もんむすッ！めたもるふぉ～ぜ☆～世界に♂はボク一人！？～

第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第168話 晩餐

　アルの提案した修業を終えて、体中まんべんなくトリトニーのヒーリングを受けた頃には空はすっかり暗くなってしまっていた。

「ふぅ……今日のトリトニーさんもすごい激しかったなぁ。」

　久しぶりの施術とあってか、今日のルアに対するトリトニーのヒーリングは一段と激しいものだった。ルア以外の女性陣はいまだに彼女のヒーリングを受けている最中だ。

　彼女たちがトリトニーに施術を受けている最中、ルアは一人城の中にある厨房へと向かっていた。彼の目的は、先ほどアルに頼まれた食事の用意だ。
　彼は由良にもらったエプロンを身に纏うと、早速冷蔵庫へと向かった。大きな冷蔵庫の扉を開けると中からひんやりとした冷たい空気が溢れ出した。

　ぎっしりと並んだ食材を一つ一つ吟味しながらルアは手に取っていく。

「これと……これと…………。」

　ルアが両手から溢れるほど食材を抱えていると、突然後ろから肩を叩かれた。

「ん？リリィ？」

「ルア……ここで何してる？」

　ルアが後ろを振り返ると、そこにはリリィの姿があった。

「もうトリトニーのヒーリング……終わった？」

「うん！！ちゃんとやってもらったよ。今からみんなの料理を作るところなんだ。」

「料理…………今日はルアが作るの？」

「お母さん達は疲れてるみたいだから、今日はボクが作るよ。」

「ルアも疲れてる……違う？」

「トリトニーさんにバッチリヒーリングしてもらったから大丈夫だよ。」

　リリィへと向かって笑顔を向けるルア。そんな彼へと向かって、リリィは何本か蔦を伸ばした。

「……持つものいっぱい。リリィも手伝う。」

　ルアが両手いっぱいに抱えていた食材を全て蔦で絡めとると、リリィはルアに向かって問いかけた。

「これで……全部？」

「あ、まだあるけど……あとは自分で運べるから大丈夫。」

　そう答えたルアにリリィは少しムッとした表情を浮かべ、詰め寄る。

「ダメ……リリィが運ぶ。ルアは料理作るだけでいい。」

「え、で、でも…………。」

「ダメったらダメ。ルアは少しでも休むの。それが嫌なら……毎日トリトニーにヒーリングしてもらう。」

「そ、それは……………。」

　リリィの言葉にルアは何も言い返せなくなってしまう。

「うぅ……わかったよ。それじゃああと……これとこれと…………。」

「うん……それでいい。」

　結局折れたルアは、リリィに残りの食材も運んでもらうことにした。自分の言うこと素直に聞いたルアに、リリィは満足そうに笑みを浮かべる。

　そして大量の食材を運んでもらったルアは、リリィにお礼を告げる。

「ありがとねリリィ。」

「いいの。これも……ルアのため……だから。」

「あ、え……えっと、それじゃあ今から包丁とか火とか使うから……離れて見ててくれる？危ないからさ。」

「うん。わかった。」

　面と向かって言われたことによる恥ずかしさからか、少し表情を赤くしたルアは、リリィに離れたところで見ているように頼んだ。
　そして少し離れたところでイスにちょこんと座ったリリィの姿を見てルアは調理を始めた。

「よし……作るぞ～っ！！」

　それからのルアの調理作業は一切無駄のないものだった。あっという間に肉や魚や野菜を切り終えると、それぞれを作る予定の料理に応じて調理していく。

　そしていつもルア達がご飯を囲んでいる食卓には、どんどん完成した料理が並べられていく。
　もちろん料理の腕自体は前世から引き継がれているものだが……それに加え、所々でこちらの世界で修得した魔法を用いているため、より効率良く料理が出来るようになったようだ。

　食卓が料理で埋め尽くされそうになっている頃……トリトニーのヒーリングを終えた女性陣が料理の香りに誘われてフラフラと厨房へと入ってきた。

「おぉおぉ……今宵は豪華だな。真琴！！酒はあるか？」

「もちろん！！た～んと準備しとります～。」

　そう問いかけた東雲に、真琴は酒が入った大きな瓢箪を見せつけた。

「久しぶりのルアの手料理じゃあ～。」

「うむ、我の腹は既に限界だ。」

「ルアちゃんは本当に料理も上手ですね～。」

「んね～？一家に１人欲しい位……。」

　食卓に座りながらそうボソリと呟いたクロロ。そんな彼女にミリアが賛同した。

「あははっ♪それに関しては激しく同意できるね。私的には～料理とかそんなのよりも、ルアくんの体液の方がよっぽど魅力的だけど……。」

　せっせと料理を運ぶ健気なルアの姿を見ているミリアの口元からは今にもよだれが垂れそうになっていた。

　そして最後の料理が運ばれてくると同時に、お腹を空かせていた女性陣達は一斉に料理に飛び付くのだった。そんな彼女達の様子をルアは微笑みながら眺めていた。