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第三章 魔族と人間と
第159話
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最初のホムンクルスによる攻撃があってから数日の時が経った。その間人間側は何の動きも見せてこない。
私達はこの時間を使ってこれからどう国を落とすかを話し合っていた。
「さて、今日みんなに集まってもらったのは~……。」
「これから人間をどうやって降伏させるか……でありんしょ?」
「まぁそれ以外僕らを呼んでまで話し合う事も無いからね。」
会議の進行を務めるアベルにジュンコとアルマスが言った。
「その通りなんだけど……何か案はある?」
「そう言われても~なかなか難しい話でありんすよ?」
「うん、彼らはまだ例の人工勇者も残してるんだよね?それだと一筋縄じゃいかないと思うよ。」
アルマスの言うとおりだ。人間側はまだ人工勇者という戦力を残している。簡単には降伏してこないだろう。
「人間側にも犠牲は出したくないんだろ?」
「もちろん。」
私がそうアベルに確認すると、彼女は即答で返してきた。
犠牲を出さないってなるとすごい難しい話なんだよな。こちらから攻めるわけにもいかないし。
はてさて、どうしたものかな。
各々悩み、沈黙の時間が過ぎていくなか……ふとアルマスが口を開いた。
「例えば……だけど、天気をずっと晴れにするって言うのはどうだろう?」
「それ何の意味があるの?天気がずっと晴れって寧ろ良いことじゃん?」
「……いや、そうでもないぞ?」
「えっ?」
私はアルマスの案の意図がわかってしまった。心底恐ろしい事を思い付くな。
「ずっと晴れが続くってことは、雨が降らないってことだ。つまり、農作物が育たなくなる。」
「そうなったらこれから先待ち構えてる冬を越せない。って訳だね。」
この世界なりの兵糧攻め……というやつだな。
「でもでも、食べ物が失くなっちゃったら餓死する人とか出てきちゃうんじゃない?」
アルマスの案を理解したアベルが心配そうに言った。
「そこはこっちの対応次第だな。餓えている人間を迎え入れられるように準備を整えておけば問題ないだろう。」
チラリとジュンコの方に視線を向けると、彼女は敏感にお金の匂いを嗅ぎとったようで、にんまりと笑みを浮かべた。
「おやおや?なにやら香しいお金の匂いがするでありんすねぇ~。これは帰ったら備蓄と今年の収穫量を計算しないといけないでありんすねぇ~。」
「僕の方でも少し援助はするよ。とはいっても肉とか魚は期待しないでほしいけど。」
ジュンコとアルマスは、食料の問題を共に解決してくれるらしい。ジュンコの方は少し値がつきそうだが……まぁ仕方のない出費だろう。
「え~っと……つまりどういうことになったのかな?」
「食べ物が失くなっても心配なくなったってことだ。ただちょっと、この国の出費が増えそうだがな。」
「でも出費がちょっと増えるだけで誰かが死んだりする訳じゃないんだよね?」
「あぁ、それはない。」
「なら大丈夫……かな。国の出費が増えるとボクのお小遣いが減っちゃうけど、仕方ないね。」
アベルのお小遣いって国からの出費だったのな。初めて知った。
「じゃあジュンコとアルマスは、その方向で動いてくれ。」
「わかったでありんす~。くくくっ!お安くしとくでありんすよ~。」
「わかった。それと、天気は僕の方でなんとかしておくよ。精霊に頼めばすぐだろうしね。」
ジュンコとアルマスには食料の確保を頼むとして……。
「ねぇミノル!!ボクはどうすれば良い?」
取り残されたアベルは自分に役割はないのかと詰め寄ってくる。
「そうだな。じゃあアベルには……料理を覚えてもらうか。」
「…………ふえっ!?」
意外な役割にアベルは素っ頓狂な声をあげた。
「これから先、料理の手が足りなくなるだろうからな。それに魔王直々に作った料理ともなればこっちの兵の士気も上がるだろう?」
アベルはポカン……と口を開けたまま固まっている。
「大丈夫、ノアも一緒にやってもらうからな。勇者が作る料理にも人は惹かれるだろう。」
「あ、い、いやだから……そういうことじゃなくて。な、何を考えてるの!?」
「ん?お腹を空かせた人間達の前で料理を作るに決まってるだろ?」
「それ攻撃されない?」
「恐らく大丈夫だろう。」
多分、民衆が真っ先に食らいついてくるし……あっちの兵士達も民衆ごと私達を攻撃したりはしないだろう。
「うぅ……本当に大丈夫かなぁ。まず第一にボクに料理なんて……。」
「ま、今日からみっちり仕込んでやるから。安心しろ。1ヶ月もすればある程度の料理は作れるようになってるさ。」
こうして三国の主が集まった会議は幕を閉じ、私のもとに新たにアベルとノアという二人の弟子ができたのだった。
私達はこの時間を使ってこれからどう国を落とすかを話し合っていた。
「さて、今日みんなに集まってもらったのは~……。」
「これから人間をどうやって降伏させるか……でありんしょ?」
「まぁそれ以外僕らを呼んでまで話し合う事も無いからね。」
会議の進行を務めるアベルにジュンコとアルマスが言った。
「その通りなんだけど……何か案はある?」
「そう言われても~なかなか難しい話でありんすよ?」
「うん、彼らはまだ例の人工勇者も残してるんだよね?それだと一筋縄じゃいかないと思うよ。」
アルマスの言うとおりだ。人間側はまだ人工勇者という戦力を残している。簡単には降伏してこないだろう。
「人間側にも犠牲は出したくないんだろ?」
「もちろん。」
私がそうアベルに確認すると、彼女は即答で返してきた。
犠牲を出さないってなるとすごい難しい話なんだよな。こちらから攻めるわけにもいかないし。
はてさて、どうしたものかな。
各々悩み、沈黙の時間が過ぎていくなか……ふとアルマスが口を開いた。
「例えば……だけど、天気をずっと晴れにするって言うのはどうだろう?」
「それ何の意味があるの?天気がずっと晴れって寧ろ良いことじゃん?」
「……いや、そうでもないぞ?」
「えっ?」
私はアルマスの案の意図がわかってしまった。心底恐ろしい事を思い付くな。
「ずっと晴れが続くってことは、雨が降らないってことだ。つまり、農作物が育たなくなる。」
「そうなったらこれから先待ち構えてる冬を越せない。って訳だね。」
この世界なりの兵糧攻め……というやつだな。
「でもでも、食べ物が失くなっちゃったら餓死する人とか出てきちゃうんじゃない?」
アルマスの案を理解したアベルが心配そうに言った。
「そこはこっちの対応次第だな。餓えている人間を迎え入れられるように準備を整えておけば問題ないだろう。」
チラリとジュンコの方に視線を向けると、彼女は敏感にお金の匂いを嗅ぎとったようで、にんまりと笑みを浮かべた。
「おやおや?なにやら香しいお金の匂いがするでありんすねぇ~。これは帰ったら備蓄と今年の収穫量を計算しないといけないでありんすねぇ~。」
「僕の方でも少し援助はするよ。とはいっても肉とか魚は期待しないでほしいけど。」
ジュンコとアルマスは、食料の問題を共に解決してくれるらしい。ジュンコの方は少し値がつきそうだが……まぁ仕方のない出費だろう。
「え~っと……つまりどういうことになったのかな?」
「食べ物が失くなっても心配なくなったってことだ。ただちょっと、この国の出費が増えそうだがな。」
「でも出費がちょっと増えるだけで誰かが死んだりする訳じゃないんだよね?」
「あぁ、それはない。」
「なら大丈夫……かな。国の出費が増えるとボクのお小遣いが減っちゃうけど、仕方ないね。」
アベルのお小遣いって国からの出費だったのな。初めて知った。
「じゃあジュンコとアルマスは、その方向で動いてくれ。」
「わかったでありんす~。くくくっ!お安くしとくでありんすよ~。」
「わかった。それと、天気は僕の方でなんとかしておくよ。精霊に頼めばすぐだろうしね。」
ジュンコとアルマスには食料の確保を頼むとして……。
「ねぇミノル!!ボクはどうすれば良い?」
取り残されたアベルは自分に役割はないのかと詰め寄ってくる。
「そうだな。じゃあアベルには……料理を覚えてもらうか。」
「…………ふえっ!?」
意外な役割にアベルは素っ頓狂な声をあげた。
「これから先、料理の手が足りなくなるだろうからな。それに魔王直々に作った料理ともなればこっちの兵の士気も上がるだろう?」
アベルはポカン……と口を開けたまま固まっている。
「大丈夫、ノアも一緒にやってもらうからな。勇者が作る料理にも人は惹かれるだろう。」
「あ、い、いやだから……そういうことじゃなくて。な、何を考えてるの!?」
「ん?お腹を空かせた人間達の前で料理を作るに決まってるだろ?」
「それ攻撃されない?」
「恐らく大丈夫だろう。」
多分、民衆が真っ先に食らいついてくるし……あっちの兵士達も民衆ごと私達を攻撃したりはしないだろう。
「うぅ……本当に大丈夫かなぁ。まず第一にボクに料理なんて……。」
「ま、今日からみっちり仕込んでやるから。安心しろ。1ヶ月もすればある程度の料理は作れるようになってるさ。」
こうして三国の主が集まった会議は幕を閉じ、私のもとに新たにアベルとノアという二人の弟子ができたのだった。
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