もんむすッ!めたもるふぉ~ぜ☆~世界に♂はボク一人!?~

しゃむしぇる

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第一章 転生そして成長

第35話 少し変わった日常

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 そして名も無き天使との戦いから数日の時が流れた……

 天使の脅威も去り、一時的に平和でいつも通りの日常を取り戻したルア達。しかし、一つだけ変わったことがある。

 それは、ルアと由良の生活の拠点がロレットの城に変わったことだ。
 というのも、ルアがレトの言葉の通りにロレットにお菓子を振る舞ったりしていたところ……彼の作るお菓子をいたく気に入ったロレットが城の給仕係として雇われてしまったのだ。

 そして今日もルアは、ロレットに食べてもらうためお菓子作りに勤しんでいた。

「後はこれを焼けばオッケー。」

 パタンとオーブンの扉を閉めてルアは、一つ息を吐き出した。

「焼いてるうちにロレットさんの様子を見てこようかな。」

 お菓子が焼き上がるまで、まだ時間がかかる。なのでルアは、城の中庭で剣の稽古に勤しんでいるであろう、ロレットの様子を見に行くことにした。

 廊下に出て中庭へとルアが顔を出すと、彼が思っていた通りロレットは剣の稽古真っ最中だった。
 相手は自身の魔法で生み出したドッペルゲンガー……つまるところの自分の分身だ。今の自分と同じ力量、技術を持ってドッペルゲンガーは生まれてくる。

 しかし、ロレットは事も無げに一太刀で自分のドッペルゲンガーを切り捨てた。
 そして剣を鞘に納めると、大きく息を吐き出し、彼女の全身からどっ……と汗が吹き出てきた。

 一度呼吸を整えると再びロレットはドッペルゲンガーを生み出して立ち会い始める。

 そんな彼女の姿を遠目で眺めていると、後ろから声をかけられた。

「相変わらず、自分に厳しいやつじゃのぉ~。」

「あ、お母さん。」

 ゆらゆらと金色の尻尾を揺らしながら歩いてきたのは由良だった。ひたすらに自分のドッペルゲンガーと剣を交えるロレットの姿を見て、呆れたようにため息を吐いている。

「自分を超えて更に自分を超えた自分と戦う……あやつは根っからの合理主義者なのじゃ。」

「でもすごいと思うよ?自分を超えるって……なかなかできることじゃないと思う。」

 ドッペルゲンガーと剣を交えるロレットの姿を見て、ふとルアはあることを思った。

「ボクもあの魔法使えるようになれば……いろいろ便利になりそうなんだけどな~。」

 単純な思考でルアは言う。しかし、そんなルアに由良は現実を突きつけた。

「それが案外あの魔法は癖が強くてのぉ~。生み出したドッペルゲンガーは、自分が本体に成り代わるために本体に襲いかかってくるのじゃ。」

「え゛っ…………そんなに怖い魔法なの!?」

 彼の想像とは裏腹に恐ろしい一面を含んだ魔法だということを由良に教えられ、思わずルアは驚いた表情を浮かべる。

「うむ、じゃから本来は実用性皆無の魔法なのじゃ。あやつにとっては良い修行相手を生み出す魔法になっておるがのぉ~。」

「う~ん……ボクが二人になったらいろいろと捗ると思ったんだけどなぁ~。」

 そうルアが残念そうに溢すと、その言葉に由良の狐耳がピコンと反応した。

「…………ルアが二人…………ルアが二人…………。」

 深く考えるような素振りを見せる由良。そんな彼女の鼻からポタリと一滴鼻血が溢れてきた。

「ルアや、ちとわしはまた魔法の研究をしてくるでの!!ロレットのことは頼んだのじゃ!!」

「あっ!?ちょっと、お母さん!?…………行っちゃった。」

 由良はルアの制止の言葉も聞かずに、すごい勢いで城の中へと戻っていった。

 またよからぬことを企んでいるんだろう……と頭のなかで思いながら、ルアは一つため息を吐いた。

 そんな彼のもとに、剣の稽古を終えたロレットが歩いてくる。

「見物かルア?」

 ふわふわのタオルで体を伝う汗を拭いながら、ロレットはルアに問いかけた。

「あ、は、はいっ!」

「フフフ、そう畏まらなくて良いと言っただろう?それで見ていてどうだった?」

「えっと……兎に角すごいなってしか思えませんでした。」

「すごい……か。(我から見れば君や由良の方がよっぽどすごいのだがな。だが、褒められて悪い気はしないな。)」

 ロレットは内心少し照れていたのだが、決して面には出さないように必死に沸き上がる感情を圧し殺していた。

「っと、今日のお菓子は何を作ったんだ?クッキーか?ケーキか?我は甘いものなら大歓迎だぞ?」

「今日はシュークリームを作りました。そろそろ焼き上がると思います。」

「しゅーくりーむ……とな。はたまた聞いたことがないお菓子だ。だが、焼きたてのお菓子を逃すわけにはいくまいな。」

 タオルを首にかけると、ロレットは軽々とルアのことを抱き抱えた。

「わわっ!?ロレットさん!?」

「さ、運動後の甘味を味わいに行くぞ!!」

 そしてルアのことを抱き抱えたまま、ロレットはダッシュで城の中へと駆け込んでいくのだった。

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