含めて店長さんがすべて選んでしまった。後日家に届くように手配もされ、私は買い物の実感がないまま店を後にする。
「あんな高級な物、使いこなせるかな……」
車に戻り不安を口にすると、加州さんは私の頭をポンポンと軽く撫でる。
「使いこなそうとしなくてもいい。莉乃が、普段使っている通りやってくれれば」
「でも……買ってもらってばかりだと悪いですし……」
「莉乃が作った飯を食えるのが楽しみなんだ、だから、気にしなくてもいい」
「そんなに立派なお料理は作れませんよ」
肩をすぼめながらそう言うと、加州さんは柔らかく笑った。
「莉乃が普段から食べているようなもので構わないさ。大げさなものじゃない方が、こっちも安心するしな」
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