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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第224話 東雲vsラグエル②
しおりを挟む(くっ、こんな力がやつにあったとは予想外だったな。)
突如として暗闇に包まれた東雲は、ラグエルが今どこにいるのかもわからずに、上空から聞こえる不穏なラッパの演奏に耳を傾けることしかできずにいた。
しかし、ラグエルの演奏が続くにつれて東雲は自分の体に異変が起こり始めていることに気が付く。
(これは……まさか体の感覚が徐々になくなってきているのか?)
視覚を奪われた次は、嗅覚がふと無くなっていることに気が付く。鼻から息を吸っても何の香りもしないどころか、鼻で息をしているのかすらもわからなくなってきている。そこの感覚自体がなくなってきているのだ。
東雲がそれに気が付くと同時に、上空から声が響く。
「どうですかねぇ~?すこ~しずつ体の感覚を奪われていく感覚は。あ、聴覚だけは最後まで残してあげますから安心してくださいねぇ~?うえへへへぇ~。」
うすら笑みを浮かべているであろうラグエルに反発しようと、東雲は声を出そうとしたが……。
「――――――――っ!?」
(声すらも封じられたか。やつの言葉からして、この気色の悪い演奏が終わるまで聴覚と命は保証されている。妾の命をとるならば心臓の鼓動を止めねばならん。故に……。)
東雲はパン!!と両手を合わせると自身の魔力に向かって命じた。
(探せ……妾を、一族を殺したものをっ!!)
そう命令すると、東雲を中心に見えない魔力の糸がクモの巣のように辺り一帯に張り巡らされていく。
そしてそれを頼りに彼女は辺りの状況、そしてラグエルの位置を洗い出していった。
(向こうにいるのはルシファーか。もう一人の天使と戦っているようだな。では……妾の真上にいるのが―――――。)
東雲は割り出したラグエルの方向に顔を向けると、ニヤリと笑う。
その瞬間、ラグエルの表情が一瞬驚きに染まる。
東雲には彼女が動揺したことまではわからなかったが……ラグエルのその一瞬の動揺が仇となる。
地面を蹴って、ラグエルへと一気に距離を詰める東雲は両手に凝縮した魔力の球を作り、それに憤怒の炎を纏わせた。
(喰らえクソ天使!!)
そして両手に作った魔力の球を一つに合わせて東雲はラグエルにそれを投げつける。
「これは……流石に喰らえませんねぇ。」
しかし、あっさりとラグエルは身を翻しそれを避けた。これで東雲の攻撃は失敗……そう思われたのだが。
「っ!?」
何かを感じ取ったのか、咄嗟に背後を振り返ったラグエルの眼前に、再び先ほどの魔力球が迫ってきていたのだ。
そしてその向こうにはニヤリと笑う東雲の姿がある。
なんとか紙一重でそれをかわすことに成功したラグエル。
しかしまた彼女の背後から魔力球が迫る。
「これは……いったいどうなって――――っ!?」
ラグエルの目には東雲の姿が二人に見えていた。彼女が避けた魔力球を二人の東雲が蹴りあっているのだ。
(流石に困惑しているようだな。ではもっと……球の数と分身の数を増やしてやろう。)
東雲の本体が口の前で印を結ぶと、ラグエルを囲うように東雲の分身が大量に現れた。
さらに東雲は先程と同じ魔力の球をいくつも作りだし分身たちへと向かって蹴った。
複雑な軌道を描いて、ラグエルを狙う魔力球。次第に避けるのが困難になり始めラグエルの体を少しずつ掠り始めた。
「あつつ、火傷したらどうするんですかねぇ~?この服もお気に入りなんですよ~?」
そんな最中、ラグエルは大量の東雲の中の一人に視線を向けると、一直線にその東雲へと急接近する。
「あなたが本物ですよねぇ?」
そして首を鷲掴みにして締め上げた。
「こういうのは~、本体を見付ければ簡単に~…………。」
首を締め上げられていた東雲はニヤリと笑うと、次の瞬間にはポン!!と音をたてて煙に姿を変えた。
「なっ、嘘……。」
そして背を向けていたラグエルにいくつもの魔力球が次々にヒットし、爆炎をあげる。
黒い煙を体から出しながら落下していくラグエルを、東雲はニヤリと笑いながら見下していた。
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