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第一章
シアの服
しおりを挟むギルドを後にした俺は、街の中を歩き服屋へとやってきていた。店の中へと入ると、見るからに質のいい服を身につけた店員がこちらへと歩み寄ってくる。
「いらっしゃいませ。本日はどのような服をお探しでしょうか?」
「あぁ、子供用の服でフードが着いているものを探しているんだが。」
「もちろんございますよ。ただいま持って参ります。」
そう言ってぺこりと一礼し、その店員は奥のほうへと消えていった。少しすると何着か服を抱えて戻ってきた。
「お勧めはこの3点になります。」
ふむ、見た目は普通のパーカーだな。ひとつは黒が主体になっており水色のラインの入っているもの。ふたつめは真っ白のパーカー。みっつめは黒が主体で、ピンク色のラインが入っている。ひとつめの色違いだろう。
「全部でいくらだ?」
「3点で金貨1枚と銀貨50枚になります。」
「よし、買った。全てもらおう。」
別に自分の服は一着でも構わないが、女の子はそうはいかないだろう。何着か買っててあげないとな。
「ありがとうございます。それでは袋詰め致しますね。」
「あ、そうだ。後、少女用の下着も何着かおすすめのを一緒に入れてくれ。」
「かしこまりました。」
店員に合計の金を払い、服が入った袋を受け取った俺は人気のない路地に入り、シアに一声かける。
「シア、出て来ていいぞ。」
するとマジックバッグの中からシアが飛び出してきた。
「この中から好きなのを着るといい、そしたら一緒に市場へ行こう。」
「ふわぁぁ、人間さんの服ってかわいいぃ~。どれにしようかな~。」
シアに先ほど買った服を見せてあげると目を輝かせている。
「うーん、これにするっ!!」
シアが選んだのは、黒地に水色のラインが入ったパーカーだった。下着もしっかりと履き替えて、パーカーにしゅるっと袖を通すと、シアは俺の前でくるりと回って見せてくれた。
「似合っているぞ。」
「えへへ~ありがとう!!」
「それじゃあ行こうか?フード被るの忘れないようにな。」
フードをかぶればシアのトレードマークの耳を見られる心配もない。一緒に歩いても問題ないだろう。
「うん!!」
はぐれないようにシアと手を繋ぎ市場のほうへと向かった。
それから歩くこと5分程でこの街の市場に着いた。今は昼過ぎだが、まだ物は残っているようだ。
そして思った通り……見たこともないものがたくさん並んでいる。
しかし、その中で見たことがあるような物もいくつかあった。
「これはトマトか?」
野菜売り場にあった、既視感のある赤く丸い野菜を手に取った。
「それはマトマの実だよ、少し種は酸っぱいけど果肉は甘いんだ。」
そう売り場の人が説明してくれた。説明を聞く限り完全にトマトだろうな、ひとまず買ってみようトマトなら使い道はたくさんある。
「これを10個くれないか?」
「まいどっ!!銀貨5枚だよ。」
「これでいいな?」
「はい、丁度ねありがとさん。」
いい買い物ができた。珍しい物を買いたい気持ちはあったが今は我慢だ。まず、毎日の食事をどうにかしなければ。
「ヒイラギお兄さん、それ美味しいの?」
シアは気になったのか、マトマの実を指差して問いかけてくる。
「あぁ、このままでも美味しいと思うが。料理するともっと美味しいぞ。」
「ふわぁぁ、楽しみ~。」
楽しみにしててくれ。トマトは本当にいろんなものに使えるからな。さて、あとは果物と肉か魚、それと卵がほしいな。
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