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妖精事件「だるまさんがころんだ」案件について

管理官の職務内容

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 国家公務員の妖精管理官の所属が警察庁であるならば、妖精事件があればそれを警察官として捜査して解決しなければいけない。
 そこでとある地方へと班目と班目の指導教官、夜久(やく)十三(じゅうそう)は呼ばれて赴き、そのとある県の田舎町にある公立高校での妖精事件を捜査することになったのである。

 班目には初任務となるが、配属自体が間違いのはずだと未だに考えている班目の気持ちが上向く事も無く、また、聞かされる事件概要もつかみどころのないもの過ぎて気が落ち込むばかりだった。

「学校内で神隠しが起きているらしいけれど、誰が消えたか分からない。何ですか?それは?」

 班目は夜久に尋ねたが、夜久は答えるどころか鼻で嗤っただけだった。
 班目は溜息を吐いた。
 刑事が二人組で動くようにして、班目は夜久と組まされた。
 純粋に指導教官と見習い、と言うだけの話であるが、班目はパイプ椅子にだらしなく座る男を横目で見ながら、どうしてこの人なんだろうと韜晦した。

 配属初日で男子トイレでエンカウントした男は、班目よりも五つ年上の巡査部長であり、対妖課のホープで鼻つまみ者だった。

 ホープであるのは、彼が対妖課に置いて頭を一つも二つもとびぬけたぐらいの魔法力がある魔法使いで、難事件の数々を誰よりも多く処理してきたからだ。

 鼻つまみ者であるのは、班目はたった一日男の横にいて思い知らされた、と、大きく溜息を吐いた。

 ヴ~ん。

「先輩。何をなさっているので?」

 班目は自分も鼻つまみにしたい自分の指導教官に目をやった。
 夜久はいつの間にか肩に電気按摩を当てて喜んでおり、班目の視線を知るやにやっと笑い、班目の腰に電気按摩を当ててきた。

「な、なんにぃするんですか!こ、子供ですか!」

「なかなか強烈だろ。あんの校長、校長室にこんなん置いていてさ、意外と好きものじゃねえかって。何人の幼気な乙女を喰ったんだろうな?」

「いい加減にしてください。そんなことするのはあなただけです!校長室から取って来たんですか?警察官が泥棒してんですか!」

「いいじゃねえか。役得なきゃやってられねえ。まあ今回は班目君の大好きな女子高生わらわらな現場だ。上手くいけばお前だって非合法で突っ込めるぞ。」

「あなたは!俺は別に女子高生好きではありません!」

「まあ、そう言うな。機会があったらパンツは剥ぎ取れ。お前の華々しい未来のためにな!」

「あなたはそうやってあの婚約者を手に入れたのですか?」

「そうだ。」

「え?」

「実にそうなんだよ。ハハッ!ちゃんとパンツを脱がせて処女のぱっかんを確認したよ?だからな、お前も気に入った奴がいたら、絶対にパンツを剥ぎ取るんだ。わかったか?そうでないと仮性魔法使いになっちまうぞ!」

 夜久は電気按摩で班目の腰を突きながら、意地悪そうに揶揄って来た。

 仮性魔法使い。

 三十代まで童貞だと魔法使いになれるという冗談だったものが、妖精界とのエンカウントで実現してしまい、魔法使いイコール童貞と揶揄われる世の中になっているのである。

 なぜ仮性とつけるのかは、童貞を捨てたら魔法を失う程度の魔法使いでしかなく、妖精界とエンカウントする前から存在している魔法使いとの差別化でもあるかららしいと、班目は部署で教え込まれた情報を思い返した。

「夜久さん。俺は普通の人間ですよ。勉強したって魔法使いにはなれませんよ。」

「魔法使いになる必要は無いんだよ。妖精にはルールがある。ルールを知れば狩りが出来る。それだけの話だ。ほら、今後の為に監視に戻れ。」

 班目はハアと息を吐くと数分前までしていたようにして、窓からグラウンドを眺めた。
 彼らが詰めているのは放送室。
 そして、放送室の窓からは、生徒達がダラダラと集合しているグラウンドの様子が良く見えた。
 生徒達は緊急避難訓練と伝えられているのだが、夜久は生徒達を体操着に着替えさせるように教師達に伝えていた。

「この季節、半袖と半ズボンの体操着では寒くて可哀想ですね。」

「そうだな。人間は寒いんだよな。寒がっていない奴はいるか?」

 班目はハッとした様になり、今度は目を凝らしてグラウンドを見つめた。
 女子生徒は自分の体を抱き締めるようにして寒さに凍えている子も何人か見受けられたが、もとは元気な高校生は、友人達とふざけて固まっていることも多く、本気で寒さを感じていない子の見分けは班目にはつかなかった。
 また、男子生徒の小柄化や女子生徒の大柄化かあるからか、ショートカットの生徒が女子が男子かさえも分からないと班目は自分を情けなく思った。

「すいません。わかりません。性別だってここから見て判別がつかないぐらいに、俺はポンコツみたいです。」

「やばいな。」

「すいません。」

「お前が謝ってどうするよ。見分けがつかないぐらいにガキどもが妖精に喰われちまっているって事実がそこにあるだけじゃないか。」

「え?」

 班目は今度は飛びつくようにして窓枠にしがみつき、身を乗り出すぐらいにしてグラウンドを見返した。
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