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第三章
腹ペコの獣人族達
しおりを挟む前掛けを外しながら厨房を出て背伸びする。
「ん~っ、ふぅ……つかれ………た。」
そして店の外に広がっていた光景をみて言葉につまった。驚くことにハウスキットの前には、先ほどのベルグの部下の獣人族達が詰めかけていたのだ。
必死に匂いを嗅ごうと鼻をスンスンならし、挙げ句の果てにはもうヨダレが垂れてきそうになっている獣人もいた。
ただでさえ空腹だったところに、肉の焼ける香ばしい匂いを嗅いでしまってもう我慢の限界なのだろうな。
その光景に隅で縮こまっていたシアは、厨房から出てきた俺に気が付くと瞬間移動で即座に足元に移動しピタッとくっついてきた。
尻尾がピンと伸び毛が少し逆立っている。この数の獣人族は流石に怖かったらしい。
「もう大丈夫、怖かったな。」
ポンポンと頭を撫でながらシアを落ち着かせた。撫でているうちに逆立っていた毛が徐々にもとに戻っていく。
「うん、お兄さんありがとう。」
よかった、喋れるぐらいまでは落ち着いたようだ。するとベルグが獣人達をかき分けハウスキットの扉をコンコンっとノックした。
「入っていいぞ~。」
今はシアがくっついていて動けないため、扉の向こうにいるベルグに聞こえるように少し大きめの声で言った。
「それじゃ失礼するぜ?いや…部下がすまない、みんなここから出てくる匂いに誘われちまったみたいなんだ。」
「大丈夫だ、それだけ空腹だったってことさ。料理はもうできたから運ぶの手伝ってくれ。」
「おう!!」
そして厨房へ向かおうとすると、ベルグは俺の足にくっついておびえているシアに気が付いた。
「あちゃ~、シアちゃんにはちょっとキツかったか。ちょっと待ってろよ!!」
するとベルグはバタバタと再び外へ出て部下達へと向かって声を上げた。
「お前らぁ!!か弱い女の子が怖がってるのが見えねぇのか!?メシが食いてぇなら、さっさと全員で宴会の会場作っとけ!!」
「「「「「「りょ、了解!!」」」」」」
ベルグが部下達を一喝すると、バタバタと走っていきあっという間にベルグ以外ハウスキットの前にはいなくなった。
部下がいなくなったのを確認してベルグは再び店の中へと入ってきた。
「ごめんなシアちゃん、怖かったろ?」
ベルグはシアに謝り、気遣った。するとシアは俺の後ろから少しだけ顔を出して…。
「おじさん、あり…がとう。」
と、小さくお礼を言った。
「おう!!」
「な?シアいい人だったろ?」
「うん!!」
シアは少しだけベルグには慣れたようだ。大きな一歩だな。
さてと、冷める前に料理を運ばないとな。ドーナとランにも手伝ってもらい、ベルグの部下が設営しているであろう宴会会場へと料理を運んだのだった。
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