もんむすッ!めたもるふぉ~ぜ☆~世界に♂はボク一人!?~

しゃむしぇる

文字の大きさ
52 / 249
第一章 転生そして成長

第50話 狐につままれたのは①

しおりを挟む
 ルアのことを包み込んだ尻尾が何度も揉みほぐすように、ぐにゅぐにゅと蠢くとピタリと動きを止め、ゆっくりと尻尾が開き始めた。

 そして中から現れたのは、ルアではなく東雲の本来の姿だった。

「うむ、やはりこの姿の方がしっくりくる。」

 体を動かして感触を確認している東雲に由良は少し焦りながら問いかける。

「る、ルアはどこに行ってしまったのですじゃ!?」

「ん?ルアならちゃんとここにいる。」

 ポンポン……と東雲は自分の胸を叩いてみせる。

「これはあくまでもルアの体を借りているだけだ。まぁ、妾がその気になればこの体を完全に我が物にすることもできるのだが…………。」

 ふと、東雲は上の方を見上げた、

「それはそれで妾をこの世に呼んだ輩にお叱りを受けそうだからな。」

 残念そうな表情を浮かべながらも、東雲は再び由良の方へと向き直る。

「ま、このルアの体を妾が奪うことはない。この者は妾がこの世界に留まるためのあるじのような存在だからな。」

「それを聞いて少し安心しましたのじゃ。」

「くくく、さて……では早速始めようか……と言いたいところだが。」

「…………??」

 東雲はドアの向こうへと視線を向ける。

「ロレット……と言っていたか?そこにいるのはバレているぞ?」

「………………。」

 東雲の言葉を聞いて、観念したように扉の向こう側からロレットが現れる。
 そして彼女の姿を見た東雲は、少し首をかしげた。

「おん?前と少し姿が違うな……妾が良く知っている者に似ている。」

 東雲は興味深そうにロレットの姿を眺め始めた。すると、何か確信めいた様子でロレットに問いかける。

「……お前、もしやコレットの孫か?」

「……!!お婆様を知っているのか!?」

 突然驚きの声をあげたロレットに、東雲はコクリと頷いた。

「もちろん知っている。……妾とコレットは親友であり、良き好敵手だったからな。くくく、それにしてもこの世界に再び生を受けてからというものの……こうも面白い事がたて続きに起こると。」

「「~~~っ!!」」

 ニヤリ……と東雲が不敵な笑みを浮かべた瞬間、由良とロレットの背筋を冷たいものが走り抜けた。

「折角だ、妾の跡を継ぐ者とコレットの跡を継ぐ者二人の力を試してやろう。」

 パチンと東雲が指を鳴らすと、三人の足元に魔法陣が現れそこから溢れでた光が三人を包みこんだ。

 そして気が付けば、三人はどこか広い平原へと移動していた。

「ここならば近くに何もおらん、存分に力を発揮すると良い。」 

「フッ……それはありがたい話だ…………なっ!!」

 真っ先に東雲に向かって行ったのは、ロレットだった。オリハルコンでできた剣を振りかざし切りかかる。

 しかし、ロレットの剣はあっさりと空を切り、そのまま地面へと突き刺さってしまった。

「ほぅ、前よりも速度も力もかなり上がっている。龍種の進化はやはり面白い。それに、そのつるぎも……随分良い金属を使っている。」

 地面に刺さった剣を引き抜いているロレットの隣で、東雲はロレットの力を分析している。

「くっ……このっ!!」

 地面から剣を引き抜き、再び東雲へと切りかかったロレットだったが、今度は東雲の人指し指と中指の間に挟まれピタリと動かなくなってしまった。

「くくく、流石にこの剣を指一本で止めるのは危うい。だから二本使わせて貰ったぞ?」

「ぐぐっ……な、嘗めた真似を…………。」

 ピタリと動かなくなった二人。そんな時、由良が声をあげた。

「狐炎術 狐火!!」

 由良の尻尾から生まれた炎の体を持つ九体の狐が、一斉に東雲へと向かって飛びかかっていく。

「ん?」

 その狐たちに一瞬気をとられた東雲。

 それをロレットは見逃さなかった。一瞬力が緩んだ隙に指に挟まれた剣を引き抜き、下段からかち上げるように剣を振る。

 ロレットの剣と由良の狐火……二つの攻撃が自身に近づいてくる最中、ふと東雲は笑った。

「くくくっ。」

 そして狐火が爆ぜ、その爆風の中をロレットの剣が切り裂いた。

「手応えありだっ!!」

 ロレットは確かに何かを切った感触を手に残していた。それは由良も同じで、確かに狐火が東雲に当たったと確信していた……。

 そして爆発によって起こった土煙が晴れてくると、二人は自分の目を疑った。

「なっ……!?」

「まさかっ!!」

 そこに転がっていたのは、真っ二つになり、焦げ目がついた丸太だった。 

 二人がキョロキョロと当たりを見渡すが、周りに東雲の姿は見当たらない。

 そんな時、由良は突然後ろからポンポンと肩を叩かれた。バッと後ろを振り返ると、次の瞬間……由良の頬っぺたに東雲の指が当てられていた。

「くっくっく、由良よ。狐につままれたというのは正にこういうことなのだろうなぁ?」

 由良の頬っぺたに当てていた指を狐のかたちに変えると、さぞかし楽しそうに笑いながら東雲は言ったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...