たいして好みでは無い、と言われたので婚約解消した令嬢は、伯爵様と交渉する。

らりささ

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5.仕事編

17.婚約解消

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「貴様…何考えてんだ…あぁ?!」
アスラン様の顔が歪んだ。

彼のこんな荒い言葉、私は初めて聞いたのでは無いだろうか。

「よく言いますよ。僕とアスラン閣下は同じ穴の狢でしょ?」
ライト様は平然と言い返した。
「二人とも!その辺にしとけ!」
流石に、ノーランド様が諫めた。

「どういう意味だ?」
アスラン様は、ノーランド様のことも既に目に入っていないようだった。

「知っていますよ。あなただって、“彼女”を手に入れるためなら、何でもするって」
「お前に何が分かる?分かってたまるか…」
「僕は、騎士団の慣例に則って、あなたが騎士団に復帰されてから、彼女に言い寄るつもりだった。だが、あなたは違ったじゃないですか?」

「な、なんの話ですか…?」
思わぬ方向に話が進んでいる。
私の気持ちなど全く無視したように。
私は、恐ろしくなった。

「アスラン閣下が、あなたのところに縁談を持ちかけた時、あなたとローレンは婚約を解消などしていなかったんだよ」
「「ライト!」」
アスラン様とノーランド様が同時に止めに入った。

「ちょっと!どういうことですか?私は、あの日、あの夜会の時に、直接ローレン様から婚約の解消を言い渡されたのですよ?そんなこと、ある訳がありません。いい加減なこと言わないでくださいよ!ねぇ?アスラン様?」
私は、アスラン様のお顔を見た。
彼は、私と目も合わせなかった。

「…アスラン様?」
一気に不安が押し寄せてきた。

「あなたがそうローレンに言われたとしても、両家は婚約を解消させる気などさらさらなかった。婚約は継続されていて、ローレンも両親に説得されていた。それが事実なんだよ」
「そんな、まさか…そんなこと…」
私は、俄には信じられなかった。

しかし、アスラン様からは何も言葉がない。

「うそ…え?どういうことですか…?」
「まぁ、そういうことです。アスランは、あなたと結婚したいがために、ありとあらゆるコネと財力に物を言わせて、子爵家及び男爵家に圧力をかけた。しかも、ルシンダには内緒にしておくよう、強く言い含めたそうじゃないですか?ねぇ?アスラン閣下?」
ライト様が、アスラン様に侮蔑にも似た目を向けた。

「なぜ、お前がそのことを…」
「サザーン侯爵家を舐めないで頂きたい。だから、私とは同じ穴の狢なんですよ。同類に遠慮はしません」
ライト様は右手を口に当て、不気味に笑いながら言った。彼はその表情を隠そうと思ったのだろうが、隠せてなどいなかった。

 え…?ちょっと、待って?

 私と結婚したいがために、アスラン様が私とローレンとの婚約を邪魔したってこと?!

「ほ、本当ですか?!アスラン様!?」
「…すまなかった、ルシンダ…」
「まさか!そんなこと、あります?本当に?」
「一生、知らせるつもりなどなかったのに…」
アスラン様は苦悩の表情を見せた。

 やややややや、やばい!
 う、嬉しい…かも…!!

 いや、めちゃくちゃ嬉しい!!
 アスラン様が、そんな頃から私と結婚したかったなんて!!

私には夢のような話だった。
だって、女性として見られない、とまで言われたのに?
それでも、結婚したいほどの愛情があったってこと?
私の頭の中は、お花畑状態になっていた。

しかし、そのようなことを言えるような雰囲気では決してない。

私は、そっとアスラン様に抱きついた。

「アスラン様…帰りましょう」
私の顔がにやけて仕方がない。
だけど、こんな場面で不謹慎すぎる。
私は、ぐっと堪えた。

「ライト様、教えてくださってありがとうございます。でも、私は大丈夫ですので、これからは私には関わらないでいただけますか?」
私はやんわりとライト様に釘を差した。

これからアスラン様と思う存分イチャコラしたいのに、正直、迷惑だったのだ。

「そんな…ちょっとだけでいいから、僕の話を聞いてくれないか?」
「ライト、しつこいぞ」
ノーランド様がきつく言ったが、ライト様は気にもとめなかった。
「僕は、ずっと…」
「ごめんなさい」
「ルーシ…お願いだ…」

 え?!!
 いま、ルーシって言った?!

「ライト様…?」
私は非常に驚いた。
アスラン様も驚いている。
アスラン様でさえ、私をそんなふうに呼んだことはないし、その愛称すら彼は知らないのだ。

私の妹と弟、それからあともう一人だけしか呼ばない、そんな愛称であった。

「その名、どこで…」
「憶えていてはくれなかったか…?そうだろうな」
ライト様が悲しそうな目で私を見た。

そうか、ライト様はあの時の…いや、そんなはずはない。
面影はある、しかし、もっと背は低かったし、髪も長くて、ハーフアップだった。
そのシルエットがもの凄く綺麗だったことをぼんやりだが憶えている。

「どういうことですか?あの時の…?いや、名前も違いますよね?そんなふうに私を動揺させて、何がしたいのですか?たとえ、サザーン侯爵家の方であっても、人の気持ちに土足で踏み込むようなこと、許せませんよ?」
私は混乱していた。と、同時に憤っていた。

そこから、なんとかノーランド様がその場をおさめて、更には、リョーガくんまで呼んでくれた。
私たちは、そこでやっと解散となった。

「騎士団の慣例とやらのこと、詳しくは、アスランから聞いて」
帰り際、ノーランド様にそうとだけ言われた。

帰りの馬車の中で、アスラン様は無言であった。
いつもなら、恥ずかしくなるほどベタベタしてくるのに…

「あ、あの…先ほどの話なのですが、一体全体、何がどうなっているんですか?慣例ってなんなんですか?」
私は、思い切って聞いた。

「そうですよね」
アスラン様が大きくため息をついた。
    
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